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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
「エレベーターガール」後編
 そこには、陣痛に苦しみ、壁に手をついていままさに、子供を生み出そうとしている同僚の坂下真由がいた。
 臨月を迎えた妊婦が、エレベーターガールをしているという光景は、とても異様である。
 それでも、なんとかその違和感を少しでも払拭するために。飛び出たお腹が目立たないように。彼女の身体が少しでも楽なように。
 マタニティー用に特別にデザインされた、淡いピンクが基調のやさしい色彩のゆったりとデザインされた特注の制服が用意されていたはずだ。
 それを特別扱いなどと言う同僚は誰もいなかった、福利厚生がいいことは望ましいことだし。私にとって一年先輩の坂下真由は、少しおっとりとしすぎているけど、明るくて誰隔てなく優しい性格で、みんなに愛されていたからだ。
 その彼女のために作られたはずの制服は、剥ぎ取られて素っ裸にされていた。
 出産するなら、仕方がないのか。それにしたって、何で、今この場所で!

「あああぁ……」
 思わず、驚きの声をあげてしまった私の視線に気がついて、真由も私を見返した。
 その目は怖いほどにうつろだった。笑っているような、泣いているような、全てを諦めてしまった人間のもの悲しい表情。
 坂下真由は、先輩のはずなのに私より年下に見えるような、ちょっと抜けてる感じの天然で、それでも優しくて可愛らしい女の子だった。
 私がこのセクションに配属になったとき、なれない仕事で小さいミスをしてチーフに怒られていたときも、彼女が私のミスで迷惑をかけられたはずなのに。
 何も言わずに終わるまで横にずっと立っていてくれて、申し訳ない気持ちで見返すと、こっちがほっとするような笑みを浮かべてくれる、そんな素敵な女性だったのだ。
 誰がこれほど、彼女の笑顔を、優しさを、幸せを、ここまで致命的に破壊してしまったのか。私は、胸の奥底から湧き上がるような熱い怒りを感じた。
 だって、ただ陣痛の苦痛に耐えているだけの悲痛な息は、泣きはらして、その涙も乾いてしまったような目は、とてもこれから新しい命を生み出す母親の顔ではなかった。
 これでは、まるで……!

「おや、ゆかりちゃんか。ちょっと早く来過ぎたみたいだね」
 そう、声をかけてぬっと、あのオニギリ頭の男性客が私の前に現れたのだった。
「あのこれって!」
「ああ、ちょっと静かにしててね。ほら、こういうことだから」
 男は、そういうと指をさした。よく見ると彼女の周りにはカメラが設置されている。
「ああぁぁ……それじゃあこれは、まさか!」
「そう今まさに『エレベーターガール坂下真由二十四歳 あたし箱の中で孕んで、破水して、出産しちゃう、悪い娘です!』の撮影が行われているのだよ」
 信じられないことだった。
 相変わらず、趣味の悪い長ったらしいタイトル。
 つまりAVの撮影だったのだ。

 私はそのようなことをこの男性客から言われたことがあったが、今のこの瞬間まで女性が妊娠するところのAVなどが存在するなどということは信じられなかった。
 命の誕生を記録するドキュメンタリーというのなら分かる。
 こうして、目の前にしてすら信じられないけれど……。
 しかし、男性客の目は好奇の目だった。口はいやらしく涎を垂らさんばかりだった。
 女性の大事な出産を、こういう最低な、いやらしい、悪魔的な鑑賞物として!
「あなたは……あなたは……最低の……最低の屑です!」
 私だって、私だって人に言えないような酷いことをたくさんされてきた。
 それでも、他人の立場に置き換えて、初めてどれほどここで酷いことが行われているのかと身にしみて理解できた。
 これは、震えるほどの怒りだ!
「ゆかりちゃん、興奮するのはいいけど。とりあえず消毒して、そこの白衣でも来てくれないかな。ここは病院の分娩室と一緒なんだよ。雑菌が振りまかれるのは不味い」

「……何で、私がたしなめられるみたいになってんの!」
 それでも、女性としては最もなことだと思ってしまったので、慌てて身体を殺菌消毒して綺麗な白衣を身にまとう。
「うん……この格好なら中に入ってもいいよ。カメラに写ったとしても白衣なら違和感がないからね。でも行動には気をつけてね。音声は編集できるけど、映像は編集できないから」
 私は怒りで爆発しそうになっているけど、もう真由ちゃんの出産は始まってしまっている。
 もういまさらどうしようもないのだ。
 エレベーターの箱の中に入ると、白衣を着た壮年の男性と、年配の女性がいた。
 なるべくカメラの邪魔にはならないようにはしているが、産婦人科医と産婆さんを付き添わせているそうだ。
 お湯もたっぷりと沸かしてあり、緊急時に備えて各種医療器具も備え付けられてはいる。ちょっとだけ安心した。
 でも……それでも。
 私は、中に入ってしまったことを後悔した。
 これなら、何も見ないほうがよかった。三十分どころか、遅刻して全てが片付いたあとに、交代に行けばよかったのに。
 このときの私は何を考えていたんだろう。

 私は、何も思わず誘われるように真由の裸体を見てしまったのだ。
 真由は、おっとりとした性格にふさわしいように容姿もゆったりとしている。
 ぽっちゃりしているというまではいかないが、肉付きが女性らしい洋ナシ形の体型といえばいいのだろうか。
 私ほど極端ではないけど、ゆったりとした厚みのある胸に、柔らかそうなお腹。そして、とても大きいお尻。
 妊娠するまでは、美幸チーフのようなスタイリッシュな体型とは逆の意味で、それはそれで女性としてあこがれる体型だと思っていた。
 もちろん、妊娠してからだって、ピンクのマタニティーはよく似合っていたし、こんなお母さんだったら最高だなと思っていたのだ。
 ゆったりとした胸だったはずの真由のおっぱいが、今の私の胸ぐらいに肥大したおっぱいが無理やりに、天に向かって吊り上げられており、おっぱいには青筋が走っている。大きく広がった乳輪は黒々としている。
 そして、さらに色を黒くした乳頭は、私の親指ぐらい巨大に赤黒く肥大しており、紐につながって……天井にと引っ張りあげられている。

 天井に引っ張りあげられているですって?

 一瞬、私は理解できなかった。

 乳頭の先に、穴があけられてピアスが突き刺さっているのだ。
 ピアスに紐がくくり付けられて、その紐は天井に、くくり付けられている。
 そのようにして、真由の大きな胸は天井へと無理やり引っ張りあげられる構造になっているのだ。そうして、真由が少しでも壁に着いた手や足を緩めると、ピンっと乳頭がピアスの紐でキリキリと引っ張り上げられて、その刺激で肥大化した乳頭ピアスの先から母乳が滲むように噴出す。
 そのたびに、真由は動物のような悲鳴を上げる。

 これが真由が立ったままの出産を強いられている悪魔的な仕掛けなのだ。

「なんで……なんでこんな拷問を……」
 私は、もうそれを見ただけで嗚咽して吐きそうになっていた。
 手で口を押さえて、何とか吐き気を押さえ込む、涙が滲む。
 でもほんとにつらいのは真由なのだ。
「うぅーうぅーはぁーはぁーふぅーふぅー」
 真由は口を半開きにして涎をたらし、陣痛と苦しげに息をつくだけだ。足を一杯に広げて、股からは子供の頭がすでに出だしているのだ。
 もう何もかもが間に合わない。
 どうして私はもっと早くきて、助けてあげられなかったのか。
 そんな無理なことを思う。

 大きなお腹には、妊娠線が走り、それをキャンパスに見立てたのか、あの男性客の汚らしい字でも、しっかりと分かるようにでかでかと書かれていた。

 『公衆便所』 
  『孕み済』

 これは、なんという陵辱だろう。人を侮辱するにもほどがある。
 ただの油性マジックだ……きっと、消せば落ちるよね。
 ピアスの穴だって、取ればきっと治るから。
 元の真由に戻れるから。

 今まさに、真由の股から子供が出るところまで私は見てしまった。
 見てはいけなかった。あれはなんだ……。

 普通は隠れているはずのクリトリスが肥大化してむき出しになっていた。
 これはもう、さっきの乳頭よりも大きい。
 小さい子供のおちんちんぐらいの大きさに赤く腫れ上がっている。
 子供を産みながら、それは勃起してビクンビクンと屹立していた。

 はっと気がついて、私は顔を上げた。
 真由とまた目があった。苦しみの息を吐きながら、彼女は笑うように口をゆがめた。

 私は真由を見て、男性客のやった行為に怒り、泣き、そして嗚咽する。

 でも、真由はそんな自由すらない。
 人は本当に辛いとき、苦しいとき、怒ることも泣くこともできずに、笑うのだ。
 そして、そんな酷い顔を、そんな惨めな姿を、真由は同僚である私に見られたかったわけがない。
 私は……私は!

 これでは真由は、さらしものだ。ごめん、真由……見ちゃってごめん……。

 もうどうすることも出来ずに、私はエレベーターの外に出ていった。
 目の前は真っ暗だった。

 そして、その瞬間に私は気がついた。

 怒りなど吹き飛んでしまうほどの悲しみに襲われた。

 私のお腹の中にもあの男の子供がいる。

 これと同じことを きっとわたしも やらされるのだと気がついた。

 私がフロアの影で一人嗚咽している間に。撮影は終わったみたいだった。
 あんな拷問のような出産をさせられて、倒れ臥した真由ちゃんは自分の赤ちゃんを抱かされたベットのうえで。
 もう気力も体力も尽きているだろうに、カメラとマイクを突きつけられて苦しい息を吐きながら。
「私の中に射精して、孕ませていただいて、産ませていただいて、ありがとうございます」
 何度も何度も、そんな台詞を言わされ続けていた。
 きっと事前に刷り込まれた台本なのだろう、壊れた機械のようだった。
「子供を産めて、おっぱいも出せて、女として最高の幸せです、いただいた命をこれから大事に育てていきます……」
 かすれた声で、最後に聞こえたのはそんな台詞だった。消え行く真由ちゃんの声とは対照的に生まれてきた赤ん坊の泣き声は大きくなっていく。
 そして、産婆さんと医師にタンカで担がれて、子供と一緒にたぶん病院に運ばれていくであろう真由ちゃんを見送った。
 彼女は、もうこれでこの悪夢から解放されるのだろうか。

 そして、私はいつ解放されるのだろうか。

 また清掃の人がきて、先ほどのことが嘘だったみたいに、ピカピカに磨き上げられたエレベーターに乗って、私はいらっしゃいませを繰り返しながら、そんなことばかり考えていた。

……エレベーター 三ヵ月後

 私はこの頃、お腹も少し出て悪阻が酷くなっていた。
 妊娠初期でのセックスは、流産の危険がある。
 そう吹き込んでやったら、男性客は私を犯さなくなった。
 妊娠初期のセックスは流産の可能性をほんの少し高めるだけで、ほとんど嘘だ。
 よっぽど酷いことをしないかぎり流産なんてするわけがない。
 本当に流産するんなら、それこそ言わずにどんどんさせていた。
 ただ、少しでもあの忌々しい男性客に犯されたくなかっただけのこと。
 それも、安定期に入るまでの短い時間なのだろうけど。

 私の膣を使わなくなってから、男性客が私を抱く頻度が下がったかというと、残念なことにそんなことはなかった。
 こんどは、アナルに執着するようになっていたのだ。
 毎日のアナルオナニーに加えて男性客がアナルばかり開発するもので、私のお尻の穴はだらしなく拡張されて、男性のものをくわえ込むようになっていた。
 不思議なもので、感じ始めるとお尻の穴もなにか自然に潤滑油のようなものを出して、粘膜が傷つかないようにするのだ。
「アナルでも感じるようになってきたじゃないか」
「ああぁ!」
 本当に遺憾なことに、私はお尻の穴でも感じるようになってはいた。
 ある意味において、膣よりも敏感に感じ取ることが出来るそこは、男性客のものが限界を迎えつつ、ビクビクと震えているのを感じた。
 ああ、またお尻の中に出される。

 ドピュドピュドピュドピュ!

 ピュルピュルと、濃い精液が私の直腸に入ってくる。
「ああ……またお尻のなかに」
 これをやられると、絶対あとで下痢をするのだ。
 私が嫌そうな顔をしているのを見ると男性客はペチリとお尻を叩いて。
 その瞬間に、ジョワーと私の中に大量の液体が流れ込んできた。
「ああぁあ……」
「お前、公衆便所としての自覚が足りないんじゃないのか」
 男性客は、私のお尻の中でおしっこをしたのだ。余りにも酷い扱い。
「ううっ……だって下痢するから」
 ずぼっと、お尻の穴から引き抜くと、精液と一緒に男性客のおしっこまでもが噴出してくる。お腹は当然ぎゅるぎゅると鳴る。
 私は、少し大きくなったお腹を押さえた。
「ほー下痢するから、中で出されるのが嫌なのか」
 そういうと、男性客は何かを思いついたようだった。
 その日は、これで解放されたのだが。

 アナルセックスをするようになってから、する前に男性客はウエットティッシュや脱脂綿などで、私の肛門の中を殺菌消毒するようになっていた。
 彼は、お尻の穴にも生で入れたいために、必ずそうするのだ。
 私の身体の心配はしてくれないくせに、自分のこととなると神経質ぐらいにする。
 こういうところで、この男性客の自分勝手なところがよく分かる。
「ありゃ、今日もお尻は綺麗なんだね」
 万が一にも、黄色いものなどがついてしまわないように、執拗なぐらいにお尻の穴は磨き上げている。
 もちろん、男性客のためにではなくて少しでも自分が恥ずかしい思いをしなくていいように。
 私たち二人は、身体を重ね合わせて子供まで作ってしまってからも、こういう関係性なのだ。私が出来る抵抗というのは、せめてこれぐらいなのだから。

 私のお尻の穴が綺麗であれば、それで男性客には都合がいいはずなのに、私の肛門が綺麗なのを確認すると、彼はいつもなんとなくつまらなそうな顔をする。
 今日もそんな子供がおもちゃを取り上げられたみたいな酷い顔だったが、何かいいことを思い出したように笑顔になった。
 またあの口が裂けたような悪魔的な笑顔。ああいう顔をするときは、ろくなことがない。
 危険なサインを感じ取って私は身構えた。
「今日はいいものを持ってきたんだ」
 そういって、男性客は汚らしい袋からイチジク浣腸をたくさん取り出してきた。
「まさか……」
「そ、そのまさかだよ」
 私はあえて、下着の下だけ脱いで肛門から大量の浣腸液を注ぎ込まれる。
「そういう趣味もあったんですか、あいかわらず最低ですね」
「客にそういう態度はどうかと思うが。褒め言葉と、受け取っておくよ」
 すぐに、私はお腹を押さえ込んでしゃがみこんでしまう。
 ギュルギュルギュルと私のお腹は破滅的な音を立てて痛む。
「うううっ……嫌だあぁ、お手洗いに行かせてください」
「もってきたよ」
 そういうと、男性客は赤ちゃんが使うようなアヒル形のオマルを差し出した。
 どこまでも、馬鹿にしている。
「そんなとこに、できません!」
「大人しく、俺の前で排便しとけばいいのに、お前にはやっぱり教育が必要なようだな」 男は、冷酷な顔でそういった。
「ううっ……お願いだから、お手洗いに」
 お腹からこみ上げてくる切迫感は、すでに限界のギリギリのラインだ。
 このまま、男性客のいうなりに、こんなところで排便するのかと思うと、私は涙が出てきた。
「俺の前でしたくないみたいだから、今日はもういいよ。俺は別のエレベーターで、やってくるから。今日は解放してやるから、仕事がんばりなよ」
 そういって、男性は緊急停止ボタンを解除して普通に出て行った。
 それを合図に、お客さんが大量にゾロゾロと入ってくる。
 これは……ちょっと待って。
 私はとにかく立ち上がったが、余りの腹痛に声が出ない。
 それでも、客を満載したエレベーターは自然に動き始める。下に向かって。
「うああぁぁ……」
 もうどうしようもない激痛、私の下にはオマルが置かれている。
 私、本当に、こんなところで……!

 この絶体絶命のピンチに、私は思い出した。
 そういえば美幸チーフに、本当の緊急時には押せって教えられていたボタンがあった。
 私は藁にもすがる思いで、ボタンを押す。
(何も起こらない、やっぱりだめなの?)
 そう思った数分後、突然エレベーターが止まった。
「すいませんお客様方、どうもこのエレベーターに誤作動があったようですので、点検作業をいたします。隣のエレベーターを止めてありますので、そちらにお移りください」
 美幸チーフは、テキパキと人払いをしてくれた。
 私ひとり残して、エレベーターの扉は閉じた。
 その瞬間に緊急停止ボタンを押す。
「もう……限界ぃ……」
 パンツを剥ぎ取る暇ももどかしく、エレベーターの端っこでオマルに座り込んで、一人腸の中に溜まったものを全て吐き出した。

 ブリブリブリブリブリ!

 そんな音が響き渡った、いつもトイレは消音するので自分の排便する音を聞いたのは久しぶりだった。
 すぐさま、下痢特有のあの嫌な匂いが立ち込める。
 もう情けなさで涙なんて出ないと思っていたのに、やっぱり泣いた。
 どうやってこのエレベーターから出ればいいんだろう……そうやって途方にくれていると美幸チーフから無線があった。
「すぐ、地下三階にエレベーターを回しなさい」
 地下三階で扉が開くと、美幸チーフが待っていた。
 扉が開いた瞬間、私の排便の匂いが伝わったはずだ。それでもチーフは冷静な顔を崩さなかったし、何も言わなかった。
「あの……チーフ……」
 泣いている私の事情を察してくれたのだろうか。
「非常階段から休憩室にあがって、シャワー浴びていいわよ。安心して、ここは私が一人で清掃しておくから」
 ちゃんと清掃係はいるのだ。そっちに任さずに、チーフ自らが清掃して痕跡も消してくれたことに、私は一生感謝している。

……再び地下三階 五ヶ月

 そして、そんな美幸チーフもギリギリまで抵抗していたマタニティー制服を着る羽目になったころから、気張っていた糸が切れてしまったのだろう。
 セクションの管理や指示に、精彩をかくようになり。一時的にということで事務長が、代わりに仕事を引き受けるようになった。
 さすがに事務長も優秀で、シフトの管理は完璧にこなしていたけれど、個々の職員への細やかな精神的なケアまでは手が回らなかった。
 いや、普通そこまでの管理はできないものなのだろう。美幸チーフが管理をしなくなってから、私たちはどれほど美幸チーフが優秀だったかを改めて知ったのだった。
 そのチーフは、自分の仕事も休みがちになっていった。あたりまえだ、もう妊娠後期に差し掛かっているのだ。
 普通なら仕事なんかしないだろう。
 あの男性客だ。きっと、あの男性客がギリギリまでの勤務を強制しているに違いない。日に日に沈んでいく美幸チーフの様子を見ながら、私は口惜しい気持ちでいっぱいだった。

 それと対照的に、明るさを増していったのが坂下真由だろう。
 あの悲惨な出産劇のあと、きっちり二ヵ月後に職場復帰してきたとき。
 身体もスリムに戻って、様子も前と変わらないぐらい元気だった。
 私はあのときの悲惨な様子を思い出して、思わず目をそむけてしまったが、逆に気を使われてしまったぐらいだ。
 子供は元気な男の子で、産後の経過も順調だそうだ。
 福利厚生がしっかりしているこのデパートには、職員の託児室もあるので、その点ではまったく問題はない。
 休憩がこまめにあるエレベーターガールの仕事が、逆に赤ちゃんにおっぱいを与えるのに便利だというのは、本当に皮肉な話だ。

 私たち以外にも、エレベーターガールは軒並みあの男性客の被害を受けて、職員に妊婦さんが多いデパートというおかしな場所になってしまったが、一部好奇の目を向ける客も来る中で、なぜかマスコミやネットの口コミの話題などには広がらなかった。
 もっとも、私も出演してしまった忌まわしいAVのシリーズは、裏ルートでかなり好評の売れ行きを見せているのだと男性客に自慢されたが。
 目の届かない場所でやってくれる限りにおいては、私たちも破滅は避けられるわけで、心安らかでいられるというものだった。

「それにしても、あの時見た真由ちゃんの……」
 わからない、お腹の文字なんて消してしまえば問題ないし、乳頭ピアスだって閉じてしまえばもう回復しているのかもしれない。
 それでも、あの拡張されたクリトリスはどうなったのだろう。
 そして、彼女はもう、あの男性客には襲われてはいないのだろうか。
 それは、私の未来にとっても関係する重要な問題だ。
 いろいろ考えているうちに、私はつい休憩室から非常階段を下りて、思い出深い地下三階に来てしまった。
 別に私は職員だから来てはいけないという場所ではないのだが、普通に近づくべきではない場所である。
 でも今日は、休憩室で同僚と煮え切らない話をしているより、一人で考えたい気分だった。
 非常階段の扉からフロアに入ってすぐ、人の話し声が聞こえてきた。
 その瞬間に分かった、私は引き返すべきだと。

 それなのに、気がつかれないようにこっそりとエレベーターのある場所に、近づいていったのは、私がそのとき精神状態が不安定になっていたからだったのだろう。それでも、いいわけにはならないかもしれないが。
 案の定、エレベーターは地下三階に止まっていた。エレベーターの中は、煌々と明るく通路の影からでも、簡単に中が見えてしまう。静かな地下では、声も響いてしまう。
「あれは、美幸チーフ……」
 あの男性客に、抱かれて嬌声をあげているのは、今日は体調不良で休んでいるはずの美幸チーフだった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 あのプライドの高い美幸チーフが、素っ裸に剥かれてあの男にガンガンと腰を突かれながら謝り続けている。
 毅然とした彼女のイメージが、私の中で音を立てるように崩れ落ちた。
 見てはいけない。そう思う……そう思うけど。
「まったく、乳もねー尻もねー、お前はロリータちゃんかって話だよ。年増女のくせによぉー」
 あの男性客はそういいながら、パチンパチン尻を叩いて腰を打ち付けている。
「ごめんなさいごめんなさい……」
 美幸チーフは、綺麗な顔をクチャクシャにして、泣いている。
「俺は謝れなんていってねーだろ、もっと乳を大きくしろっていってんだよ」
「そんな……牛乳も飲んでるし、チキンも食べてるし、言われたこと全部やってます」
「やってて、これなのかよ」
「ひぎぃ!」
 そういうと、男性客は強くしごるように美幸チーフのおっぱいを握り締めた。その瞬間に乳頭の先から、母乳がほとばしる。
 ああ、美幸チーフはあんなにも、おっぱい出るようになってしまったんだ。
 私は、見てはいけないと思うと余計に、これまで憧れてきた美幸チーフの裸体を見てしまう。
 やせてスレンダーな身体だった身体は、妊娠によって見るも無残にお腹がぽっこりと突き出てしまっている。それが無残で、私は息を呑む。
 胸は前よりも若干厚みをましたように見える。乳輪は小さく、妊娠のせいか黒々としている。だからこそ、肥大化した乳頭は黒光りして、ピンと勃起しているのが強調されているように見える。
 男性客が、両手で強く掴むように、胸を根元からしごくたびに、その乳頭から乳をほとばしらせるのだ。
「ああっ……痛いぃ!」
「くそ、マンコを強く閉めすぎだ……出ちまう!」
 腰を掴んでガクガクと何度か振ると、覆いかぶさるようにして身体を痙攣させる男性客。どうやら中で射精してしまったようだ。
「ああっ……また中に」
「畜生、何が中にだ。また無駄に射精しちまった。お前は、あれかマゾか何かかよ。虐められるとよく膣を締めますってか」
「私そんな……」
「お前は、最初に俺のこと見たとき見下してただろ」
「そんなこと」
「高慢そうな顔してるもんな……それがとんだマゾ女だと知ったらお前の部下たちはがっかりするだろうな」
「そんなことありません」
「いっちょまえに、母乳だけ出しやがって……何だこのすっぱい母乳は」
「ああ、吸わないで」
 そういって、舐めるようにして乳頭に噛み付き吸い上げる男性客。
「お前、おっぱいは何カップになったんだ」
「Bです……」
「あのな、お前の部下はみんな二カップは大きくして甘い母乳だして、AVの売り上げにも貢献してるんだよ。何でお前だけ、Bカップなんだよ。せっかくこうやって揉んでやってんのに、お前だけ!」
「ひぐぃ」
 そうやって、男性客は罵りながらまたおっぱいを鷲づかみにしている。
「いいか、お前の部下はみんな優秀なんだよ。AVのシリーズでも平均五万本は売り上げてるし、あの芹川ゆかりなんて、三十万部も売り上げて、この狭いアングラAVの業界でも空前のヒットって言われてるんだ。ファンサイトも出来てるし、未収録の元動画をアングラオークションにかけたら百五十万の値がついたんだぞ」
 そんなことになってるんだ……私は、気になってさっと調べても外に漏れてないと思ってたのに、愕然とする。
「お前のAVは何本売れたと思ってるんだ」
「そんなのわかりません」
「八千本だよ、ありえねえだろ、たった八千本!」
「そんなあ……」
「初期ロット一万本で売ってるのに、二千本も売れ残って増版かかってないのお前だけなんだよ。二千本全部自腹で買い取るか、二千万払えんのかよ!」
「そんなこといわれたって……ううっ」
「何が悪いと思うんだ、自分でどうして売れないと思うんだ。言ってみろよ」
「……胸がないから」
「わかってんじゃねーか!」
 そういって、男は乳を弄るのに飽きたのかパチンパチンと尻を叩く。もう、美幸チーフのお尻は真っ赤になっている。
「腹ばっか大きくなりやばって、このピザ女が」
「お腹は……お腹はやめて!」
 腹に手を伸ばそうとする男性客の手を払って、自分のお腹を庇う美幸チーフ。当たり前だ。
「俺は、乳を大きくしろって言ってんだろ。そしたら残ったAVも売れるようになるからな」
「そんなの……そんなの無理です」
 お腹を庇うように、泣きながら身を伏せて訴える美幸チーフ。
 ため息をついて、男性客はそれを見下ろした。
「お前、野球チーム作るしかないな」
「え……」
 いきなり、わけの分からないことをいわれて当惑しているようだ。
「あのな、エレベーターガールは毎年新しく入ってくるし、一人につき一回の妊娠で許してやろうと思ってたんだよ、優しい俺様は」
「はい……はい、ありがとうございます」
 それを聞いて、彼女はとてもほっとした様子だった。
 そうなんだと、私もほっとする。自分が今妊娠させられて、酷い産まされ方をされるのも心配だけど、もっと心配なのは先のことだ。この地獄が永遠と続くなら、そう思うともう目の前が真っ暗になってしまう。
 実際に出産を終えて、帰ってきている真由の行く末が気になったのも、半ばそういう理由からだ。
 これから入ってくる新人たちがやられてしまうのは可哀想でしかたがないけれど、やはりわが身が一番大事になってしまうのは人間だからしかたがない。

「だけど、お前は別だ」
「え……」
 ほっとした美幸チーフの顔に、さっと影が走る。

「野球は何人でやるか知ってるか?」
「え……十一人かな」
 また、野球の話?
 いったい何のつもりなんだろう。
「ばーか、お前どんだけ子供生むつもりだよ。十一人はサッカーだ、野球は九人だよ。お前、今年で何歳だ」
「二十八歳です」
「はあ……婆だな!」
「ひぃ」
「お前いまから、一年ごとに子供生んで、九人で何歳になるんだ」
「……三十五歳?」
「高齢出産だが、まあいけなくもないな」
「そんな、それって、いったい、どういう意味なんですか!?」
「だから、お前だけは何度も何度も妊娠させて、産んだ子供で野球チームが結成できるぐらい産ませてやるっていってんだよ」
「いっ……いやぁーーー!」
 魂からの絶叫だった、あんな絶望的な顔をした美幸チーフを見たことがない。私も見ているだけで、心が凍った。

「お前のおっぱいが小さいのがいけねーんじゃねーか。こっちは善意でやってんだろ、妊娠一回で二カップ大きくなったとして、ああお前は出来損ないだから一カップしか大きくなんねーんだな」
「ごめんなさい……だけど、それだけは勘弁してください」
「順調にいけば、BCDEFGHIJカップじゃねえか。いいぞグラビアアイドル並みだ、三十五歳の婆になってようやくだがな」
「いやぁ……お願い、それだけは、それだけはぁ」
「こっちだって、婆けていくお前なんか犯したくないんだよ。しょうがねーだろ乳が大きくならないんだから」
「いやぁ……嘘、嘘でしょ」
「ほれ、もう一回やるから股開け、お前はオマンコも小さいから、そんなんじゃ九人も子供を産めないぞ」
「いやぁ……いやぁああ」

 美幸チーフの絶叫が響き渡った。
 私は、もう見てられないし、見るべきでもないと思ってそっと地下三階を後にしたのだった。
 私は、美幸チーフを助けるべきだっただろうか。
 確かに、彼女に救われたことがある。お返しはすべきだったのかもしれない。でも、飛び出して私に何が出来るっていうの。
 私が出て行ったせいで余計に酷い目に合わせてしまった、坂下真由の件があって、それが私にストップをかけたのだった。
 私に見られたことを知れば、美幸チーフをさらに惨めにさせるだけ。

 美幸チーフの深い絶望の表情だけが、いつまでもいつまでも、私の心に深く食い込んで、さらに私の気持ちを暗澹とさせるのだった。
 いったい、いつまでこんなことが続くのかと。

…………九ヶ月

「んっ……んふ……ん」
 デパートの殺風景な地下三階に、設置された広々としたベットルーム。
 暗くて静かな世界で、自分の吐息と男の息遣いだけが響く。
 同僚と話していると、男性客があいかわらず酷い仕打ちをしているという噂を聞く。
 私もそうだった、酷いことばかりされていた。
 はずだったのだが。

 最近、妙に男性客は私に対して優しいのだ。
 弄るでもなく、罵るでもなく。
 まるで恋人を抱くかのように、その手つきはやさしげで。
 私のすでに大きくなったお腹を庇うように、やさしく抱いてくれる。
 この人も、人の親としての自覚が出てきたのか。
 少しは、私に人間としての情を感じてきたのか。
 男性客の化け物じみた醜悪な表情を見ていると、そんなことは信じられない。
 信じられないのだが。

 半年以上にもわたって、ことあるごとに抱かれているこの身はもはや。
 男性客の執拗ともいえる、愛撫を受け入れざる得なくなっている。
 かつては一通りの性技も経験して、酷いことも気持ちがよいことも、やられほうだいやられたあとも。
 こうして、飽きずに私を抱き続けるというのは一つの誠意なのかもしれない。
 お互いに汗だらけになってセックスに没頭する。
 股を突かれながら、腰をまさぐられながら。
 粘膜同士の絡み合いを通して伝わる気持ちというものがある。
 これは『愛情』ではない……『情』でもない……なんだろうこれは『やさしさ』
 いや、もしかするとこれは『いくばくかの後ろめたさ』ではないか。
 なぜか、そんな言葉を想起する。

 もはやそこに私をどうこうようというような技術はなく、ただ愛されるように愛されて、撫でられるように撫でられるだけだ。
 男はもう私の身体を蹂躙しない、私も犯されない。
 そこには、突くと突かれる側の了解というものがあって。
 男はもう、何も言わずに我慢せずに私の中に射精する。
 その暖かい飛まつを、私はただ荒い息で受け止めるだけだった。

 手馴れるとはそういうことで。
 もう私は、抵抗する気持ちすらなく気持ちよくなってよかった。
 どうせ、私はもう全てを失ってどうでもよくなった身体なのだ。
 先も、後も、考えることなくひたすらに。
 お互いに三度きっちり果てるまで、男性客は私を抱き続けていた。
 そんなことが日常の一部になる。
 何も考えなければ、割と居心地のいい生活がそこにはあった。

…………出産、十月十日

 一日の仕事を終えようとしたあたりで、産気づいた私は地下三階に運び込まれた。
 事前に何度も、説明されていたことだから驚きはしない。
 撮影の準備もされていて、ちゃんと医師もそこには待機されて私を待っていたのだから。
 もちろん、いまから産もうという子供の父親もそこにはいた。
「さあ……どんなことをするつもりなんですか」
 私はだから、産気づいて荒い息を隠して、できるだけ平然とした顔をして男性客にそう言葉をぶつけてやる。
 あんな酷いシーンをたくさん見せられたのだ、私だって覚悟はしている。
「どんなことって、ゆかりちゃんには普通に出産してもらうだけだよ」
「はぁ……」
 私は気が抜けて倒れそうになった。
「もちろん、撮影はするけど普通に産んでもらえばいいから」
「へ……ほんとに……」
「ほら、ベットに横になってもう破水始まってんでしょ」
 信じられないけど、信じるしかなかった。
 もう覚悟してきたのに、男が優しい言葉をかけてくるから気が抜けて腰が立たなくなってしまった。
 そうしてたら、気張った気持ちも抜けてお腹が痛い。
 あー、これ本当に張り裂けそうに痛い。
 教えられた呼吸法とか、何とか、総動員して、もう他の事にかまってる余裕なんてないから。

 こうして、後はもう必死で出産するしかなかった。
 想像以上に痛くて苦しかったが。
 無事終わってくれただけでも、神様に感謝すべきだろう。
 何事もなく、無事産めるなんて思っても見なかった。
 それが幸せで、何かしっぺ返しがありそうで、それが怖かった。
 その一方で、文字通り産みの苦しみを味わったのだから、これ以上のことなんてないと思っていたのだが、やはりまだまだ考え方が甘すぎたのだ。

…………そして、出産後

 私の出産は、とりあえず無事幕を閉じた。終わってみるとあっけないものだ。
 子供を産んで病院に運び込まれた後も、あの男性客はとてもやさしくて言い切れない不安を感じたので、私はこう駄目押しした。
「あの、これで私……解放されるんですよね」
「はい?」
「新しいエレベーターガールが次々入ってくるから、一人一回しか孕ませないって言ってましたよね」
「あれあれ……そんな話を誰に聞いたのかな」
 男性客は、なぜだかとても拙そうな顔をして笑っている。どうして?
「私、この娘を一生懸命育てます。母一人娘一人で立派に生きていきますから」
「いやいや……」
 男性客の要望どおりに答えてるはずなのに、どうして反応が悪いの。
「え? あ……あの私の中にドピュ!っと出していただいて、本当に孕ませていただいてありがとうございました。私はこの娘も産めたし、おっぱいもこうして一杯出るようになったし、女の喜びをいっぱい味わいましたので、もうたくさ……もう十分すぎるほど」
 だから、終わって……終わってよ。

 男が黙り込んだので、私も黙った。あの時、地下室で何度も何度も俺の子供を孕ませるぞと脅された美幸チーフのことを思い出す。
 あの悪夢、あの恐怖。ああ……。

「あのさあ……申し訳ないんだけどね」
「やっぱり、私はまたお客さんに犯されるんですね」
 悪夢は、終わらないのだ。もう私の人生は、終わってしまうのだ。
「……そうじゃなくてね」
「はい? 私はまた貴方に犯されて孕まされるんじゃないんですか」
「いや、そうじゃない。俺はもうやらないんだけどさ」
「じゃあ、私は……解放されるのよね」

 もう、私はこの男性客に犯されない。これはしっかりと聞いた、この人がいうのだから本当にそうなのだ。だったら、この沈黙はなに。ただ、私を不安がらせて弄んでるだけかも。
 沈黙を破った男性客によって、そんな望みは打ち砕かれた。
「ゆかりちゃんの作品大人気でさー、それでちょうどうちのレーベル一周年記念だったから、冗談というか、ノリというか、そんな感じで『芹川ゆかりを次に孕ませる権利!』なんてのをアングラオークションに出展しちゃったのね」
「えぇ……ええええ!」
「もちろん、もちろん冗談だよ。最低落札金額一千万円にしてさ。そしたら、誰も落札しないと思うじゃん」
「そ、そうですよね」
 自分が冗談でも売られてるなんて不愉快だが、いくらなんでも一千万円の価値が自分にあるとは思えない。
「それがさ、三千万円で落札した人がいたんだよね」
「えぇ……えええええ!」
「もちろん、冗談だからってすぐ断ろうと思ったんだよ。そしたら、その人が直接うちの事務所に訪ねてきてさあ」
「怖いヤクザ屋さんかなんかだったんですか」
 ヤクザに売られるとか、この男性客より怖いんですけど。
「いや、それが糖尿病と痛風を併発しているっていう頭禿げたおっさんでさ。四十八歳ニートっていうんだよ」
「はぁ……」
 私は、ほっとして拍子抜けした。ニートが三千万も出せるわけがない。きっと悪戯で落札しちゃったから、謝りに着たんだ。
「それがね、ポンと三千万持ってきたんだよ」
「えぇ……ええええええ!!」
「それが話を聞いたら、親の遺産を全部売っても足りなくて、消費者金融をハシゴして三千万きっちりかき集めてきたっていうんだよ。ポケットのなかのヨレヨレのお札まで綺麗に並べてきっちり三千万。そこまでやるかって話だよ、すごいよね、感動だよね……もう、その話を聞いたら俺は男泣きにないちゃってさ。どうぞ、ゆかりを何回でも孕ませてやってくださいって言っちゃった」
「えぇ……えええええええええええ!!!」

 私はどこか遠くに意識が飛びそうなった。
 駄目だ、現実逃避しちゃだめだ。このままだと無理やり話を固められてしまう。
 何回でも犯すってなんだ、そいつと結婚でもしろというのか。
 もう娘だって産まれているのだ。私は一人の身体じゃない、しっかりしないと。
「もう本当に感動した、娘を嫁に出す心境ってあんなのかなあ、そういうことだから」
「待って……ちょっと待ってください!」
「はい?」
 口答えされるとは思ってなかったのだろう、男性客は意表をつかれたような顔になった。
「私がいくら給料もらってるか知ってますか」
「いや……なにいきなり、そんなの知らないけど」
 いきなり質問されて、びっくりした顔をしている男性客。そうだ、いつもこういう感じで、男性客にはめられたんだから今度はこっちのペースに乗せるんだ。
「貴方は、私に娘を立派に一人で育てろといいましたよね」
「たしかに、いったねえ……」
「私のお給料では、子供を大事に育てるなら一人で精一杯ですよ。そんな何人も子供ができたら育てられません。話に聞いたら、そのニートの人も借金まみれみたいだし、どうですか無理でしょ」
「ふーん」
「だから、その話は断ってきてください」
「ゆかりちゃんは、一人目の子供しか育てるお金がないから二人目は無理だっていう、それでいいんだね」
「はい」
 このケチな男性客が、養育費とか出すわけない。私に一銭たりともお金をくれるわけないという確信があった。
 だからこそ、打って出られた賭けだ。
「じゃー、安心してニートの人と一緒になるといいよ」
「はい?」
 一人目の子供の養育費でも払うっていうの……この男性客が、ありえない。それは、ありえないはずよ。
「いやーよかった、どう切り出そうか迷ってたんだけど、実はゆかりちゃんの娘のほうもアングラオークションに出したら、やっぱり三千万で落札されちゃったんだよね」
「えぇ……」
「乳飲み子をすぐ放すのはかわいそうだから、まあ乳離れするまで育てたら、買ってくれた男性のところに引き渡すといいよ。それでお金の問題も万事解決するし、ちょっとゆかりちゃん、聞いてるの……」

 男性の声が遠くなり、私の意識は深い眠りの世界へと現実逃避を始めた。
 とても眠たい、ずっと眠っていたい。
 せめてもう少しだけ……どうせ目を開けたらまた新しい地獄の日々が始まるのだから。
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「エレベーターガール」中篇
 あれは、浮浪者のような風体のあの男性客に、始めて犯されて、中で出された悲惨な日の二日後の出来事だった。
 大体、遭遇は一週間に一度だから、むしろ直後の勤務は大丈夫。
 そのときの私は、本当に馬鹿なことを考えていて、あれほどショックなことがあったのだから、しばらく休めばよかったのに、むしろ何かを吹っ切るようにシフトを、つめつめに入れていた。
 そして、一週間直前ぐらいで、ぐっと休みを取る予定にした。そうすれば、二週間ぐらい会わなくて済むかもしれない。本当は永遠に会いたくないのだが、これぐらいしか私には打つ手がなかったのだ。神様だって、酷いことばかりしないはずだ。
 自分を守る術すら持たない、ささやかな私の回避策は、上手くいくと思っていた。

 だから、二日後のまだ開店してすぐという時間なのに、オニギリの化け物みたいな男性客がにゅっと、顔を出したの見たときは営業スマイルもこわばり、腰がくだけそうになった。
 きっと、顔も青ざめていたに違いないのに。それに気がつかない振りで、男性客は声をかけてきた。
「よう、ゆかりちゃんお仕事がんばってる?」
「……今日は、美津屋百貨店にご来店くださいまして誠にありがとうございます。ご利用階数をお知らせください」
 営業スマイルすらできなかった。ちゃんと台詞が言えたのは訓練の賜物だろう。
 平日のまだ店が開いたばかりの時刻、ちょうど客がまだ来ていないのかそれとも男性客がいるからなのか、他に客はいない。
 箱のなかで、この危険な男と二人っきり。
 私は、もう覚悟した。酷い目にあうことを。
「そうだなあ、十階に行ってもらえるかな」
「へ……はい?」
「なにやってんのゆかりちゃん、十階だよ十階」
「はっ、はい十階、電気製品と雑貨のフロアです」
 エレベーターはスルスルとあがっていく。男性客と私二人を乗せて。そして、男性客は黙って降りていった。
 そうして、扉は閉まる……閉まってくれた!!

 今日は、私はついてる!
 ありえないと思いつつ、私は歓喜に包まれていた。あの男性客は信じられないことに、普通に買い物しに来ただけだったのだ。何を買うのかなんて、私の知ったことじゃない、貧乏そうだし、安物の電池でも買うのだろう。マンガンとか。
 そんなことはどうでもいい、あとは帰りに違うエレベーターに乗って帰ってくれればそれでいい。
 うちは、大きな百貨店だから、エレベーターは四基もある。
 確率は四分の一。たった25パーセント。
 そう、当たるものじゃないはずだ。

 理性では最悪の事態が避けられた、今日はついているから大丈夫だと思い込もうとしているのだが、私の女の勘はもうこの段階で警鐘を鳴らし始めていた。
 エレベーターは最上階まで上がり、そして下がる。客が一向に乗ってこないのだ。いくら平日といっても都心の大手デパートだ。こんなことはありえない。
 そうして、二回ほど上下したときに、ようやくお客さんが乗り込んできた。

 そう、思ったらあの男性客だった。
 すぐ気がつかなかったのは、電気コーナーの店員と一緒に入ってきたからだ。店員は、箱を三つも抱えている。
「ごめん、ちょっとエレベーター止めていて」
 そう年長の店員に言われたので、停止ボタンを押した。店員は、男性客にいろいろと説明しながら、脚立を取り出して設置し始めた。
 何かと思ったら、デジタルカメラだった。似たようなものを三台も設定した。
「いつもありがとうございます、基本的にはどれもボタン押すだけで録画できます。最新機種ですから、自動撮影ズームモードなんてのもありますよ。詳しいことは説明書に書いてありますが、あとからでもご説明させていただきます」
 そういって、きちんと組み立てて設定と設置を手早く終えると、電気コーナーの店員はペコペコと頭を下げながら退散した。
 あとは、立てられた三台のカメラと男性客と私だけが残った。なにこれ……。
「次は、家具売り場に行ってもらえるかな」
「はっ……はい、五階ですね。家具売り場がございます」
 いわれて、慌てて対応する。
 すぐに五階に着くと、何も言わずに男性は行ってしまった。
 ちょっと、カメラ立てっぱなしなんだけど……。

 どうしようと思ったが、私はとりあえずエレベーターを止めて待っていた。
 そしたら、男性客がすぐ来てくれて安心した。
「おー、言わないでもちゃんと止めて待っててくれたんだ。さすがに優秀なエレベーターガールだね。感心感心」
「このままで他のお客さん乗せるわけにいかないですし、あのこれいったい何のつもりなんですか……」
 私が事情を聞こうと思った矢先に、家具売り場の主任と、店員が二人がかりでやってきた。
 そして、なんとエレベーター内にベットを設置し始めたのだ。
 なにこれ……いったい何のつもりなの。
 定員二十五名の広めのエレベーターとはいえ、そのど真ん中にベットが設置されているというのはシュールな光景だ。
「おお、エレベーターの幅にぴったりじゃないか、これはすごい技術だ」
「最新型は、ここの伸縮アームに工夫がありまして、これはマットごと自動で伸縮するタイプですから、長さは自由に調整できますよ」
「すごいね、寝心地も申し分ないし、高い金だす価値はあるよ」
「お買い上げ、ありがとうございます。とりあえずここに設置させていただきましたが、どこかに移動するときは声をかけていただければ、どこでもお運びしますので」
 そういって、家具売り場の店員たちは去っていった。

「あの! これいったいなんなんですか説明してください」
 私は、もうわけがわからなくなってきた。
「わかった、とりあえず扉を閉めて適当なポイントで停止させてくれるかな、ゆっくりと説明するから」
 私は、指示に従うしかなくてそうした。
「ふう、これでよしと。とりあえず落ち着いたね」
「私は落ち着いてませんけど……あのそれでいったい」
「今日は、このエレベーターは貸しきる。君のセクションのチーフにはすでに話を取ってあるからね、君も今日は、ここで一日仕事になるから覚悟してね」
「そんな……」
「こんなに早く起きたの久しぶりだよ……眠い。時間はあるし、このまま少し寝ちゃおうかなあ。君はその間に、この台本を全て暗記しておいてね」
 そういって男に渡された汚らしい字で台本と殴り書きされたノートのタイトルにはこうあった。

『エレベーターガール芹川ゆかり、排卵日種付けセックス ~貴方の子供を孕ませて~』

「なにこれ……ちょっと寝ないでください!」
「もう……なんだよ、俺は君のために徹夜で台本書いてて睡眠が足りてないんだ」
「これ私の名前ですよね、事情がまったく読めないんですが、この本はいったい……」
「君は一度で指示を理解できない、本当に困った娘だよね。履歴書に東政大学卒業って書いてあったけど、名門大学出身なら、これぐらいはすぐ理解しろよ」
「すいません……でも、こんなのって」
 男性客が、ため息をついてベットから飛び下りると、三台のデジタルカメラの角度をベットに向けて、微妙に調節しながら説明を始めた。
「このカメラ一台いくらするか知ってるか?」
「え……その……十万円ぐらい?」
「三十万だよ、じゃあ君が腰掛けてるベットはいくらすると思う」
 ベットの相場なんてよく分からない。でも、すごく高そうなベットだから、私は少し考えてから答えた。
「……五十万ぐらい」
「百五十万だよ……自分のデパートの商品の値段ぐらい把握しとけ」
「すいません……」
 トイレがどこにあるか、どの売り場にどの商品があるかまではちゃんと頭に入っているが、まさか値段まで聞かれるとは思ってなかった。たしかに、そういうケースでもきちんと対応できるに越したことはない。
 これは男性客の指摘のほうが正しいと思った。
「まあ値段はどうでもいいんだよ」
「えー、そういう注意ではなかったんですか」
「そうじゃねえ、ここで大事なのは俺がこれを全部買ったってことだ。デジカメ三台に、ベットでしめて、二百四十万円だ。ゆかりちゃんよ、お前俺が金持ちに見えるか」
「正直なところ……見えないです」
「まあ、そうだよ。だが支払いはしなくてはならない」
「そうですね……」
「そこで俺は考えたんだよ、ものすげえAVを撮ったら、儲かるってな」
「AVってなんですか」
「アダルトビデオだよ、見たことあるだろ」
「ありませんよ!」
 見たことはないけど知っている、その女性のいやらしいところを撮影して売っている、その男性がそういうときに見るやつだ……。
「最近は、ビデオじゃなくてDVDだけどな。この業界は常に、新しいコンテンツが不足しているんだ。すげえヒット作を飛ばして、シリーズ化すれば、ものすげえ大金が手に入るって寸法よ」
 そんな、そんなのって……。
「もしかして、そのアダルトDVDに出演しろっていうんですか」
「おうよ、ようやく分かったか」
「嫌ですよ! そんなのネットとかで流失したら困っちゃいますよ」
 彼氏とか、友達とか、親に、万が一そんなものが見られたら、もうその瞬間に人生終了。多分その瞬間に、羞恥と罪悪感だけで死ねる自信がある。
「大丈夫だよ、通販だけの販売にするし、最近はタイトル数も多いから、そんなに分かるもんじゃないって。まあ、さすがに美津屋百貨店の名前は出せないが、現役エレベーターガールってのは、なかなかないからな。大ヒット間違いなしだよ」
「そんな……そんな……」
 私は絶望で目の前が真っ暗になった。
「もうカメラもベットも買っちゃったしな。やるしかないわけだ」
「そんなの、買わなければよかったじゃないですか!」
「だってカメラもベットも、新しいのが欲しかったんだもん」
「そんな理由で……私は」
「だから安心しろって。ちゃんと綺麗に撮れたら編集して一本贈ってやるからな、いい記念になるぞ」
「いらないですよ……」
「やっぱ、女は綺麗なうちに撮っとくべきだしな。ほら、最近記念にヌード撮るのも流行ってるジャン。あとから、子供に貴方はこうやって生まれてきたのよって、いい思い出映像になるんじゃないかな」
「考えうる最低の未来です……」
「素晴らしい未来を想像したら眠くなってきたな。三時間やるから台本を全部暗記して、頭のなかで何度も段取りをリハーサルしとけ。お前これは仕事だぞ、お金とってお客さんに見せるんだから完璧に台本覚えて、その通りにやれと厳命しておく」
「……はい」
 逆らえるわけもなかった。厳命とまでいわれては。
 男は、言うだけ言って私が理解したのを見届けると、高級ベットに寝転んで寝息をたて始めた。こんな密室の中で、高いびきがかけるなんて得な性格をしている。
 私はというと、あまりにも汚い文字と、それ以上に陰惨な内容の台本に、苦しめられながら、それでも完全に頭に叩き込むまで、読み続けなくては、ならなかったのである。

……アダルトビデオ撮影開始 三時間後

「ぐーぐー、…………げほげほ……はぁっくし!」
 急にいびきが止まったと思ったら、咳き込み、クシャミを併発させながらきっちり三時間後に起き上がった。
 なんて時間の正確さだろう、起きかたの最低さは置いておくとして。
「おはようございます、おめざめですか」
「おう、台本は読み込んだか」
 私としては、夜まで寝ていてほしかったのだが仕方がない。
「はい、全部暗記して段取りもリハーサルしました」
「ふん、ちゃんと言えばできるんだな」
 厳命されてしまっては仕方がない、私としてはもう辛い時間が一刻も早く終わることだけを祈りながら、心を殺すしかない。殺しきれないほど、心を揺さぶる酷い台本なのだ。まるで身体と一緒に心まで犯すような。
 こんなものを徹夜で書いたという、この男性客は悪魔だ。
「じゃあ、シーンのはじめからやりましょうか」
「ちょっとまて、俺は顔が割れないようにこれをかぶらないとな」
 そういって、パーティーグッツによくある変態的なピンクのメガネをかけた男性客。
 そんなものまで用意していたのか。なんか妙に似合っているけど。
 男性客の特異なオニギリフェイスでは、そんなメガネで目元だけ隠しても、ぜんぜん意味がないのではないかな。
 それにしても、そうやって顔を隠すということは顔にモザイクなどはかけてくれないということだ。
 私は顔を隠せない。もう、始まる前から痛みだす心を押さえつける。
「台本どおり、私のほうの準備も済んでますからいつでも始められます」
 男は、また気になるらしくカメラを覗き込んで微調整をしていた。撮影班がいないので、三つの映像を上手く編集してつなげて撮るつもりなのだと、台本には注意書きされていた。
「よーし、じゃあ撮影始めるぞ。スタート」
 そういって、三箇所のカメラの録画スイッチを押していく。
 私の最悪の時が、始まった。

「始めまして、画面の前の皆さん。私は、芹川ゆかりといいます。歳は二十三歳で、職業はこのデパートのエレベーターガールをやってます」
 そういって、きちっと立って斜め四十五度の綺麗な礼をする。顔は、笑顔しか許されていない。
「すいませんね、仕事の合間に撮影に付き合ってもらって」
 そういって、男性客が入ってくる。顔にマスクをつけているだけで、もう素っ裸になっている。
 さすがに自分の書いた台本なので、台詞は完璧のようだ。
「いえいえ、今日は楽しみにしてきたんですよ。エレベーターガールの仕事にも、息抜きは必要ですから。アハハ、まさか本当にエレベーターの中で撮影とは思ってませんでしたけど」
 そういって、なるだけ可愛く見えるように小首を傾げてニッコリと笑う。
「職場だとやっぱり気がゆるめられませんか、とりあえずもっと楽な格好をなさっていいですよ」
「ええ、いいんですか。それじゃあ、失礼して」
 そういって、私は制服のボタンを上からはずして、中のシャツのボタンもはずして胸をむき出しにする。ブラジャーは事前にはずしておいた。
「おわ、でっかい胸ですね。ブラジャーはつけてないんですか」
 白々しくいう男性客。
「ブラジャーはきついから、つけてないときもあるんですよ」
「そうなんですか、ぴっちりとした制服だけど大丈夫なんですか」
「うふっ……身動きすると、乳頭がすれてちょっと気持ちいいぐらいですね」
 大嘘だ。ブラをしないで仕事なんかできるわけがない。
「それにしても、でかいおっぱいですね」
 そういって、男は私の胸を掴んでくる。
「そうなんです。ありがとうございます、自慢のおっぱいなんですよ。感度もいいんで、遠慮せずにもっともっと触ってください。ああ気持ちいい……この前計ってみたら、ブラがKカップのアンダー六十五センチでしたね」
「ええっ、えっとH、J……Kカップってことはトップバストは百センチ超えてるのか! なるほど言われてみると重量感があるはずだ」
 男は指折り数えて、スケベそうな笑いを浮かべる。
「でもここまでいくと大きすぎて揉み辛いですよね、ゴメンナサイ」
 男はもっと強く左右の胸を弄ぶ、右へ左へ。画面にむかって見せ付けるように。
 私は自分の胸の大きさに少しコンプレックスがある、こうやって弄ばれても、本当は嫌悪感しかないのだが、台本どおりに気持ちよさそうに馬鹿げた嬌声をあげ、熱い吐息を吐きかける。

「ゆかりちゃん、ただでさえ爆乳なのに、妊娠しちゃったら、もっと大きくなっちゃうかな。大体二カップぐらい大きくなるらしいですよ」
「うあー、うれしいな! えっといまKだから、L……Mカップになるんですね」
「ははっ、ゆかりちゃんは、文字通りマーベラスなオッパイになるわけだね」
 寒いギャグだ……ここ自分の台詞じゃなくてよかった。
「もう、おじさんギャグですよー」
「ごめんごめん、おじさんだからね」
 本当だよ。
「でも、ゆかりもおじさん大好物だから、おあいこです!」
「そうなんだ、じゃあちょっと最初に質問していいかな」
「何でも聞いてください」
 そういって、自分のおっぱいをなるべく淫らに両腕で支えて揺らしながら営業スマイル。これは、質問の間ずっと続けなくてはならない。淫らっていうのが、よく分からないがとにかく激しく揺らせばいいだろうか。

「じゃあ、えっと初体験はいつですか」
 これは、お決まりのセオリーらしい。ハキハキと答えろと書いてあった。早く答えて終わりにしたい。
「十七歳のときに、最初に付き合っていた彼氏の家でしました」
「そうなんだ、高校生のときだね。気持ちよかった」
「もちろん、とっても気持ちよかったです」
 これも、嘘。気持ちよくはなかったかな、むしろなれるまでは痛かった。最初の彼氏は幼馴染みたいな関係だったのだが、あまりセックスは上手くはなかったのだ。お互い初めて同士だったし、ぎこちなかったとしても愛があればいいんだとそのときは思っていた。
「そうなんだ、セックス大好きなんだね」
「はい……大好きです!」
 これは定型句。大好きと答えるしかない。
「これまでの彼氏の数と、セックスした人の数は」
「えっと、彼氏が三人でした人は三人かな」
「あれ、ちょっとまって、数があわないな。二日前に俺としたよね」
 ここは自由解答で本当のことを答えろとの指示。
 そして、アドリブで質問が混じることがあると書いてあったから。素直に答える。
「そうですね、おじさんで三人目なんですよ。二人目の彼氏とは、ちょっとしか付き合わなかったのでそこまでいかなかったんです」
「セックス大好きなわりには、経験数は少ないんだね」
「学生のころは勉強が結構大変だったのと、結構、引っ込み思案なもので。あと、一度彼氏が決まるとその人ばっかりになるタイプなんで」
「そうなんだ、彼氏には尽くすタイプなんだね」
「はい、そうなんですよ」
「それなら、いまの彼氏がいるのに、俺みたいな男とセックスしてしまってよかったのかな」
 ここから、また台本に戻る。私は、その合図に胸を自分で揺らすのを止める。この話のつなげ方は、さすがに男性客がうまい。自由解答のときに、できたら話の流れを台無しにしてやろうかと思っていたんだけど。

「彼氏は……ヒロユキくんっていうんですけど、好きって感じですね。でも、おじさんは一目見た時から、愛してるって感じです」
 そういって、愛しげに男性客を見つめる。心の中でため息をつきながら。
「そうなんだ、惚れられちゃったかなあ」
「おじさんみたいな人、私ものすごいタイプなんですよ。みていると子宮が疼くんです。この人の子供が欲しいって、これって愛してるってことですよね!」
「そうかもしれないね、俺もゆかりちゃんに子供を産ませたいって思ったからね」
「彼氏とは、ゴムつきでは週一ぐらいでやってますけど、もう四年も付き合ったから惰性って感じで。この人と結婚したいとか、子供が欲しいとかまったく思わないんですよね」 これは、台本どおりの台詞だったのだが、私は本当に彼氏のことをどう考えていたんだろう。好きかと聞かれたら、好きだと答えていた。愛しているかと言われれば、心から愛していた。
 それでも、私たちはまだ社会人としても未熟で、結婚とか出産とか、本当に蜃気楼の先にあるように感じていた。
 答えを出すのが怖かったのかもしれない。そうやって出し渋っているうちにこういう悲劇が起こってしまって、一生その答えが出せないままで終わってしまうことになったのだ。こういう辛いことは、生きているとたまにある。
「でもいいのかなあ、君は俺の名前も知らないのに、俺は金ないから養育も認知もできないんだけど」
「大丈夫ですよ、この仕事すごく給料がいいし、福利厚生もばっちりですから、おじさんとの子供一人ぐらい私一人で十分育てられますよ」
「そうなんだ、あとで困ったとかいってもおじさん知らないよ」
 私はこのタイミングで、下着とストッキングを一緒に脱ぎ去ってしまう。
 そうして、スカートをたくし上げて股をいっぱいに開くと。
 自分の手で、自分の小陰唇を全開にして、こう言い放つ。
「もう、じれったいな。さっさと、私のオマンコに、その立派なおちんちんをねじ込んで、ズポズポして気持ちよくなって、赤ちゃんの卵がでる入り口に向かってピューピューおチンポミルクを射精してください。そうしたら、私は勝手に受精して、お腹に赤ちゃんを孕んで、ひねり出して立派に育ててあげますから」
 勢いをつけないと言えないぐらいの、あまりにも馬鹿げた台詞。言い切って笑ったあとに、ちょっと心が苦しくて目が潤んだ。

「ちょっとちょっと、落ち着いてゆかりちゃん。これAVだから、撮影してるんだから手順があるからね」
「ハァハァ……ごめんなさい。そうですよね、画面の向こうで見てくれてる人もいるのに……私ったら、今日は排卵日で興奮してる、ただのメス豚の馬鹿女なんです。おじさんの子種をいただいて妊娠できるって思っただけで、もう下の口から涎を垂らしてるんですぅ」
 よく、次から次へとこんな馬鹿な台詞を考え付いたものだ。こっからさきは、もう自分で言ってて悲しいやら、情けないやら、酷いやら、という台詞のオンパレード。こんな台本を一日で仕上げたという男性客は頭がおかしい。
「そうだ、アナルの開発はちゃんとやってるかな」
「はい! もちろんですよ二日前におじさんにローションとアナルバイブをもらってから、毎朝毎晩かかさず、アナルオナニーやってます!」
 正確には、やらされてるなんだけど……。
「そうなんだ、感心だね。おじさんはアナルも好きだから、開発してくれるとうれしいよ」
「そうなんですよね、ごめんなさい。私はアナルは未経験ですから、ちょっと時間がかかるんですけど、きっとアナルでも感じられるようになりますからね」
 そういいつつ、私はローションとペンシル型のアナルバイブを取り出して、お尻をこねくり回す。ここ二日ぐらいやってて、ようやく慣れた動きになってきた、自分でも何をやっているのかという感じ。
 必死にやれという指示だったので、うう……怖いけど肛門に指を一本二本と増やしてどんどん潤滑油を入れて、そしてペンシルバイブを思いっきり突っ込む。
「はぎゃぁあ!」
「あー、そんなに無理して入れたら駄目だろう。ゆかりちゃんのアナルが傷ついたらおじさんが困っちゃうよ」
 お前が、やらせてるんだろうという涙目。それでもきちんと笑顔を貼り付けてしまっている自分が憎すぎる。
「ごめんなさい……ほら、妊娠しちゃったら安定期に入るまで前の穴で出来ないことがあるって聞いたから、早く後ろの穴でも出来るようになっておじさんに入れてもらおうとがんばってるんだけど」
「大丈夫、焦らなくてもゆっくりでいいからね」
 そういって、男性客は愛しげに私の尻をなでる。
 もちろん、必死に入れているように見せかけただけで本当に肛門が傷つくほどには突き入れていない。
 それでも、結構奥まで入ってしまうということは、たった二日朝晩やっただけなのに、自分のお尻の穴は思ったよりも広がってしまっているのだなということに、言いようのない悲しみを感じる。
「うん、赤ちゃん孕んで用済みのオマンコの変わりに、こんどはケツマンコでがんばりますので、ボテバラになってもいっぱいセックスしてくださいね」
「あーゆかりちゃん、足閉じないでね、そのままそのまま」
「はい?」
 せっかく恥ずかしい台詞をまた言い終えたのに、こんな展開は台本になかった。
「ほら、これなんだ!」
「ああっ、それは」
 男性客が取り出したのは私の愛用している基礎体温計。
 淑女のたしなみとして、私が毎朝はかってるものだ。
 それはどうでもいいけど、問題はどうして私の部屋の枕元においてあるはずの体温計を、この人がいま持っているのかってことだ!
「そう、ゆかりちゃんご愛用の基礎体温計だね。じゃあ、お熱はかりまちょーね」
「ええぇ、ああっ!」
 そういって、私の体温計を私の大事な部分に突っ込む男性客。私は、台本にもない行動だったから、本当に驚いて声を上げる。
「いいから、そのままじっとしてて」
「はい……」
 というか、基礎体温は普通に測るんであって、そんな場所で測るものじゃないんだけどなあ。それでも、悲しいかな体温は測れてしまうのだ。
 ピーという音を立てて、真っ赤なランプが点滅する。
「これはつまり、危険日っていうことだよね」
「そうですね、排卵日がもう間近に迫ってるってことです」
 ニュプっと、引き抜くと男性客はまた体温計をしまいこんでしまう。
 私のものなのに……。
 それにしても、どうしてあの男性客が持ってるんだろう。
 基礎体温計は毎日のデータを集積して測るものなので、同じものを買いなおせばいいというものではない。
 返してもらえないと、明日から本当に困るんだけど。
 ああもしかすると、今日の行為で、基礎体温測る必要なくなるとか……男性客の台本にまったくない突然の行動に不意を突かれて、心が揺れてしまったのか。どんどん暗い想念が浮かんできて、笑顔がこわばって来て、維持できなくなっちゃう。
 心が酷い現実に、引き戻される。
「危険日の証明も終わったところで、まずフェラチオしてもらおうかな」
「はい、ほんとは子種は全部オマンコにほしいですけど、私ばっかりしてもらっては駄目なので、おじさんに気持ちよくなってもらうためにがんばります!」
 また台本の台詞に入ったので、私は心を振り切ってまた流れに戻った。
「じゃあ、こっちのカメラの近くにきてチンコ舐めてね」
「はーい、おいふぃいです」
 ジュポっと咥えて、まるでアイスクリームを舐めとるように男性客のあそこを舐める。たぶんこの男は、こうやってAVの撮影もうまくやりながら、身体と一緒に私の心も弄んで楽しんでいるのだ。
 それへの私のできるせめてもの抵抗といえば、台本に乗って必死に心のない馬鹿女を演じ続けるだけだ。
 だから、舌技の限りを尽くして必死に舐めてやった。男性客の汚らしいタマタマまでも舐めとる。
「おお、気持ちいいな。すぐ出しちゃいそうなぐらいだよ」
「きもちふぃいですふぁ」
 台本にはフェラチオをするとしか書いてなかったので、最初からここまで必死にやるとは、思ってなかったんだろう。少しだけ、出し抜いてやれた気がして楽しかった。これも情けなくて、悲しい楽しさだけど。
 それでも、舌を休めることなく、今度は必死になって尿道口に吸い付いた。
「おおっそんなに強く吸うか!」
「ふぁやく! だふぃて」
 ほんの少し、男性客が台本と違う台詞になってる。男性客に一糸報いてやれたか。
 私が間違えることは禁止されているが、男性客は別に自分で間違えるのは自由なのだろう。だから私ができることっていうのは相手の予想を超えて、驚かしてやることぐらいだった。
「うおおお、出ちゃう! すぐ飲んじゃだめだよ口の中に溜めて」
「ふぁい!」

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 私の喉に突き刺さるような濃い粘液を吐きだす、男性客のチンポ。私の口のなかは、精液で一杯になっているはずだ。
「ふぅ……たくさんでた。ちゃんとお口に溜めて見せて」
「ふぁい、あーん」
 口をあけて、私は台本どおりカメラの前に舌をだす。自分の舌の上に真っ白な精液が乗っているのが、カメラの横のモニター画面で見えてしまった。
 自分で見たくない光景だった、心のそこから吐き気がする。
 私は楽しげに、口の中の精液を私は指で弄くって遊び、画面に向かって、見せ付けるようにする。全ては台本どおり。
 口の中で、精液はどんどん苦味を増していく。酷い味だ。
「よし、十分楽しんだら、もう飲んでもいいよ」
 ゴキュゴキュと、私は口の中の精液を飲み干す。
「ふぅ……濃くておいしかったです」
「どうだった、俺の精液は」
「濃すぎて、口マンコも妊娠してしまいそうでしたぁ!」
 そういって、満面の笑みを浮かべる。馬鹿女になっている私。

「じゃあ、次はいよいよゆかりちゃんのオマンコズポズポしてあげようかな」
「わーい! 私オマンコ、ズポズポ大好き!」
 もうやけっぱちだ。
「その前に、オマンコをよく濡らそうね」
「はーい!」
 こんなキャラだと男性客に思われてるんだろうか、私は。
 男性客はカメラの一つを動かし、私のあそこにズームさせる。
「綺麗なオマンコだね」
「ありがとうございます」
「クリちゃんも皮をかぶってるし、あんまりここでは遊ばないのかな」
「そうですね、あんまり触らないかも……あぁ」
「ここもね、よく剥いて拡張してあげると、大きくなるんだよ。今度してあげるね」
「そうなんだ、楽しみにしてますね」
 私は、またひとつ後戻りできない道を歩かされるらしい。
 舐められたり、指でこねくりまわされたり、一通りのことはされた。
 悲しいかな、物理的刺激があれば、私は感じるし濡れもする。
「もう、ここも、大丈夫みたいだね」
「ええ、もう十分です。ありがとうございます」
「ちゃんと、お礼の言える娘は好きだよ」
 そういって、笑って男性客は頭をなでる。馬鹿にされているとしか思えない。
「早く、中に出して欲しくて待ちきれないです」
 私の前に、ぬっとカメラを持ってくる男性客。正確にいうと、舐められやすいように大きく股を開いた私の股のところにカメラを持ってくるわけだ。
 ズーと、私の女性器の奥までが見える位置に自動ズームされたのが分かった。ああ
私は撮られてはいけないところを一番奥まで撮られているんだなと感じる。
 深い諦めと絶望、もちろん顔は微笑んだまま。

「じゃあ、ちゃんと開いてカメラの前で懇願してごらん」
 そういって、男性客はいやらしげに笑う。
 私は、それを合図に、自ら腰を上げて、子宮口が見えんばかりの勢いで自分の女性器を開き、こう懇願する。
「はい、当店でエレベーターガールをしている芹川ゆかり二十三歳です。私は、今日はちょうど排卵日で、ザーメンを卵にかけてもらって妊娠したくてたまらない、いけない変態メス豚です。いまから、欲しくて欲しくてたまらなかったおチンポミルクを注いで妊娠しちゃいます。画面の前の皆さんも、どうぞ私のオマンコに射精して妊娠させてるような気持ちで、私が赤ん坊を孕むところを見てくださいね。この後、私のお腹が大きくなってくるいくところから、出産までちゃんと作品にして撮ってくださるそうなので、そちらも楽しみにして待っててください」
 台詞の一つを言うたびに、人間としての何かを一つ失っていくような気持ち。
「よく出来たね、じゃあせっかく職場なんだからエレベーターガールっぽく迎え入れてもらおうかな」
 そういって、男性客は私にのしかかってくる。
「はい、本日は私のオマンコにいらっしゃいまして、誠にありがとうございます。ご利用回数をおっしゃってください」
「じゃあ、とりあえず一回で」
「もう、そんな意地悪いわないで、二回でも三回でも私の中でイッってください!」
 そういって、腰に手を添えて可愛らしい仕草をする。
「こらこら、エレベーターガールはお客さんに言われた回数にイクものでしょ」
「ごめんなさい、私はいやらしいエレベーターガールなんです。それじゃあ、代わりにお客様が一回に行く間に、私は五回にも十回にも行ってしまいます」
「じゃあ、いまからオマンコするから。そのサービスがよければ二回でも三回でも利用してやるよ」
「よろしくおねがいしますぅ!」
「さってと、吸い付くようなオマンコだな」
 男性客は汚らしい男根の先っぽを私のあそこにと這わせた。男の粘膜と私の粘膜が触れ合ったときに、私の身体はビクンと震えた。
「いまからでも、ゴムつけてやってもいいんだぜ。別に気持ちよくなりたいだけなら、子供まで孕まないでもいいじゃないか」
 そういって、腰を押し付けたり引いたりする。
「違うんです、妊娠したいんです。赤ちゃんは早くつくったほうがいいっていうし、二十三歳で適齢期だから、おじさんみたいな素敵な人の赤ちゃんを産みたいんです。お願いだから、意地悪しないで入れてください」
 ゴムなんかつける気がないくせに、私から誘惑してしたという言い訳が欲しいために、こういう過程を取るんだろうな。
 こうして映像に残されてしまえば、どんな結果が起きても、見てる人は私が誘惑したせいだと思うに違いなかった。
 台本どおりの酷い台詞をしゃべらされている自分に絶望しながら、頭のどっかの冷静な部分がそんなことを考えていた。
「しょうがない変態娘だなあ、たっぷり中で出してやるから、がんばって孕みな」
 そういって男性客は、腰を抱え込むようにして、私の奥深くに一気に挿入した。ニュプッっと音を立てて、私の大事なところに彼のものが突き刺さる。
「ああああぁぁ」
 私は叫び声をあげながら、最後に残った理性が音を立てて消えていくのを感じていた。
 ああ、汚らしい指で触られたときだって嫌悪感はあった。でもいままさに、私の中に突き入れられようとしているこの暖かい肉棒は、私を妊娠させようという生殖器なのだ。
 ニュプっと、あの男の生殖器が私の深いところにえぐったとき。
 粘膜と粘膜が擦り付けあう感触を、私は生々しく感じていた。
「おらおら、どうだ」
「いいですぅー、ああぁー、気持ちいい!」
 彼氏との慣れていて、しかも愛のあるセックスであればこんな強烈な感じ方はしない。 名前も、住んでいる場所もしらない、年齢すら分からない汚らしいおっさんの生殖器が私の中に入ってくる強烈な異物感。
 なんという口惜しさだろう。
 それなのに、認めたくないけれど、私はこのとき台本には書かれていない本当のメスの叫びを上げていた。
 私の生殖器は、私の意志に反して男の生殖器を喜んで迎え入れていたのだ。
 彼が腰をつけば、私の肉襞の一枚一枚が歓喜の声をあげて彼を向かえ入れた。
 彼が腰をひけば、私の肉襞の一枚一枚が亀頭のそりを行かないでと掴んで中々離さなかった。
 なんで……この男根は、ヒロユキのものじゃないのよ。
 どこの誰ともしらない、汚いおっさんのやつなのよ。
 何で分からないの、それとも分かって……私のあそこは吸い付いてるの。
「らめぇー、もう死んじゃう!」
 私は、台本どおりに何度も何度もオーガズムを迎えた振りをする。
 あくまで、これはイッた振り……。

「今何回いったの」
「五回です、五回でございますぅーー!」

 最初は振りだったはずなのに、快楽の波が何度も襲ってきて、振りなのか本当に自分が感じているのか分からなくなってきた。
 違う、私は本当に感じて嬌声をあげているのだ。
「ふう、うめえ」
「ああ、またきちゃう……」
 男性客の愛撫はあまりにも強引で執拗だった。
 やさしい私の彼氏の愛撫とは、比べ物にならない。
 もちろん、彼氏のほうがよかった。こんなおっさんなんかの手がいいわけがない。
 それなのに、私の身体中が感じていた。
 彼氏なら、私の身体に触れるときは常にやさしく振れる。この男は、ゴツゴツした手で、私の胸を根元から力いっぱいしごきあげるのだ。そして、その刺激で起きたった乳頭に噛み付くように力いっぱい吸い付く。
「あああああぁぁぁ」
 そんなことをされたら、後が残ってしまう。痛いはずだった、苦しいはずだった。それなのに、このときはどんな酷いことをされても、全て快楽に変換されてしまう。
 私の身体が……おかしい!
 私は自分の変化に気がついた、男性客の腐った味がする舌を、加齢臭がぷんぷんと匂いような身体を、私は少し好きになりかけているのだ。
 このAVの台本の儀式は、私のプライドを粉々に打ち砕いただけではなくて、丁寧に私の心の門を押し開いていく効果があったのだ。
 そうとしか、そう考えでもしなければ、私の心は壊れてしまいそう。
 何でこんなにも気持ちがいい。

 最後の矜持は守るつもりだったのに。

「いやぁあああ」
「今何回だ」
「十回……十回……」
 本当に数回連続でいかされた、私の身体は馬鹿みたいに何をされても、気持ちがよかった。
 男はもうただ技巧もなく、私にチンチンを押し込んでこすり付けて、ぐちょぐちょにして、ただ腰を振るだけだ。その腕は、私の胸を乱暴に掴んでしごくようにこすりあげる。 あるいは、手で私のお尻を持ち上げて、真っ赤になるまで叩く。
 痛みが、快楽に変わっていた。
 嫌悪感が、快楽に変わっていた。
 悲しみが、苦しみが、怒りが、その全ての絶望が、みんなみんな快楽に変わっていた。そこにいる私は、もう私ではなかった。
 私は、AVに出演している馬鹿女。
 こんなおっさんの精液を欲しがって、自分から腰を振って、中に出されて妊娠するメス豚。みんな私が悪い……私が気持ちいいのが悪い!
「そろそろ、限界だ。中に出していいのか」
「出して! 中に出してお願い!」
 私は腰を振ってお願いしていた。
「くそ、出るぞ……ゆかり、孕めよ!」
「孕む……孕む!!」
 私のぎゅうぎゅうに締め付ける膣の中で、男のモノはブクッ!
 そう、音を立てたように膨れ上がった瞬間に、男は私の骨に響くぐらいガツンと私の一番奥に差し込んだ。
 まるで、子宮の中に入ってしまったような、そんな一突きだった。
 そして、その瞬間に男は私の一番奥で限界を迎えた。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

「あああぁああああ!」

 私の中に、余すところなく、大量の精液が、絶望的なまでに、降り注いだ。
 その瞬間に、私の心はどこかに吹き飛んでしまったようだった。
 世界が真っ白にそまって、私は死ぬほどの女の幸せを味わった。

 それは永遠に続く、地獄の喜び。

 私は、あとにこの自分の人生最大の汚点を、DVDで何度も繰り返しみてそのたびに絶望を深くする。
 私はその瞬間、誰にも見せられないような、本当に醜い顔をしていた、涙を流して顔をくしゃくしゃにして鼻水をたらして、口を半開きにして、身体はピクピクと痙攣するように震えていた。
 男性客にぐっと抱きしめられて、足を空に突き上げて、腰は余韻に震えて、さらに男の精液を膣で味わって飲み込もうとしているみたいだった。
 まるで野蛮な獣みたいに、機械仕掛けの人形みたいに、こんなのみんな嘘だと思いたかった。映像さえ残っていなければ、こんなに苦しむこともなかったのに。

 男は、私の股からニュプっと半萎えのチンコを引き抜いた。
 高性能カメラのズームは、いやらしいことに私の中だしされたマンコへとズームする。そして、ドロリと流れ落ちる精子と愛液の塊。
 どれほど、大量に出されたというのだろうか。その精液は確実に私の子宮の奥底まで吐き出されていたのだ。
「あぁ……もったいない…………」
 私はここで、もったいない精子が流れちゃうとかき集めるしぐさをする予定だった。そういう台本だったのに、身体がもういうことをきかなくて、身動きすらできなかったのだ。ただ、情けなく股を開いて精液を垂らしたオマンコをカメラのまえにさらすだけ。惨めな姿だった。
 男性客も、さすがに全力を使い果たしたのか、荒い息を吐いて苦しそうにしていた。

 男性客は、ちゃんとオマンコから精子が流れ出したところが写っていることだけ確認すると台詞間違えのミスを犯した私を、非難することはしなかった。
 私はようやく息を整えると台詞を言い直した。
「ああ、もったいない、せっかく中に出してもらった精子が出ちゃいましたね」
「大丈夫だよ、もう一回中で出して今度はもっと奥に押し込んであげるからね」
 そういって、男性客がまた私にのしかかってきて二ラウンド目に突入。
 ここで、台本は終了のはずだった。
 あとは、しっかり妊娠しますの宣言だけ編集でつないで終わりのはずだった。

 それなのに、なんでまた本気で二ラウンド目をしているんだろう。
 今度は、私に甘いキスをして男性客は雰囲気を出してくれた。
 しばらく、下でつながりながら私はたっぷりと舌を絡み合わせていた。
 臭いはずの男性客の唾液が、このときだけまるで甘い物のように感じたのは、もう私は頭がおかしくなっていたからだろう。
「おら、おら、おら」
「あん、あん、あん」
 あとは、もう技巧もへったくれもなかった。
 ただ、お互いに寡黙に腰をぶつけ合うだけ。
 一度火のついた私の快感は止まらなくて、また新しい波が押し寄せてくる。
 さっきもうあれほど死ぬと思ったのに、またさらにそれより大きくて深い波。
「ああぁぁぁああああああ」
 私は、何かもう別の生き物になってしまった。

 男は、ふっと息をつくと腰を止める。私の膣は、馬鹿になってしまったみたいに、男のいちもつをぐっと握り締めるように吸い付く。
 こんなの現象は初めてだった、自分でも動かしたつもりがないから、止めようがない。まるで。膣でフェラチオしているようだ。
「はは、お前のオマンコ吸い付いてきてるぜ」
「いわないで……いや、なにこれぇいやぁああ」
 男が腰を動かしていないのに、私は勝手に腰を自分で動かしていたのだ。そして、膣はまるで別の生き物みたいに、キューキューと男のおちんちんを引きちぎらんばかりに締め付ける。
「こりゃー、いいや」
「いやー止まらない、いああぁあ」
 さっきから、まるでおしっこするみたいな勢いで愛液が噴出してきている。
 男は、そんな私の腰の動きに合わせて、胸を弄んで、握りつぶさんばかりに何度も絞って、絞れるだけ絞って。
 そして、私の引っ張りあげられた右の乳頭にカリっと音を立てて噛み付いた。

 その瞬間だった。
 ジューと音を立てたようにして、何かが私のお腹の中から飛び出した。
 愛液が出たんじゃない……なにこれ、なにこれ、まさか。
「私……うそ」
「ゆかりちゃんのおっぱい最高!」
「私、排卵しちゃったかも」
「おー卵でたか!」
 そんなの、排卵が分かるとか、ありえないのに。このときは私は本当にそんな感じがしていた。
「どうしよう、どうしよう、私排卵しちゃった」
 そういいながらも、私の膣はぎゅーぎゅー男のいちもつを締め付ける。
「ははは、こりゃ妊娠確定だな」
「いやぁあ」
 男はそれに触発されたのか、また腰を降り始めた。
「ほら、もう大人しくしろよ」
「いやぁああ」
「ゆかりちゃんの、卵に精子ぶっかけるよ」
「駄目ええぇぇえ」
 駄目だといったのに、止めてくれるわけもなく、また私の一番奥で駄目押しの射精をする男性客。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 熱い精液が、もう何発だしたかも分からないというのにたっぷりと、私の子宮口から注ぎ込まれ子宮壁に、叩きつけられる。逃げ場のない精液は、そのままドロリと排卵してしまったかもしれない、私の卵管へと流れていく。
「あはは、今頃俺のおたまじゃくしがゆかりちゃんの卵に向かって泳いでるよ」
「駄目っていったのに……ほんとにできちゃう」
 男は精液が流れ出さないように、腰を浮かせて私のお尻に枕を載せた。
 子宮の奥の奥まで、真っ白に精液に多い尽くされ、膣の入り口までたっぷりと私の膣は精液を溜める袋みたいになっている。
 その様子までカメラにとって、ぐちょぐちょと弄って遊ぶ男性客。
「ちゃんと妊娠できるように、しばらくこのままでいようね」
 私は、何か文句をいいたいのをぐっと堪えて口をつぐんだ。
 台本の台詞に入っていたからだ。
 すぐに、口が笑顔の形になる。どうしようもないことなのだ。
「芹川ゆかりです! たっぷり、排卵日の子宮におチンポミルクを出してもらいました! 本当にありがとうございます」
「いやいや、俺も気持ちよかったから満足だよ」
 そういって、私にちゅっとキスをする男性客。
「これから排卵して、注いでもらった精子でこのおじさんとの赤ちゃんを妊娠しますので、皆さんも私の妊娠出産を楽しみにまっていてくださいね」
 そういって、私は膣の中にたっぷりと精液を溜めたまま、ニッコリとピースサイン。

「はい、撮影終了! ゆかりちゃんご苦労様」
「もう……ようやく……終わったんですね」
 私は心身ともに疲労していた、もう何も考えたくない。身体を元に戻そうとすると、すぐに止められた。
「こらこら、そのまま三十分はじっとしてないと。よく子宮の奥底まで精液を流し込んでおかないといけないからね」
「そんなあ……」
「ちゃんと妊娠しないと、今後の撮影にも差し支えるからしばらくこのままね」
 そういって、また男性客は私にキスをした。
「もう……撮影は終わったんでしょ」
「パパがママにキスしただけだよ、もう他人の身体じゃないんだからな」
 そうやって、いやらしく笑う男性客……こいつは最後の最後まで。
「はい、もうどうにでもしてください」
 もう、悪態をつく元気もなかったのだった。
 こうして、長い長い地獄のAV撮影は終わった。
 それでも、私の地獄の日々のまだ入り口にすぎなかった。

……芹川ゆかりのマンション 一ヵ月後

 これまでずっと考えないようにしてきたが、生理が前の予定日から来なくて、二週間もたってしまった。ただの生理不順なんてレベルではなく、あの男性客にも会うたびに急き立てられるので、ついに自分を誤魔化し続けることも出来なくなって、デパートのトイレで妊娠検査薬を使ってみた。

 結果は「陽性」

 できてしまっているってことだ。

 できてしまったってことだ。

 そんな……。

 手が震えて、私は検査薬を取り落とした。落ちた検査薬が立てる乾いた音が、どこか遠くの世界の出来事のようだった。

 誰の顔を見たくなくて、ましてやあの男性客の顔なんか見たら、もう辛くて死んでしまいそうで、すぐさま早退を申し出た。チーフは何か察してくれていたみたいで、すぐに帰っていいと慰めの言葉をかけてくれた。
 今の私には何の救いにもならないけど。

 気がついたら、自宅の前に立っていた。どう帰ってきたのかも覚えていない。
「あれ……鍵が開いてる」
 私は、何も考えることなく部屋の中に入っていった。
 恋人のヒロユキがいた。彼は私のマンションの合鍵を持っているのだから、彼が鍵を開けて部屋にいてもまったく不思議はない。
 ただ、本当に私の胸をついたのは、彼の顔が私を哀れむような、とても悲しげな顔だったということ。
 それを見てしまって、もうたまらなくなって涙がどっと零れた。
 言うつもりもなかったのに、口をついて出た言葉。

「ヒロユキ……私、妊娠してるの」

「ああ、俺の子供……じゃないんだよな」

 張り詰めた静寂。永遠とも思える瞬間が私とヒロユキの間を流れていた。

 それでも、時は止まらない。私は、答える。

「……………そう……よ」

「悪いと思ったんだけどさ、このDVDが剥き出しで郵便受けに入ってたから、つい……見てしまったんだよ」

 彼は、プレイヤーからDVDを取り出して、机の上に置いた。そのDVDには、あの男の汚らしい文字でこう書かれていた。

『エレベーターガール芹川ゆかり、排卵日種付けセックス ~貴方の子供を孕ませて~』
「あああ……」

 私はそれを見て、呻くことしか出来なかった。

 私は世界は、この瞬間に冷え固まって死んだ。
 もう、悲しいとすら思えない私の心。
 終わったのだと分かった。

「あのさ、ゆかり。俺はどうしたらいい、俺にしてほしいことあるか?」
「いますぐに、私と別れて。もう終わりにしましょう」
「……わかった」

 彼は、合鍵を置いて出て行った。
 部屋を出て行くときの彼の顔がどうしても思い出せない。
 このときのことを思い出すと、いつも浮かぶのは部屋を入ったときに見せた、私への悲しい哀れみの視線だけ。
 どうして、私は彼に別れてくれなんて言ったんだろう。彼を巻き込みたくなかったから、それともこれ以上自分が惨めになるのが嫌だったからか。
 本当は彼に罵って欲しかった、できれば裏切りを怒って欲しかった。
 それでも、やさしい彼にはできなかったのだろう。
 きっと、彼はこのAVが無理やり撮られたものであることを分かっていたのだ。
 あとで私も、この忌まわしいDVDを見た。
 そこに映っている私は、心にもない台詞を喋り、偽りの笑みを浮かべながら、ずっと泣いていたのだから。
 大学で付き合いだしてから四年間以上になる彼に、私の偽りの表情と本当の顔の見分けがつかないわけもない。
 ヒロユキはこれまで私が付き合ってきた男の中でも、最高の彼氏だった。
 やさしくて、頼りがいがあって、私をしっかりと愛してくれた。
 そして、それも全ては過去のことだ。
 この日、全てが終わってしまったのだから。

……デパート地下三階 二ヵ月後

 休憩室で待機していたら、美幸チーフが来た。
 まだ、ゆったりした服を着るのを拒否している彼女のお腹は、ぴっちりした制服のせいで逆に目立つようになってきている。
 見るたびに、あのかっこよくてプロポーションのよかったチーフの下っ腹がと、私はため息をついている。
 もう妊娠が分かっている私にしても、それは他人事ではないから。
 そんな私の視線にかまわず、チーフはテキパキと交代の指示を下した。
「あと三十分ぐらいしたら、交代に行って頂戴。場所は、地下三階よ」
 そのとき、私は嫌な予感がした。

 地下二階までは使われているが、地下三階は現在改装中で使われていないフロアだ。そこにエレベーターを向かわせるっていうのは通常考えられない。

 だから、三十分後といわれていたけど、早めに向かったのだ。
 よせばよかった。私には何も出来なかったのに。
 エレベーターを使うわけにもいかないから、地下三階へは関係者以外立ち入り禁止のサクを乗り越えて、階段で降りていく。
 改装中の地下三階は、昼間なのに薄暗くてちょっと気持ちが悪かった。
 エレベーターのほうに向かうと、何かの声が聞こえてきた。
「なにこれ……」
 まるで、獣が身を引き裂かれるような絶叫に近い叫び声。
 足が震えた……それでも近づいていくと分かった。
 これは獣じゃない、人の苦しみの声だ。断末魔のような叫びが断続的に続いている。
「何かの事件……事故?」
 背中を押されるようにして歩を進める私の前に、目の前に明かりが見えた。
 地下三階に止まる、エレベーターからの光だ。
 本来ないはずの場所にあるものは、なんと異様に見えることだろう。
 私は、そっと箱の中を覗き込んだ。

 そこには、私の想像を超える光景が広がっていた。

――後編に続く
「エレベーターガール」前編
 私は、エレベーターガールだった。
「今日は、美津屋百貨店にご来店くださいまして誠にありがとうございます。ご利用階数をお知らせください」
 営業スマイルでニッコリ。
 客がちらほらと利用回数を言う、その通りに私は押してエレベーターは上に動き出す。
「ありがとうございます、五階家具売り場でございます」
 営業スマイルでニッコリ。
「七階特設会場、本日はサマーギフトを取り揃えております」
 営業スマイルでニッコリ。
「十三階、レストラン街でございます」
 営業スマイルでニッコリ。
 そうして、今度は降りる客を乗せて、エレベーターは下に動き出す。
 この繰り返しで、あっというまに一日が過ぎていく。

 基本的には、微笑んで客の言われるようにボタンを押すだけの毎日。楽な仕事だと思っている人も居るだろう。
 ガソリンスタンドだってセルフになる時代だ。お客さんが思ってることなんて分かってる。
 いまどきエレベーターなんて自分でボタン押せばいいとおもうよね。そうそう、私だってそう思う。

 でもね、この仕事も、決して楽な仕事ってわけじゃないんだよ。
 一日立ちっ放しで終わりごろには足がガクガクになるし、笑顔だってこれだけ続ければ、引きつろうというもの。
 一時間ごとに交代できるのは、助かるがそれだけ肉体的にも過酷な仕事なのだ。
 受付と並び、エレベーターガールはデパートの顔であると教えられている。
 単純な繰り返しのなかでも、ミスは許されないという緊張だってある。

 本当のことをいえば、私は大学を卒業後、受付希望でこの百貨店に入社したのだ。前からやってみたかった職業だし、割と容姿には自信があったからこそ、選んだ仕事でもある。美津屋デパートの深い紺と青を基調にした制服は、上品さと女性らしさが控えめに表現されており、その上でスタイリッシュに洗練されているデザインで、もう一言でいえば超かっこよくて昔からずっと憧れていた。
 私は長い髪を撫で付けるだけの大人しい髪型にしていた。さらっとした髪は、ただ自然にこうなっていると思ってもらっては困る。乾かすたびにそれなりに手間をかけているのだ。
 髪のトリートメントには最新の注意を払う。友達みたいにパーマをかけたり、染めたりして髪を痛めるような真似はしなかった。健康と肌のケアにはそれ以上の注意を払った。自分の身体つきを考えたときに、胸が大きすぎるのが少しコンプレックスだったが、それもなるべくスリムでいるように、気をつかってバランスをとっているかぎりは、マイナスにはならない。
 私が自分で磨き上げた、女性らしくそれでいて地味にならない程度に落ち着いた私の容姿は、この高級なデパートの社風に完璧にマッチしているはずだった。
 大学だって、そこそこいい所を出ているのだ。頭だって決して悪くはないから接客にも自信があるといえた。多分大丈夫と思っても、最終試験をクリアーして採用が正式に決まったときの喜びは昨日のことのように思い出せる。
 容姿で選ばれるのが差別だとは、こと仕事がデパートの顔である受付嬢というになれば当たらないだろう。私はそれなりに日々努力して、就職という人生の大きな賭けに勝利したのだ。
 実際の勤務は、給料も福利厚生も理想に近かったし、周りは厳しいながらも尊敬できる人ばかりで、仕事にとてもやりがいが持てて楽しかった。私が就職して、最初の一年は、薔薇色に輝いてあっというまに過ぎていった。
 そんな幸せの日々が続くはずだったのに……。

 どうしてだろう、今年に入ってからこっちに配置転換されたのは今年入ってきた新人に容姿で負けたから?
 同じ素敵な制服に身を包んでいても、やっぱりあっちは玄関入り口の花でこっちは箱の中に閉じこもってるだけだと思ってしまうのは私の僻みだろうか。
 笑顔で笑って、ただ箱の中で立ってボタンを押してお辞儀をするだけ。私は人形じゃないのに。
 そういう不満は、たとえば今日も来たあの客を見たときに爆発しそうになる。

 いがぐり頭で、まるでおにぎりのような珍妙な顔をしているおっさんがそこにはいた。
 ダボダボの着古して黄ばんでいるTシャツに、なぜか短パンをいつも穿いているあの中年の男性客だ。近寄るだけで体臭が匂う、毎日風呂に入っているのか疑わしいまるで浮浪者という身なりの男。
 名前は知らないけど、あの髪を短く刈り込んだオニギリみたいな特徴的な顔立ちの男性客は、有名な迷惑客でエレベーターガールに客であることをいいことに酷いことをしているようなのだ。
 うちは一流デパートなんだけど、だからといって、客を選ぶことはできないのが悲しいところだ。
 どうせ、うちで買い物なんかしないくせに、なんで来るんだろ。
 しかも、エレベーターは四基あるのに、なんでまた私の箱に入ってくるのよ。
 私は箱の中、だから逃げることもできやしない。
 あの男性客がいつ来るか分かっていれば、シフトで避けることもできるのに、だいたい一週間に一度ぐらいの確率で遭遇するということが分かってるだけで、明確には分からないのだ。
 そして、私は次に反射的に自分の生理周期を思い浮かべる……ああ、危ない日だ。しかもかなりあの日に近い。
 最低だ、もし万が一こんな日に何かされたら。想像しただけで、恐怖に自分の笑顔がこわばって頬が引きつるのが分かった。
 そこまではされないだろうか、それでもこの男の私に対する性的な悪戯は、逆らえないのをいいことに、やられるたびに酷さを増しているように思える。
 男はそんな私の頬の引きつりに何かを察したのか、ニヤッと笑った。嫌な男だ。

「ほっ……今日は、美津屋百貨店にご来店くださいまして誠にありがとうございます。ご利用階数をお知らせください」
 こういってみるものの分かっているのだ。どんなに忙しい日でも、どれほど客が乗り込んできても、あの男性客が来店したときは、申し合わせたように全員二階で降りてしまうのだ。
「二階、婦人服売り場でございます」
 客はぞろぞろと降りていく、婦人服売り場なのに男の客まで……全員。

 そうして、中年男と私だけが箱の中に残った。
「よう、元気だったか。またきてやったぜ」
 エレベーターの扉が閉まると、男はそう話しかけてきた。ゆっくりと、エレベーターは上に向かってあがり始める。
「ご来店……ありがとうございます」
 なんとか、笑顔でそういった。男はすかさず、緊急停止ボタンを押した。
 警戒音と共に、ガクンとエレベーターは止まる。
 そう、この男性客は勝手にエレベーターを停止させるのだ。前に一度注意して、警備員を呼んだことがあるのだが、逆に私がチーフに怒られてしまった。
 他に三基もエレベーターがあるのだから、男性客が止めても困らないじゃないかと。
 まったくその通りだ。そのときの私はまだエレベーターガールに配置転換されたばかりで、苛立ちでどうかしていたらしい。他のエレベーターも止められて、流れが滞ったらどうなるだろうと考えてみたのだが、こんなことをするのはこの男性客だけだから問題ないのだろう。
 どうせ、この件で苦情など出たためしがないのだ。
 客がエレベーターを止めるなんて、デパートではよくあることなのだから。
 こうなったら、私は逃げ道がない。
「お前、名前なんていったっけ」
「芹川ゆかりです」
「そうそう、ゆかりちゃんだったねえ」
 そういいながら、男は私の尻肉をムンズと掴んで揉みあげる。
 ストッキングと下着と厚いスカートを隔てても伝わってくる不快な感触に、私は背筋をこわばらせる。
「ひゃ……止めてください」
「そうじゃないだろ」
 こわばった背中をなでるようにそらせて、今度は肩に手を置く。そうして、私の耳元に臭い息を吐きかけて、私を非難する。
「す……すいません、じゃない。ありがとうございます」
「そうそう、お礼の気持ちが大事だよね」
 今度は、私の自慢の胸を持ち上げるようにして揉む。
「あっ……ありがとうございます」
「せっかく揉んでやってるんだからさ、もっと顔もありがたがってもいいとおもうが」
 どうやら、引きつりすぎて笑顔が解けていたようだ。
 慌てて、男性客に向き直るとニッコリと笑う。もう、この百貨店に勤めて一年以上。笑顔に合わせて、化粧するぐらいに笑顔は慣れている。それと同時に、心から笑えなくなってしまったが。
「うん、今日も可愛い笑顔だね。ゆかりちゃん。キスしてあげるから屈んで」
 一応私の名誉のために言っておくと、私がデカ女というわけではない。小柄とまではいわないが、ごく標準的な身長だと思う、彼氏は私より一回り高いし。
 この男性客がチビデブすぎるのだ。背が、私より十センチは低い。
 そんな失礼なことをお客様にいうわけにもいかないので、私は黙ってかがんでさしあげる。私の唇を舐めるように、舌を這わせる。この人は爬虫類的に舌が長いので、キスは上手いほうだと思う。酷い口臭がなければの話だが。
 そうしたら調子に乗って、いきなり許可もなく、舌を入れてきやがった。
「んんっ!」
「んーゆかりちゃん、ちゅきちゅきー、んー」
 赤ちゃん言葉かなんかしらないが、真剣に頭にくる。そんな私の怒りを知ってか知らずか、強引に私の頭を押さえつけるようにして、さらに押さえ込む。
 もちろん、男性客はベロチューを止めない。ああ、絡んだ舌から私の口におっさんの汚い唾液が注ぎ込まれる。臭い、汚い、気持ち悪い……。
「ん! ぷはぁ」
「あっ」
 私の息が続かなくなって、おっさんの手を払いのけて、頭をはずした。おっさんは不服そうである。こっちが不服だと!
「はぁ……すいません息が続かなかったもので」
「しょうがないなあ」
「それにしたって……もうっ、キスするならするで、せめてブレスケアするとか、歯を磨くとか、あたりまえの口臭ケアをしてくれませんか」
 思わずきつく言ってしまった。
「ほー、お客様にそんな口きいていいんだ。俺は、君の彼氏じゃないんだよ。俺は誰でしょう?」
 私はすぐに自分のミスに気がつく。
「お客様です……」
「だろう、別に俺を彼氏にしたいんだったらそれでもいいんだよ。ゆかりちゃん、結構俺の好みだしさ、もしそうなったら、それなりの対処をしてあげてもいいよ」
 そういって、おっさんはニマニマと笑う。なれなれしく私の髪を弄びながら。また始まった。誰がこんな小汚い中年男を彼氏にするんだ。
「私は、彼氏いますから……お客様でお願いします」
「そうだろう、だから対等じゃないから、やりたいようにやらせてもらうよ」
「ちくしょう……」
「はぁ、なんかいった!?」
「いえ、ご意見ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます」
「よろしい」

 そういうと、男性客は満面の笑みで笑った。
 これで終わりだと思ったら、今度はいきなり掴みかかってきたのでびっくりした。
 なんか私の服を脱がそうと格闘してるみたいだ。相変わらずこの人、いきなりすぎ。
「ちょ……ちょっとまって、むやみやたらに引っ張らないで」
「なんだ……相変わらず脱がせにくい服だな」
 制服をぐちゃぐちゃにされたら、まあ客がやったといえば実費で弁償ってことはないだろうが、チーフに確実に怒られてしまう。
 乱暴にならないように、男性客を押さえ込むのに苦労した。
「……自分で、自分で脱ぎますから」
「そう、だったら早くしてね」
 エレベーターガールの制服は特注でスタイリッシュなのはいいのだが、ぴっちりとしたデザインなので、とても無理やり剥ぎ取れるようなものではない。自分から脱ぐのでさえ、コツがいるのだ。デパートの制服の上と下を剥ぎ取って、私は下着にメッシュのストッキングをつけただけの姿になった。
 こんな格好で、直立不動……惨めだ。
「脱ぎました……」
「ひょー、あいかわらずスタイルいいね。この下着はデパートで売ってるの? レースに花柄をあしらっているのかな、下着姿も可愛らしい」
「ありがとうございます」
 褒められてもちっとも嬉しくなどないが。ちなみにつけてる下着はこのデパートのではない。

「ストッキングを残すところなんか、芸が細かいね。破く楽しみがある」
「……破くんですか」
 普通にあまり脱ぎたくなかっただけなのだが、どうせやられるとわかっていても。
「ほら、とりあえず後ろむいて」
「はい……」
 後ろを向くと、プツンとブラのホックをはずされてしまった。ポロっと、ブラは落ちて、プルンと張りのあるおっぱいがむき出しになる。
「うひょー、デカパイだなぁー」
「でか……って」
 なんて失礼なことをいうのだろう。男性客は、嫌がってる私にかまわず後ろから手を回して揉みしだいている。はぁ……ため息しか出ない。男のこういう反応は慣れっこだからだ。
「こういうの釣鐘型っていうんだよね、見事だな乳輪も鮮やかなピンク色」
「はあ、そうなんですか、どうでもいいです」
 冷たくいってやった。自分のおっぱいのタイプなんて聴きたくもない。それにしたって、デカパイはないだろう。こんなに露骨で失礼な言われ方したことはない。なんか化け物みたいな呼び方じゃない。
「カップサイズは?」
「はあ」
「だから、ブラのカップサイズは、と聞いている」
 私の冷たい声も軽蔑の視線も、人生終わってる系のおっさん特有の自信の前には何の効果もないらしい。心の中で、少し舌打ちして私は素直に答える。
「一応つけてるブラは、J六十五……ぐらいですかね」
 少しさばを読んでみた……、一カップ小さめに。
 胸が標準より、大きすぎるのは、私のとってはコンプレックスなのだ。
 大きいほうがいいっていうが、これで私がこれまでどれほど苦労してきたか。
「ふん……それはすばらしい」
 胸が大きいと、たとえばこういういやらしいおっさんの餌食になるのだ。いやらしい目で、見つめると、さらに私の胸を乱暴に左右に引っ張った。
「痛い、あんまり引っ張らないで」
「これだけのもの、弄ばないともったいないというものだよ」
 男性客は後ろから抱き付いて、しばらくそうやって私の胸を弄んでいた。まったく口惜しい。

「そうだ、こっちを向いて飛び跳ねてみてよ」
「えぇ……なんで?」
「いいから、俺がいいっていうまでジャンプする」
 まったく男性客の意図がわからない。しかし、そういう指示なのでしかたがない。私は洋服とブラを汚れないように、エレベーターの隅っこに置くと、言われたとおりポヨンポヨンとジャンプし始めた。
 縄のない縄跳びみたいな気分だ。
 私が飛ぶと同時に、私の胸もブルンブルン震えた。それをいやらしげに見つめる男性客。ああ、そういうことかと私は気がついた。
 気がついても、私は指示通りこの馬鹿らしい動作を続けて、視姦され続けるしかないのだった。

「ハァハァ……いつまで……やってないといけないんですか」
「もっと笑顔で笑って、ジャンプの勢いが落ちてきたよ」
 もう、結構な時間ジャンプさせられ続けている。
 私は、そんなに体力があるほうではない。
 身体が、汗ばんできた。それでも続けないといけないのかなあ。
 男は、明らかに揺れる私の胸を見ながら、自分のダボダボの服を脱いで全裸になった。やっぱり、あそこがたっていた。赤黒い汚らしい……中年のあそこなんてみたくない。

「ハァ……ハァ……もう、げんかい……」
「はい、ゆかりちゃんもういいよ。ご苦労様」
 そうやって、ニマニマと笑いながら止めてくれた。もうなんでもいい、疲れた。私は、崩れ落ちるように腰を落とした。
「ゆかりちゃんのでっかいおっぱい見てたら、チンコたっちゃったよ」
「ハァ……ハァ……」
 私は、疲れていてそれどころではないのに、目の前の男性客は私に勃起したあれを突きつけてくる。
「ゆかりちゃんのせいで、立っちゃったんだから、なんとかしてよ」
「……なんとかって」
 分かる。きっと舐めろってことなのだ。でも嫌。
「ほら、分かってるくせに」
 そういって、男は強引に私の頭を掴んで、口に突き入れてきた。
「ふぉんな……ふぉういんふぃ」
 間違っても歯を立てて、お客のあそこを傷つけるわけにはいかなかったので、出来る抵抗といえば舌で押し返すぐらい。
「おお、中々の舌フェラテクニックだね」
 そんな意図はない、苦しいだけなのに。
「ふゃめて」
「やめないよ、ほら接客がなってないなあ。チンコ舐めさせてあげてるんだからもっと積極的に舐めてよ」
 こんなのも接客なんだろうか、しょうがないので言われたとおり舐めることにした。不味い生臭い。そりゃ、私だって彼氏もいるから経験あるけど、フェラチオなんてほとんどしたことがないのに。
 私の舌技がじれったかったのか、強引に頭を押さえつけられて、口の中であそこを暴れさせる男性客。もう、フェラチオですらなくなっている。
「ふぉ……ふぁあ!」
「はあ……ごめんねちょっと強引で、とりあえず興奮しすぎて滾ってきたから、一発だしておきたいからさ」
 喉の奥まで突き入れてきて、私は咳き込む。
 それすらも、男性客を気持ちよくさせてしまうようだ。
「けふぉ……ゲフェ……」
「ほら、もうすぐ出すから、ちゃんと飲み込む準備をして」
「!!」
「ゆかりちゃんの口マンコに精子出る!」

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 糊のような生臭い液体が、喉の奥から食道にかけて浴びせられる。出すことも出来ず、このままでは息が詰まる。慌てて飲み込むしかなかった。苦しくて、涙が出た。
「……信じられない……飲んじゃった」
「たくさん出したから、全部飲めなかったみたいだね、口から精液が垂れてるのがいいね」
 最悪だった、口に臭い液がたっぷりと。全部おなかの中に入ってしまった。
「うう……酷いです」
「おやおや、教育がなってないな。お客さんのザーメン飲ませてもらったんだから、お礼を言わないといけないでしょ」
「お礼……」
 こんな酷いことをされたのに、御礼をいわないといけないなんて。でも仕事だから仕方がないのか。心にもない笑みを浮かべて、私は笑う。
「ありがとうございました」
「俺のザーメンはうまかったかい」
「……おいしかったです」
 私もエレベーターガールの仕事について結構たってるので、こう答えなきゃいけないってことはだいたい分かっている。いちいち、指摘されても時間が長くなるだけだ。
「いい答え、やればできるじゃないか」
 逆らったら、時間が長くなるだけ。どうせやられるだけなんだから、自分の心を曲げて、せいぜいいい顔でいい台詞をいってやって、男性客を満足させて早く帰ってもらうのが一番いい。顔で笑って、心で泣く。
 それが大人っていう生き物なんだ。
「はい……これで終わりなら服を来て口を洗って来たいんですが。それとも、まだ何かされますか」
 そういって、営業スマイルで笑ってやった。
「おお、なんか吹っ切れたみたいだね」
「おかげさまで、お客様のおかげですわ」
「それでも、まだ足りないなあ……せっかく美味しいザーメン飲ませてあげたんだから、今日は口を洗いませんぐらい言ってもらわないと」
「そうでした……」
 男は、無言で私にまたチンコを突きつけてくる。なんのつもりだろう。
「ほら、やっぱり鈍いなあ。君の口じゃなくて、俺のチンポを舐めて綺麗にするんだよ」
「サービスが行き届かず申し訳ありません、すぐいたします」
 そういうことか……そういうことなのか。私は逆らわずに男のあそこを舐めて、尿道口に残った精液をすすり上げることにした。ここまでやれば、満足だろう。
 仕事と割り切れば、この程度のことはどうということはない。私が綺麗にした刺激で、また男性客のものが、ムクムクと大きくなっていくのが分かった。
「ふう、とりあえず満足」
「満足していただけてよかったですわ」
 頼むから、これで終わって……。
「もう、終わったと思ってるんじゃないだろうね」
 願いは、届かなかったようだ。
「次は、何をいたせばよろしいのでしょうか」
「それじゃあ、中のパンツだけ脱いで、またストッキングだけはいてもらえるかな」
「はい……」
 とても変態的な要求だと思う。この程度のこと、どうということはないのでさっさとしてあげた。脱いだインナーは、すぐ取り上げられた。
「さっき、いい運動したからだな。ゆかりちゃんの蒸れたのにおいがするよ」
「私の下着の匂い嗅がないでください……」
 目の前で自分の下着の匂いを嗅がれるっていうのはなんか嫌悪感がある。
「私の匂いで興奮してくださって、ありがとうございますぐらいのこと言ってくれればいいのに、学習能力がないね」
「すいません……ありがとうございます。存分に嗅いでください」
 もう、これも割り切る。とにかく我慢して、早く終わらせるのだ。

「そうそう、していただいてるって感謝の気持ちが大切だよね」
「肝に銘じます……」
 そうしないと、いつまでも終わりそうにないし。
「じゃあ、四つんばいになってお尻をこっちに突き出してね。今日はいいものをもってきたんだ」
「はい……」
 私が四つんばいになると、なんの断りもなくストッキングの股の部分だけ破り始めた。はあ、これは実費だろうなあ。消耗品だし、高いものではないから、しょうがないとはいえ、仕事で何で私物を破かれないといけないのだと、とても不満。

「今日は、いいもの持ってきたんだ。ジャーン!」
「ば……バイブ」
 振り返ってみると、男性客はペンシル型の黄色いバイブとローションを汚いカバンから取り出していた。
「お、よくバイブって分かったね。これはただのバイブじゃなくて、アナルバイブなんだよぉ」
「はあ……アナルってお尻の穴」
「そうそう、ゆかりちゃんは彼氏いるらしいけど、お尻の穴は経験あるかな」
「ない! ないです」
「そうだろうね、俺はここのデパートのエレベーターガールは全員、お尻の穴を開発することにしてるんだ。未経験なんだ、じゃあ最初からだからちょっと大変だけど徐々に慣らしていくから大丈夫だよ」
 何が大丈夫なのだろうか、あれを入れるつもり。私のお尻の穴に、信じられない。入るわけがない。
「無理です、無理!」
「大丈夫、ほら小さい奴だし、初心者でも安心って取り扱い説明書にも書いてあるから平気だって」
「いや、止めてください!」
「おい、お客に向かってそんな態度でいいのかよ」
 ビシッと怒られて、私はシュンとなった。
「はい……すいませんでした。どうぞ入れたいなら……入れてください」
「ゆかりちゃんは、入れたいの。入れたくないの?」
 そういって、男はニヤニヤとローションとバイブを手に持って笑っている。分かっているのだ、私に入れたいって言わせたいのだ。さっき、ここのエレベーターガールは全員やってるって言ってたもんね。
 私はこの男性客には、逆らわないという方針を思い出して、自分の理性に従うことにした。
「入れてください……」
 そうやっていうと、男性客は口が裂けそうなぐらい気持ち悪い笑みを浮かべて、どうやら喜んでるらしかった。
「そうかー、お願いされたらしょうがないな。じゃあ、がんばって入れてみるね」
「はい……お願いします」
「大丈夫だよ、俺は経験豊富だから。ほら力を抜いて」
「ああ……」
 冷たい感触。ローションをたっぷり付けられて、お尻の穴をなじまされているのだ。男性客はまず指を一本入れて抜き差しした。
「ひゃぁ……」
 まったく経験がない私にはそれでも刺激が強い。
「指一本ぐらいで、そんな声あげてるんじゃ、これ入れたらどうなるのかな」
「ううっ……」
 私は、恐怖で顔を伏せた。壁に手をついて、壁を見ていることにした。
「ほら、そんな顔しない。指がキュって挟まれるよ、怖がって力入れると入るものも入らなくなるから力を抜いて」
「はい……お手柔らかにお願いします」
 なんだろう、まるで注射を待つ子供みたいな気持ちだ。
 男性客は順調に私の肛門をこねくり回し、指を一本から二本に変えて徐々になじませていった。
 経験豊富っていっていたのは、本当らしい。
 私は、もうとにかく力を抜いて何も考えないことにした。

「ゆかりちゃんは、うんこしてるでしょ」
「……いきなり何をいうんですか、普通にしてますよ」
「硬いときもあるでしょ」
「はい……どっちかというと便秘気味ですから」
「そうなんだ、それはよくないね。そういう話じゃなくて、まあペンシル型だし、うんこが通るならこれぐらいの太さなら軽く入ってあたりまえなんだよ」
「そういうもんなんですか……」
「女は赤ん坊産むんだろう、平気平気……それじゃ、バイブいくからね。」
「はい……」
 赤ん坊はお尻の穴じゃないだろうと思ったが、突っ込むのも嫌なので力を抜いて壁をじっと見ていることにした。
 ズブズブっと、まるで後ろから音を立てるように、バイブが進入してきた。あまりの刺激に、私の肛門は思わずきゅっと締まる。
「ああ、途中で止まった。最後まで、力抜けなかったんだね」
「はい……ちょっと待ってください」
「いいよ、初めてだもんね。こんなもんだよ」
「すいません」
「はは、面白い手を離しても、ぜんぜん落ちないよ。肛門の締まりがいいんだね」
「ううっ……」
 私は、恥ずかしくなって赤面した。
「はは、肛門がピクピクしてるよ。じゃあ、最後まで入れるからそのままじっとしててね」
「はい」
 男性客がお尻やお腹をマッサージしながら、バイブを押し付けていくと、まるで自分のお尻の穴ではないように、ゆっくりとだが、ズブズブとバイブが入っていき、ついに最後まで入ってしまった。
「おお、最後まで入ったね。おつかれさん」
「はあ……なんかすごく変な感じですね」
 お尻の穴に、太いマジックペンほどのバイブがすっぽりと入ってしまって、前にも後ろにも進めない感じだ。あまりにも、キツキツすぎてこのお尻を突き出した体勢から動けない、もう自分ではどうしようもない。
「痛くはない」
「痛みはないです」
「これ、バイブだからボタン押すと振動させることもできるんだけどね」
「やめてください!」
「アハハ、俺はフェミニストだから初めての娘にそんなことしないよ」
 喋るオニギリみたいな顔をして何がフェミニストだと思ったが、私のお尻の穴の命はこの男性客に握られてしまっているといっていい、フェミニストであることを祈った。
「お願いだから、振動だけは止めてくださいね」
「お尻の穴はけっこう柔軟だけど、切れたら痔になって大変だからね。入れた後から言うのもなんだけど、ゆかりちゃんはとても健康的な肛門みたいでよかったよ」
 振動だけは、避けられるみたいだ。そんなことされたら、お尻が壊れてしまう。この男性客が極端に暴力的でないことにだけは感謝した。

「じゃあ、そろそろ前の穴のほうもしちゃうかな」
「ああっ、やっぱり今日はするんですね」
 そういうと、男は私のあそこをクンニし始めた。
「するんですねじゃなくて、してくださいでしょ。まあこっちまでローションっていうのは味気ないし、今日はゆかりちゃんだけしかやらないから、時間はたっぷりあるからゆっくり味わってあげるよ、ゆかりちゃんのここ!」
 そういって、私の大事なところにズブッと乱暴に指をたててくる。
「あっ……」
「クリちゃんの皮も剥いてあげようね」
「ひゃあ!」
「綺麗なお豆さんだなあ、吸ってあげよう」
「ひゃい!」
 あまりのことに、足がガクガクとした。
「こらこら、あんまり暴れるとお尻のバイブが抜けちゃうよ」
「すいません……ああっ」
 入れたまま、するつもりなのか。お尻にバイブがぴったりと入っているから、身動きがとれない。
「大丈夫みたいだね、ぴっちり入り込んでるもん」
 そういって、バイブを背を指で押して、さらに肛門に押し付ける。
「うっ……そっちは、やめてください」
 ググッっと中にさらに入ってきて、私は思わず呻いてしまう。痛いとか、気持ちいいとかではなくて、とにかく強烈な圧迫感があるのだ。
「社員教育がなってないなあ……まあいいや、これからドンドン後ろの穴を開発して、もっともっとやってくださいっていうようにしてあげるからね」
「ううっ……ありがとうございます」
 そんな、馬鹿げた会話をしているうちにも、前のほうをやられまくる私。
「そろそろ、いいかな。いいねベットベトになった。結構濡れやすい体質?」
「そんなのわかりません」
「彼氏とは、どのくらいやってんの」
 これは、答えないといけないのか……。
「週に一回ぐらいのペースです」
「こんないい身体してるのに、もったいないよね。俺が君の彼氏なら毎日やるのになあ」「……ありがとうございます」
 とりあえず褒めてくれてるみたいなので、お礼を言っておけば間違いはないだろう。本心を言えば、私の彼氏はお前みたいな獣じゃないと言ってやりたいが。

「よいしょっと!」
「きゃ!」
 ズブッと、私の後ろに覆いかぶさったと思うと、男性客は亀頭を私のあそこに押し付けてきた。
 あまりにも、いきなりだったので、私はびっくりして振り返って睨みつけてしまった。怒りのあまり、お尻の穴に力が入りすぎて、少しお尻がぴりりと痛んだ。早く抜いて欲しい。
「なんて顔してるんだよ……挿入だよ、挿入」
「入れるんなら……」
「いちいち言わないよそんなこと」
 そういうと、バックから狙いすましてズブッと差し込んだ。ちょっとまって、もしかしてゴムもつけないでいれてる!
「ちょっと、ゴムもつけないで入れたんですか!」
「ふふっ、生で入れたほうが気持ちがいいからね」
「そんなぁ、私、危ない日なんですよ」
 この男性客にはこれまでいろいろと性的な悪戯をされてきたが、セックスされるのは初めてだった。だから、まさかここまでやらないだろうって自分の考えが甘かったのだ。
「ふふっ……その台詞は萌えるけど、違うでしょ。ほら笑顔で言ってみな。お礼」
 私は笑顔を引きつらせながら、なんとかいった。
「ううっ……ご挿入、ありがとうございます」
「そうそう、いいねえその笑顔。やる気が出るよ」
 そういうと、ゆっくりと男性はピストンを始めた。
「そんな、本当につけないでやるなんて……」
「俺は、ゴムつけてのセックスなんてセックスと認めない」
 中で、ぐりっと回転させながら強く押し付けてくる。悔しいけど十分にならされた、自分のあそこは感じてしまう。あくまで生物的、動物的に、しょうがなく。
 こんな変な男にやられて心まで感じるわけがない。
「あっ、危ないって言ってるのに……」
「しつこいなあ、君の彼氏とやらとは生でやってないの」
「ちゃんと、ゴムつけてしてくれます!」
「そうなんだ、彼氏は紳士なんだねえ」
 さっき、自分はフェミニストって言ってたのに、お前は紳士じゃないのかと問いたい。というか、それ以前に紳士とかそういう問題じゃないでしょう。どうでもいいから止めて欲しい、怖い。
「私たちまだ社会人になって間もないし、結婚とかもまだ考えてないから、妊娠とかしちゃったら困るからです」
 だから止めて。
「ふーん、生でやったほうが気持ちいいのにね。ああ、ゆかりちゃん。彼氏とはこれからもゴムつきでしてもいいけど、生でやるのは禁止ね」
「わかりました……」
 この男性客にそういわれると、逆らえないのだ。そんなことは、どうせ彼氏とも生でする気はなかったからどうでもいい。
 今は早く止めてもらわないと、妊娠だけは避けないと。
「それにしても、立派な胸だよね。バックでやるとでかさが際立つね。プルンプルンしてる、でけぇなあ」
 そういって、腰を止めて私の胸を両手でしごくように握り締めた。痛みと快楽がない交ぜになって、身体に走る。そして、そのたびに肛門に力が入ってしまって、お尻に強烈な圧迫感がかかるのだ。
 多分、股も締まるのだろう。男性客が歓喜の声をあげて、喜んでまた乳を搾る。しばらくそういう繰り返し……ああ、こんなことで感じている場合じゃない。
「妊娠したら困るんです、ゴムしてくれたらいくらでもやっていいですから」
「ははは……乳搾り!」
「うう……ゴムを」
「うるせえよ、気分でないだろ!」
 また怒られた。それでも、ここはしっかり言わないと。
「すいません、でも中で出さなくても妊娠の危険があるって」
「馬鹿、ここまできて中に出さないわけないだろう」
「そっ……そんなぁ」
 私の顔が見えたら、多分青ざめているに違いない。その瞬間、股間の滾りも肛門の圧迫感も、胸の感覚も消えて、頭がスーッと冷えた。
 頭では、もう望まぬ妊娠に打ちのめされている自分の映像が浮かぶ。
 だいたい、そんなことになったら彼氏になんと説明すればいいのだ。
 駄目だ、絶対に駄目ぇ!

「妊娠して俺の子供を孕めば、このウルトラおっぱいからピューピュー母乳が飛び出るわけだ。よかったなあ」
 私の青ざめた顔をみて、楽しそうに腰を突く。そうしながら、両手でおっぱいをしごく。乱暴に尻を叩く、痛い!
「駄目っ!」
「どうなんだよ、早く言わないと精子出ちゃうぞ!」
 駄目って言ってるのに!
「どうしたら……ううっ、いいんですか……あぁ」
「だから、俺の子供を妊娠するために子種をどこに出して欲しいから言えっていってんだよ」
「だから……どこに」
 妊娠するためにって、そんなの一つしかない。
「早くお願いしろ! お前のマンコがよすぎてもたねえ」
 さっきからむき出しの男性客の亀頭が、私の中でビクンビクン脈打って、一番奥をコツンコツン打ち付けてきてる。
 明らかに限界が近いんだ、こんな奥に密着した状態で射精されたら。
「うあぁ、お願いします。中に出してください」
 駄目なのに!
「はあ、中じゃなくてオマンコって言え!」
「オマンコに出してください……いぃ!」
 そうやっていったら、男性客は腰の動きをものすごい早めた。
「よし、お願いされたらしょうがないな」
「ひゃぁああ!」
「出すぞ! 孕めよ!」
「いやぁああ」
 男性客は、私をギュッと後ろから抱きしめると、おっぱいが破裂するぐらい力を込めて握り締めて、私の一番奥で精液を爆発させた。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 私は、胸を握りつぶされそうな痛みと共に、一番出されてはいけない場所に出された熱い熱い精液の飛まつをドバドバと感じていた。
「おら、一発目!!」
「出された……出されたぁ」
「またかよ、中で出してもらってありがとうございますだろ、覚えとけ」
「はい……ありがとうございます」
「お前が出してくれっていったんだから、孕んでもお前のせいだからな」
 私はもう泣き出していた。どうしようどうしようどうしよう。それしかなかった。

「じゃあ、次は騎乗位でやるか」
「……まだやるんですか」
 もう出されてしまったので、どうでもいいけど。あーあ。
 私は、もう思考能力が低下して、頭の電池が切れたみたいになっていた。
「俺ばっか動いて疲れただろ、今度はお前が腰を振るばんだろ。寝そべるから、上にのっかれてよ」
「……はーい」
 私は、指示通り上にのっかかると、にゅぷっと挿入して腰を振ってやった。
「なかなか、うまいじゃねーか」
「お褒めに預かり……うっ……光栄です」
「オマンコはいい具合だし、腰はちゃんと自分で振れるし、お前は女として合格だな」
「ありがとうございます」
 お前の女っていうのは、それしか価値ないのかよと思ったが、言っても仕方がないし、言うべきではないし、もうどうでもよかった。後悔しかなかったから。
「しかも、乳がでかいから騎乗位にして正解だったな。乳がプルンプルン揺れるのがよく見えて楽しいぜ」
「ああっ……ありがとうございます」
 もう、お礼だけ言っていよう。そのほうが楽だ。腰を振ることにだけ精神を集中させていた。
 すると、ポロンと何か落ちて、カランカラン転がっていった。
 ああ、お尻に刺してたバイブが抜けたのか。
「抜けたか、少しは穴が広がって緩くなったのかもな」
「すいません……入れなおしますか」
「いやいい、これからアナルも毎朝毎晩欠かさず練習しろよ。そのバイブとローションやるから、それをつかってやれ」
「……わかり……ました」
 毎朝毎晩、オナニーでもないのに、アナルをバイブで広げてる自分を想像してなさけなくなった。そして、それは現実になるのだ。それより大きな問題があったので、そんな小さな羞恥など、もうどうでもいいが。
「乳ばっかに気を取られていたが、お前顔も可愛いな」
「ありがとうございます」
 今頃か。どんだけ乳好きなんだろう、もうどうでもいい。
「アイドルのなんとかってのに似てるよ、タバコと淫行で芸能界辞めた奴」
「ありがとうございます」
 そんな酷いこと言われてもお礼をいう……。
「お前とだったら、本当に付き合ってもいいかもなあ」
 そんな気持ち悪いことを言い出す男性客。誰が、年齢が二桁も上の、こんなおにぎりの化け物みたいな男と付き合うって?
「止めてくださいよ、彼氏だったら絶対こんなことしません。デパートにきてくれているお客様だからやってるんですよ」
「そうだったな。お前彼氏には騎乗位やってあげないのか」
「…………そりゃ、やるときもありますけど」
 彼氏の話をするたびに、思い出して胸が痛くなる。仕事だから、しょうがないけど彼がこれを見たらなんていうだろう。
 裏切りだよね、酷いよね、私馬鹿だよね。
 そうして、そんな私の顔色をちゃんと伺っているこの男性客はやっぱり鋭く酷い。
「お前こういうとき、彼氏にどういうキスをするんだ、俺にやってみせてくれよ」
 面白がって、彼氏のネタで遊ぶ男性客が憎らしい。
「わかりました」
 それでもやってやる、抵抗しないのが一番なんだ。もうめちゃくちゃなんだから。
 彼氏にするように、愛がこもった濃厚なディープキスをたっぷりしてやった。
 舌を絡めて上から唾液をこれでもかこれでもかと、送り込んでやった。いつもより激しいぐらい。
 ご要望なんだから、これでいいでしょう。
「ふぅ……すごいな、彼氏がちょっと羨ましいわ」
「ありがとうございます……」
「今は俺が……恋人だけどな」
「恋人じゃなくて、お客様です」
「お客様を恋人のように接客するのがモットーなんだろ」
「……どっかの消費者金融ですか」
 そう思わず突っ込みながらも、そうしないといけないんだろうなというのは分かった。エレベーターガールになってから、私はそれを、ずっと分からされ続けている。

「かがんでおっぱい吸わせろ」
「また胸ですか……はい」
 腰を押し付けて、おっぱいを顔に持ってくる。そうすると、男性客はまるでなにかに取り付かれたように左のおっぱいを弄び、右のおっぱいをすごい勢いで吸った。跡が残るぐらいに。
「乳頭にキスマークがついてしまったな」
「強く吸いすぎですよ……」
「お前、本当にいい乳だな。エレベーターにしとくのがもったいないぐらいだ」
「ありがとうございます」
 もうお礼言うのすら、疲れてきた。私は、どっちかというと持久力がないほうなのだ。
「もうすぐ、この立派な乳からおっぱいが出るんだけどな」
「……うっ、言わないでくださいよ」
 実際、こうして生まれて始めて自分の中で出されてみると、酷く汚された感があったが、本当に妊娠するようなリアリティーというのはあまりない。こうして絶望に追い落とされて、身体のスイッチを半ば切って機械的に動かしていると、もう物事がどうでもよくなって、ただ疲れている。
 危険日といっても、排卵期の只中ではないはずだ。世の中には不妊に困ってる人もたくさんいるそうだし、もしかしたら、運良くできない可能性もあるはず。
 たぶん、望まないセックスをした女性というのはこんな風に、あるいはとか、もしかしてとか、自問自答を繰り返して、一喜一憂するのだ。
 これが終わったらしっかり洗浄して、あとは。
 次の生理日が無事に来るまで。無事を祈り続けるしかない。
「ゆかり、俺のこと好きだよな、愛してるよな」
「……うーん」
 どう答えたらいいんだろう。嘘付いて、はいって言ってしまえばよかったのに。そのほうが楽なのに。
「お前は、愛しても好きでもない男の子供を孕むほどふしだらな女なのか。違うだろう、だからお前は、俺のことを好きで愛してるでいいんだよ」
「はい……お客様のことを好きで愛してます」
 ほら、こういう念の押し方をされるたびに、まるで自分の意思でいっているみたいな形になってどんなに押さえつけても、心がズキズキと痛み出す。
 それぐらいなら、心を偽って営業スマイルを浮かべたほうがどれだけ楽だろう。そう主って私は笑う、今度は上手く笑えた。
「いい笑顔だ、いい子供を産もうな。そのためにも腰をもっと動かせ」
「はい……ハッハッ……、ふっ……あっ……」
 私は、ちょうど男性客の不恰好に突き出た毛の生えた汚らしい腹の辺りを見つめながら、ただ息だけ吐いてがんばって腰を振る。もう体力がきついのだ。
「息があがってきたか、お前のマンコがいいからもうすぐだ、がんばれがんばれ」
「ハッ……がんばります」
 たまに私の腰の動きにあわせて、下から突いてくれる。
 そうとおもったら、乳頭をつまんでギュッと下に引っ張ってきたり邪魔もするのだ。
 それで、腰の動きを思わず止めると怒るくせに。
 男性客のものも、また脈打ってきてどうやらもうすぐ終わりそうだった。この悪夢も。
「おい、ゆかり。お前の彼氏なんていうんだ」
「ユキヒロ……ですけどぉ」
 必死になって腰振りに集中しているときだったから、不意に答えてしまった。考えている余裕はない、早く終わらせるためにも……腰を……あっあっ。
「よし、彼氏の名前叫べ」
「ユキヒロ! うぅユキヒロぉー!」
 名前を叫んだ瞬間に、酷い罪悪感と何故か快楽がない交ぜになって私を襲った。
「愛してるっていえ!」
「ユキヒロぉー、愛してるぅー!」
 その瞬間、なぜか私の腰は自分でも考えられないほどよい動きをした。私の頭はおかしくなって、身体は馬鹿になったみたいだった。
「あは、これは気持ちいい」
「ああっ、ユキヒロ、ユキヒロ、いくっー」
 彼氏の名前を叫んでるうちに、どうでもよくなって私は真っ白になってしまった。自分でももう何をいっているのか分からない。
「ところが、どっこいお前は俺の子を孕むんだよ」
「いやぁーーー!」
 男性客が、私を抱き寄せるようにして下から掴むと、落ちた私をしたからギュッと抱きしめて、私の唇を舐めるようにキスをした。その瞬間に、中で彼の二度目の射精が爆発するように弾けた。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 私は出されると同時にいってしまったし、身体は気持ちよかった。
 男性の三度目とは思えない激しい射精が中で破裂したとき、私はすごく感じた。
 それは認めるしかない。それでも、彼氏の名前まで一緒に汚されたような、酷い罪悪感が私の心を打ちのめした。
 そして頭が冷えた私は、危険日に入っている子宮にたっぷりと、男性客の汚らしい精液を注がれてしまったという悲惨な事実を目の前にする。
 まだ男性客が未練たらしく、出し入れしている中、ドロドロと中で出された精液と愛液の塊が私のあそこから床に零れ落ちていく。
 あまりの酷さに、私はいつのまにか、嗚咽して泣いていた。
「なんだ気持ちよすぎて、泣いてるのか」
「うっ……うっ」
「お礼は……忘れるなよ」
「中だし、ありがとうござい……ました」
「よし、よく出来た」
 私は、疲れと嗚咽で身動きできなかった。その間、下からずっと男性客に抱きしめられていたのだった。
「うっ……うっ……」
「よし! どけ」
 泣き続ける私をよそ目に、男性客はさっと立ち上がるとするすると服を着て立ち上がった。着やすい服みたいで、最低ファッションだがその点は羨ましい。
 私も、泣いていてもしょうがないので、よろよろと立ち上がってとりあえず自分の服を掻き集めた。
 予想通り、男性客はなんの断りもなく勝手にパネルを操作して一階につけようとしている。自動停止が解除されて、ググっと動き始めた。
「終わりなんですね……」
 私は、とりあえず掻き集めた服を焦って来た。裸のまま、一階のエレベーターホールに飛び出すなど自殺行為だ。
 音を立てて、一階に到着する。
「一階でございます、本日は当デパートのご利用ありがとうございました」
 この台詞だけ、反射的に口から出る自分が悲しい。
「ふむ、気持ちのいいサービスだったよ。今日からしばらく、ゆかりちゃんをごひいきにすることにした。また来るからね」
「またのご利用をお待ちしております」
 心とは裏腹に反射的に台詞がでる、自分の声が悔しい。

 エレベーターは一階に止まったまま。私がここで停止させたのだ。普段、一階で停止させることなんてありえないけど、あの男性客が来たときは別。
 あの男性客が降りてすぐ、他の客が乗ることはありえないのだ。
 どんなに客が混雑している休日であってもだ。

 さっき、あの男性客が今日は私だけって言ってたからチーフに連絡すれば、すぐ交代を出してくれるだろう。
 そう思って備え付けの無線で連絡してみると、案の定すぐ交代を出すから、休憩室に戻っていいといわれた。
 どっと疲れて、私は自分の職場である箱の中を見回す。慌てて服を着たので、帽子とか破れたストッキングとかが散乱している。
 客が乗ってこないにしても、これは恥ずかしい。不思議なことに、たとえ客がぜんぜんこっちを見ていなかったとしてもである。

「やっぱり、エレベーターガールの仕事って辛い。どう考えたって辛すぎる!」

 そう思いながらも、私はびりびりに破かれたストッキングを拾い集めて、床に落ちた精液を拭いた。そして、汚れたストッキングでお尻に刺してたバイブとローションのビンをくるむようにして拾う。
 死ぬほど気が進まないが、これから毎朝毎晩これが刺せるように練習しないといけない。これからの日々を考えただけでも泣きたくなる。

 そうこうしているうちに、同僚の娘と一緒に清掃係の職員まで来た。
 エレベーター内の汚れを落とし、匂いなどの痕跡も消すのだろう。さすがチーフは、連絡の手際のよいことだ。
 私はもうそんなことにかまう余裕もなくて、悲痛な面持ちでこちらを見ている交代の娘にお礼だけ言うとボロボロの格好のままで、他の職員に哀れみの目で見られながら、休憩室へと駆け込んだ。

……休憩室……

「ああ、ゆかりさん。どう身体の具合は」
 私は急いで備え付けのシャワーを浴びて全てを綺麗にしたあと、何もする気力が起きずに、たった一人で、休憩室のソファーに寝そべっていた。そうしたら、様子を心配してかチーフがやってきたのだ。
 エレベーターガールのセクションチーフは、磯辺美幸という女性で二十八歳の若さで、本人も実務につきながらエレベーターガールたちのシフト管理もこなしているなかなかの切れ者だった。
 エレベーターガールのセクションに回されてきて、まだ日が浅い私も美幸チーフのお世話になっている。頼りになるお姉さんなのだ。
「うぅ……うわーん、チーフぅ!」
 私は、チーフにすがりついて泣いた。あまりの衝撃にさっきから、休憩室で一人で泣いて泣いて泣きじゃくっていたのだ。さっきは、他の職員やお客さんの眼もあったから我慢したけど。
 だって、犯された挙句に中に出されるなんて、あんまりにも酷いじゃない。これまで性的な悪戯はいろいろされてきたけど、あそこまでされるとは思っていなかった。私の考えが甘かったのだ。
「あの男性客に酷いことされたみたいね」
「チーフ……私、中に出されたんですよ……酷いですよ」
「そう……今日は危ない日だったの?」
「はい、私もう、どうしたらいいか……」
「あらかじめ通知してあるけど、あの男性客の要望で、医学的な避妊や中絶などの処置は全て禁じられているわ」
「ううっ……それ聞いたとき、こんな意味だとは知りませんでした!」
「これも、仕事のうちと諦めることね」
「そんなあ……」
 目に見えて落胆する私に、悲しげに視線を向けて、ため息をついてから、美幸チーフは静かにこう尋ねてきた。

「ねえ……ゆかりさん。私のお腹、ちょっと出てきてると思わない?」
 そういえば、最近少し美幸チーフのお腹が出てきたのは気になっていた。
 エレベーターガールの制服は身体にフィットしたデザインだし、私と違って美幸さんはとてもスレンダーなタイプの人だから、その余計にぽっこりと。
「そういえば、そのほんの少しですけど、たしかに……」
「あのね、私……妊娠してるのよ」
「あっ……おめでとうございます」
 突然のことに、そういうしかなかったが。私の言葉に、美幸チーフは顔を歪めた。
「何がおめでたいものですか。中に入っているのは、あの男性客の子供よ」
「えっ……」
「私もあの男性客に犯されて妊娠したの。逆らえないものね。他の娘も、みんなやられてるわ」
「えっーーー!」
「ほら、去年入った真由ちゃん。もう臨月で出産間近なのに、まだ仕事してるでしょ」
「何か事情があるんだろうと……」
「その事情が、あの男性客よ。生まれる寸前まで、仕事を続けるように強制されてるの」「そんな、あんまりにも酷い!」
「もしかしたら、エレベーターの中で産ませるつもりなのかもしれないわね」
「ありえない……」
「これが、エレベーターガールの仕事よ。辛いだろうけど、耐えるしかないの」
 そうやって、厳しい顔で上を向いて、下唇を噛み締めている美幸チーフの顔を見て、私はいつまでも泣いているわけにはいかなかった。チーフも私と一緒で泣いているのだ。ただ、涙を見せないだけで。
 それにしても、私はこれからどうなってしまうのだろう。


 ――中篇に続く


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おかげさまでプロの小説書きになりました。ちょっと忙しくなるので更新遅くなってます。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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