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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
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第一章「夢からの精神操り」
「師匠と呼ばせてください」
 次の日、またも午後に長椅子で横になって明晰夢に入って月のアポロ落下地点まできた誠人はアルジェと再会していた。夜も入ってみたのだが、どうもアルジェは時差の関係で日本時間の午後によく夢の中にいるようだ。
 完全に現実の夢……という表現のしかたはおかしいが、アルジェが現実の存在だということがわかって、頭を額にこすり付けんばかりの土下座である。誠人は夢の中では強気だが、現実の人と話すのは苦手なタイプなのだ。
「ちょっとなんだね師匠って、日本のオタクの間で流行してるのそういうの。ジャパニメーションかなにかの影響かな」
「いや……研究ですから、弟子と師匠……」
「あーオタクっぽい発言だね! 君がそれでいいなら、それでいこう。さあ、ちゃっちゃと研究、研究。まず精神操りからいこう。君は、誰の精神が操りたい、あの夢で犯してた伊藤イズミって子がいいか」
「犯してたところまで、見てたんですか!!」
「あたりまえだろう、別に興味はなかったんだぞっ、ただ必要な情報だと思ったからしかたなくだよ。まあたしかにそのっ、なんだ――ユニークな、犯し方ではあったが」
 そういって、クスリと笑われた。もう、ここまで恥をかいたら開き直るしかない。
「じゃ、じゃあイズミちゃんで!」
「よし、じゃイズミの夢に行こう。私的には誰でもいいから。結果も一緒の会社らしいから分かりやすくて適任だね」
 さあ、と手を引かれて今にも飛びそうなアルジェ。
「ちょ……ちょっとまって師匠! いま日本時間の昼過ぎだからイズミちゃん起きて仕事してるし!」
「そこらへんも理解してないんだ。まあいいから来なさい、やりながら説明したほうが早い」
「――ちょ! ――まって! ――」
 ものすごいスピードで手を引かれて二人は宇宙を飛ぶ。

 シュルルルルルルルッ――――

 アルジェに手を引かれて、誠人は違う地球へ――アルジェがいうには、イズミの精神世界へと到達した。ちょうど、イズミと誠人が勤める会社の五階、営業三課がある部署の窓まで来る。窓の内側には営業三課で仲良く仕事をする、石崎係長と伊藤イズミの姿もあった。
「ちょっと、師匠! これってもしかして現実、それともイズミちゃんの夢!?」
「イズミの夢、ああ変な顔するな、人間が起きてる間も夢の世界というのは存在してるのだよ。起きたら、夢が消えると思ってる人が多いけど、夢の機能は人が起きたら眠るだけで、その実体は脳の中にちゃんとあるし活動も続けている。それとも、起きたら脳の夢を司る部位が消えたりすると思うのかね」
「そりゃ、消えないですけど」
「ちゃんと見て理解しなさい。夢は、精神の働きだけど、脳の中に物質としてちゃんとある。だから、いま私たちはイズミの脳の中に精神エネルギー体として入ったわけだ」
「携帯電話で……脳が繋がったみたいなものですか」
「そう、いいたとえだね。これだから理系の子は分かりが早くていい」
「でも、その……どうやってイズミちゃんの心を操るんですか」
「それは、私の専門は催眠術だから、いろいろ方法があるけども。今回は、手っ取り早い方法を使おう。いくよ」
 そういって、するりと営業三課の中に入り込んでしまう。
 すぐに追いかけて、誠人も入るとアルジェは仕事をしているイズミにどこから取り出したのか、何か王冠のようなものを被せて、いろいろ細かい調節をしているようだ。
「あの、この状態でぼくがやったみたいに夢で犯すとどうなりますか」
「面白い質問だね。たぶん、そうするとイズミの精神が侵されてしまうだろう。普通にやったらトラウマとかが残るだけだけど、殺したら精神が壊れるだろう。うまく使うなら、それを使ってもっと面白いことができるかもしれないが、私は人殺しに興味は――オッケー調節できたよ」
 そうして、アルジェはまるで、悪魔のように微笑んだ。イズミは、王冠を被せられても、関係なしにそのまま仕事を続けている。
「あの師匠、この冠はなんですか」
「ふふ、これは私の愛弟子が開発した催眠道具でね、天使のワッカって名前がついてるんだけど、これを被せるとある特定の人のお願いを断れなくなる、従順な天使ちゃんになっちゃうわけだ――しかし天使って、本当はそんなに都合の良いモノじゃないんだけど、こういうのは、日本のオタクの発想なのだろう?」
「いや、ぼくオタクじゃないし……」
「はい、いまこの道具を君に固定したからね。これで、この夢の世界のイズミは、君の命令は何でも聞くよ。問題は、現実世界のイズミがこれで従順になるかということなのだけど、それをテストしてほしい」
「ええ、現実で声をかけるんですか……」
「必ず、最初にちょっとお願いがあるんですけどって前置きつけて命令すること。お願いってのがキーワードなのだから」
「いや……ちょっと現実で話しかけるのは勇気ないというか」
「これが成功したら、便利だよ。この道具は、誰でも簡単に操作できるのはいいんだけどワッカがでか過ぎて邪魔だし、他人に目撃されたらバレバレだからね、でも精神に付けられたら取れる心配もないから、凄い便利だよ!」
「あの……やっぱ怖いというか」
「うるさい! 男ならやれ! 明日までの宿題だからね。目覚めろ!」
 アルジェは、煮え切らない誠人の手を掴んで空に思いっきり放りなげた。

 シュルルルルルルルッ――――

 誠人はそのまま、イズミの夢の会社から大空へ。宇宙を跳び越して、月が見えたとおもったら、ぐわぁと月の重力にとらわれて、月の軌道上を一周。
 こんどは自分の夢の地球まで一気に落下。
「うああああああ」
 魂の身体とはいえ、地球から月を一周してまた落下なんて精神がバラバラになりそうな衝撃だった。

 そして、がばっと長椅子から身を起こしてた。
「これは、現実だよな……」
 夢の万能感はもうない。周りには停滞した現実の空気が漂っている。誠人が、自分を押し殺さなければいけない世界だ。
 そうして、誠人は今じっと営業三課の入り口近くでイズミの様子を伺っている。
「声かけるチャンスが、ない……」
 就業時間が終わりそうだ。石崎係長が思惑ありげに、イズミに誘いをかけた。
「お、もうそろそろ仕事終りだな。今日はノー残業デーだし、そうだイズミちゃん飲みに行かない」
 ポッと顔を赤らめてイズミは嬉しそうに反応する。
「えーどうしようかな……ちょっと、トイレいってきますね」
 イズミは化粧直しにトイレにいくつもりだった。石崎の誘いを受けるつもりだったのかもしれない……だが、そこに勇気を振り絞った誠人が立ちはだかったのだ。
「あの、イズミさんお願いがあるんですが……」
 か細い、聞こえるか聞こえないかの声だったのだが、イズミはピクっと反応して誠人に向き直った。
「はい! なんでしょう」
「あの……もうちょっと、こっちの影に来てもらえます」
 そういって誘い込んで、今日は石崎の誘いを断ることと仕事が終わったら、外の喫茶店で落ち合うことをお願いした。そのあとずっと観察していると、石崎係長に謝って、どうしても用事があってと断っているイズミの姿が見えた。
 こんなに早く退社するのは初めてだ。自分も仕事を片付けて、慌てて喫茶店に行くと化粧直しまでして、指定した喫茶店の奥でイズミが待っていた。
「あの……イズミさん来てくださってありがとうございます」
「お願いされましたから」
 そういって、じっと見つめられると、夢の中では何度も何度も犯したイズミのはずなのに、緊張で声が震える。
「あの……ぼくのこと知ってます?」
「うちの社員さんですよね……見たことはあります。えっと、名前まではちょっと」
「井上誠人といいます……覚えてくださいね」
「ええ? はい」
 これ以上は、この場所では駄目だ、ふっと思いついて誠人は言った。
「あの……お願いですから、イズミさんのお家に連れてってくれますか」
「私の家ですか、いいですよ」
 そういって、無言でハンドバックを持って立ち上がると、付いて来いとばかりに歩き出した。半ば、義務的というか機械的な動きだ。慌てて勘定を済ませて、追いかけるとイズミは、二駅ほどいったマンションに止まった。
「ここが、私のマンションです。これでいいですか」
「あのーお願いだから、部屋の中にいれてもらえますか」
「えっ……中に入るんですか」
 ちょっと、困惑気味のイズミ。家に連れて行けといったのに、中に入られるとはまったく考えてなかったようだ。
「お願いします」
「……わかりました」
 ガチャリと入った先は、ピンクが基調の女性らしい部屋だった。歯ブラシも一つしかないし、男を連れ込んでいる様子はない。入って立ち尽くしていると、じっとイズミに睨まれる。
「あの……睨まないでください」
「あ、すいません。男の人なんて、部屋にあげたことがなかったもので」
 誠人にとって、イズミは二歳年上なのだ。二十四歳の娘が、男を呼ばないなんてことがあるだろうか。精神制御がどこまでできているのか調べる意味でも、質問してみるのはいいかもしれない。
「お願いですけど、男の人を部屋に上げたことはないのか正確に答えてください」
「上げたことは……それはありますけど。つまり、そのそういう意味ではなくて彼氏でもない男の人をあげたことがないという意味で言ったんです」
「今、彼氏はいますか」
「……」
「お願いですが、ぼくがいう質問には全て答えてください」
「わかりました……いません」
「石崎係長を上げたことありますか」
「ありません」
 これが一番聞きたかったことなのだ。伊藤イズミ二十四歳は、高校生と大学生の時に彼氏が一回ずつできて、高校の彼氏のときはキスまでだったが、大学二年のときに本格的な初体験して、三年間無数にやりまくっていた。もちろん、避妊はちゃんとしていてゴム付きセックスで生はなし。懐妊したことも、堕児したこともない。
 彼氏が就職浪人して、疎遠になり結局別れたという。それで寂しい時に、石崎係長がいいなと思い始めて、仕事上の関係を利用してそれとなく近づいたのも、実はイズミのほうで、話を詳しく聞いていくうちにこんなおとなしいと思われてるイズミちゃんが、そんな計算高いことを考えていたなんて女は怖いなと思った。
「もういいですか……こんな話したくありません……うぅ」
 話しながら俯いて震えていたと思ったら、ついに、ポロポロと泣き出してしまった。別に嘘泣きではない。自分の汚い心の部分を、赤の他人に話すなんて辛いことなのだから。
 ぼくはこれからどうするんだと思いながら、途方にくれて泣いているイズミを抱くことも出来ず眺めている誠人。そういや、抱くんだろ。
 すでに、ここまで本人が抗っていることを聞けて精神制御は完璧であることが伺えた理性はそういっているが、経験不足の誠人の感情のほうはいまだ困惑を続けている。
「うぅ……もう帰ってもらっていいですか」
 泣きながら、そういうイズミ。抱くには、どうしたらいいんだと考えてまず風呂だと思い立った誠人。
「あの、お願いですけどお風呂借りますね」
「えぇ? いいですけど」
 なぜ、急に風呂とちょっと驚いて、キョトンと泣き止んでしまうイズミ。
「お願いですから、その間に普段着に着替えておいてください」
「普段着、着替えます。はい……じゃあ、お風呂は少し小さいですけど、タオルは十分にあると思いますから」
 さっと、風呂に入ってくる誠人。トイレと一体型の小さいながらも、ピンクが基調の可愛らしいバスルームだった。鼻歌まじりにシャワーを浴びて置く。これから、抱くのに汚れた身体では可哀そうだと誠人なりに思ったのだ。
 それでも誠人の風呂はカラスの行水で早い。すぐに、タオルで身体をふき取ってバスタオルを身体に巻いたまま部屋に飛び出してきた。
「ちょちょちょっと! なんで裸で飛び出してくるんですか!」
 普段着に着替えてという指示で、赤い部屋着に、薄いカーディガンを羽織ったイズミが、さすがに怒ったように言う。
「だって、換えの洋服がなかったから」
「そんなぁ、あのいったい何を考え……」
「お願いですから、ぼくの裸を見ても驚かないでくださいね」
「……はい」
 ざばっと、バスタオルを脱いでしまう。お願いが通じていたのか、驚いて叫んだりはしなかった。ただ、ガリオタの貧弱な身体を見て、しかもその下の似つかわしくないほど立派に屹立したモノをモロに見てしまい、イズミは嫌悪感のあまり気が遠くなった。
 ばさっと、倒れるイズミ。息はしているようだが、目の色が生気を失っている。慌てて、ゆすくっていると、瞳の色が戻った……とおもったら黒ではなく金色の瞳。髪も、思ったよりも金色に輝いて、身体も胸もどんどん小さくって……

「師匠!」
 イズミの身体は、半ばアルジェと化してしまった。完全にアルジェの白人の少女の身体ではなく、その間を取ったような中途半端な状態だ。
「こっちでは、昼なのだがこっちは夜なのかね――結果が気になってイズミの脳の中から調査させてもらっていたんだが、とりあえず実験成功はめでたい」
 そういいながらも、アルジェの表情はとても険しい。
「だが、今度の弟子は、夢の技術には長けていても催眠術の基礎も知らんようだ」
 そういいながら、仁王立ちで渋い顔をする。それを、正座をしながらシュンとしてみせる誠人。アルジェは鼻をフンと鳴らす。
「いま、イズミは精神が軽く壊れる寸前だったぞ。だから、私がこうやって顔を出すことができたわけだが、気をつけろよ。お前の失敗で人を壊されて、その後始末をやらねばならないのではこっちがかなわないからな」
「面目ないです……」
「お前は、催眠術をロボットを操縦する技術だと考えてるのか。呆れたものだな、これだから理系はテクニックの割に愛がないと言われるんだ。いいか人間の心は生き物なんだぞ。いくら、お願いを聞くからといって嫌悪の情もあるし、生物的には危機を回避もきちんと回避する」
「はい」
「お前を優秀だと勘違いして、説明しなかった私も悪いのだがな、催眠による支配というのは本来、相手がそれを自分にとってよいことだと思わせて操るのが基本なのだ。相手の拒否をねじ伏せるための魔法ではないのだ。もちろん、相手にある程度抵抗させて楽しむなんて迂遠なことをやっている術師もいるにはいるが」
 そうやって、幾人か知っている悪趣味な術師を頭に思い浮かべるアルジェ。
「いまのお前のやり方では、いずれ人を殺すぞ。さっきのイズミは、お前のお願いと自分の嫌だという生物的拒否反応がぶつかって脳がショートしかけたのだ。死んだ振りってやつだ、軽く意識を失えば自分の嫌悪するお願いを聴く必要がなくなるのだから合理的処理法といえる。だが、これを何度もやるとショック死することだってある」
 自分のやったことが、殺してしまいかねないことだと言われて青ざめる誠人。
「ふん――それで、自分の願いを殺してイズミにやさしくするような奴なら、失格だけどな。どうやって、相手に拒否をさせずにお願いで言うことを聞かせるか、考えてみるんだな。大事なのは説得だ、分かるか出来の悪い弟子よ」
 そうやって、しかめっ面を緩めて、初めてニヤっと笑うとゆっくりと床に倒れこんだ。アルジェの印象がどんどん抜けていって、身体が伊藤イズミそのものになる。ほどなくして、黒い瞳が目を覚ましたようだ。

「うう……私は」
「大丈夫ですか、イズミさん」
「ああ……あの、えっと井上さん」
「とにかく、お願いですからベットに横になってください」
 倒れたことを覚えているイズミはベットにすぐ移って言われたとおりに横になった。
「お願いですから、安静に目をつぶっていてください」
「はい……わかりました。私はどうしたんでしょう」
 さて、イズミをショックを受けずにするにはどうしたらいいものか
「倒れたんですよ、あなたには治療が必要です。お願いですからぼくの治療を受けてください」
「はい」
「まず、息を楽にするために服を脱がしますね」
 たしかに息は苦しかったので、納得するイズミは自らも脱がされやすいように身体を動かす。
「ちょっとまって……下着もですか」
「嫌ですか……」
「そりゃ、嫌ですよ」
 そういって、下着は脱ぐのを拒む。お願いはしていないので、抵抗できるのだろう。嫌がっているのを無理やり脱がしてしまって、無理やりやってしまうのもいいだろう。でも、それでは彼女は壊れるかもしれないしアルジェに無能を晒すことになる。
 うまくいい説得ができたらいいのだが、誠人は催眠術師ではない。
 しばらく躊躇して、イズミを見つめた。彼女ははシンプルで清楚な白い下着をつけている。ああ、さっさと触ってしまいたい。競りあがってくる性欲に、煩悶する。
 誠人のなかで性欲と理性がぶつかり合う……今もイズミの脳の中から見ているはずのアルジェにいい方法を聞くか、いやそれも無能を晒すことになる。まてよ、そうか聞けばいいんだ……イズミ本人に。
「それじゃあ、これはいいです。お願いですから、落ち着いてこれから私のいう質問に正直に答えてください」
「はい……」
 お願いという言葉で、イズミは素直になる。よく見ると、さっきの目をつぶってというお願いもしっかり守っている。安静もなんとか保っている。
「ぼくだから、下着を脱がされるのがいやなんですか」
「違います……彼氏やお医者さんでもない男性に、裸を見られたくないんです」
 彼氏になってしまえば、問題解決かも。しかし、いまの彼女は誠人が彼氏になるのを望まないはずだ。では、もう一つの方を取ってみることにする。
「お願いですから、ぼくがいうことを信じてください。ぼく、井上誠人のいうことはあなたにとって全て真実です。わかりますか」
「はい……あなたのいうことは真実」
 つぶっていた目を開けて、ぽーと火が灯るように目を光らせるとまたつぶった。
「ぼく、井上誠人はあなたにとってのお医者さんです。あなたは、ぼくの治療を必要としています。これから、あなたに医療行為を行うんです。どんなに非常識だと思っても、あなたの命を救うための医療行為ですから我慢して嫌がらずに受けてください」
「はい、あなたはお医者さんです」
「医者だから、下着を脱いで裸にしてもいいですよね。診察をしますからね」
「はい、大丈夫です」
 イズミの四肢から、強張りと抵抗の力が消える。
「もう、あなたは裸になりました。目を開けていいですよ。これから、あなたに医療行為を行いますから、もし疑問に思った点は何でも聞いてくれてかまいません。ただ、どうしても我慢できないこと以外は、なるべく治療に協力してください」
「はい、わかりました。治して下さい」
 いつになく、従順になる。こういう従順な表情をしている大人しい時のイズミは、まるで少女のようにも見える。二十四歳の女ざかりの爆乳女が、少女というのはおかしいかもしれないが、その違和感が誠人にはたまらない。
「じゃあ、まずおっぱいから診察しますからね」
 イズミのGかHかと思うような巨乳、胸囲百センチは確実に超えているだろう。夢で誠人が見たよりも大きい……だがそれに比例して乳輪も大きいし、色もすこし濃いような、まあ夢と現実の違いだろう。さすがに仰向けにしてみると、ぐにゅっと垂れ下りがある。それもまあ、現実というものなのだ。
 その垂れ下った乳が許せなくて、親の敵のようにぐっぐっと上に向くように絞ってやる。力いっぱいそれをやっていると、次第に熱くなってきた。
「先生ぃ……これ本当に診察なんですか」
「そうだよ、ほら乳頭が起って来た」
「そりゃ、そんなにされたら……やぇ乳頭摘まないで」
 まるで、野イチゴのように濃く赤く、乳に比例して大きな乳頭だ。多少いびつだが、それがなぜか性欲を掻き立てる。心の中で、イチゴ狩りと唱えながら、一心不乱に乳頭を引っ張った。
「ぁぁ……はぁ、先生。もう、噛まないでください。吸うのもぉ!」
 あくまでも、医師という真面目な顔を崩さずに責め続け、頷いてみた。
「わかったぞ、君の病気の原因は欲求不満だ」
「はぁ……そんなぁ」
「イズミくん、君はどれぐらいセックスをしていない」
「ぇぇと……彼氏と別れて八ヶ月だから、半年ぐらいしてないです」
 計算が少しおかしかったような気がするが、医師なのでスルー。
「簡単なことだな、ぼくとセックスをすればいいんだ」
 そういってニマーと笑う誠人。
「え、え……それは嫌です。彼氏でもない人とは絶対しません」
「ええー、駄目なのか」
 がっくしと肩を落とす。誠人なりに、かなり必死に愛撫したつもりだったのだが。まだ全然、イズミの理性を狂わせるまでにいかなかったようだ。でも、強引は禁物。
「じゃあ、セックスはしなくていいや」
「ほっ……」
「ただ、欲求不満の解消のために、君の子宮内部に薬液を注入する必要がある」
「薬液、注射器か何かで」
「いや、それでは膣を傷つける恐れがあるので、この肉棒で」
 そういって、股間の逸物を指す。
「ええ、それってその先生の……男の……」
「そうだよ、ぼくのチンポを君のマンコに差し込んで、精嚢で作られた薬液を注入するんだ」
「それって、やっぱりセックスじゃないですか。しかも、生でってことでしょ」
「違う……根本的に違う。まず、お願いだからすこし落ち着いて考えてみよう」
 そういって、誠人は胸を嬲るのを再開する。
「はぅ……だって、薬液って先生の精液のことじゃないんですか」
「その通りだよ、精嚢で作られた精液をぼくの肉棒を通して、君の子宮内へと注入するわけだよ。注射器を使うより、実に自然で安全な治療法だ」
「安全というか……はっ……危険ですよ! ううっ……それに危険日です」
 危険日という言葉に、誠人の息子がムクムクっと反応した現金なものだ。この分だと、妊娠の心配はないと言い聞かせることは簡単だろう。しかしここで焦るのは禁物、なんとか妊娠させることを了承させる方法はないものか。むしろ、妊娠を切望させるような方策は。
「危険日なのは、わかったからとりあえず治療を続けよう。膣をこんどは診察させてもらうね」
「セックスだけは駄目ですからね……」
「分かってるよ、いい感じにぬれてるね。これが女性の膣か」
 実は、誠人は初体験なのだ。内心ドッキドキだ。しかし、この医者プレイが効を奏してけっこう冷静な気持ちが維持できているのは助かる。
「あぁ……指いれないで、舐めないでください」
 舐めてみる。チーズの味がするとか、ひどい味がするという割りには、さほどでもなかった。むしろ、レモンっぽいかも。人によるのだろう。
「治療だからね、すこし我慢してね」
「うぅ……はぁう……」
 AVで見たように指の数を増やして、回転させてみたりする。
「はぁぁ……先生……」
 結構知識だけでやれるもんだな。しだいに、膣は粘度を増してきた。もういいだろう。ぶちこむよーという体勢をとる。
「ちょ……先生、挿入は駄目です」
「分かってるよ、セックスは駄目だ。外に擦るだけだよ、素股のようなものだ」
「それならいいですけど……」
 素股といっても、風俗にも怖くて行ったことのない誠人は見様見真似で、亀頭のさきっぽを、膣のビラビラに擦り付けるだけだ。膣の入り口に、亀頭がひっかかるたびに、切なげに膣口と亀頭がキスをする。
「はぁはぁ……先生、怖いから、あんまり入り口に近づけないでください」
「ふぅ、ふぅ……これも治療の一環だからね」
 ああ、切ないものだ。素股の感じというのは。
「先生、コンドームつけたら入れていいですから。ゴム付けてください」
 ついに、ねをあげたのはイズミのほうだった。半年やっていないというのも、嘘じゃないようだ。でも、ゴムなんていうのは、誠人にとっては初体験なわけだし。初めては生がいいと贅沢なことに誠人は思った。
 どうする、入れる……入れない……このまま、入れてイズミを壊してやってもいいんじゃないか、あるいは入れて平気かもしれない。でも師匠に面目が。そう煩悶しながら、ただ胸だけを必死になって揉んでいたら。
 身体が小柄になり、胸が見る見ると小さくなっていく。これはこれで、形が良くて揉み心地はよいのだが。気がついたら、イズミの目が金色になっていた。

「イズ……あれっ師匠?」
「ここまでだな、覚えておくといいぞ。あんまり挿入まで時間がかかりすぎると、危険日近いっていってただろ、雌は発情期だと、子宮が降りてきて膣が狭くなって入りにくくなることがある。そうなったら、うまくはできないぞ。この子はそういうやっかいなタイプのようだ」
「うう……面目ないです」
「今回は、安易な道を選ばなかったということで、ギリギリ合格点にしておいてやろう。見たところ、経験がなかったみたいだしな」
「……つまり、ぼくは」
 つまり誠人は、うまく最後までうまく催眠ができなくて時間切れだったということだ。
「協力してもらってるんだから、飴も必要だろう。まあ、そう落ち込むな。何事も初めから全部うまくいくなんてことはないから。今回は私に任せておけ」
「師匠……」
「これから、イズミは雌ブタに変えてやろう。お前の子種を欲しくて欲しくてたまらない、雌ブタだ。人間なんて、一皮向いてしまえば動物だということを、プロの催眠術を見せてやるよ」
「……ありがとうございます」
 最後まで自力でやれなかったことが悲しくて、誠人は俯いていた。悔しさに、思わず手に力がこもる。
「後処理もうまくやれよ、あとな――」
 なぜか恨みがましい顔で、無言で誠人を睨むアルジェ。
「はい?」
「胸を強く掴みすぎなんだよ、同化してる私も痛いだろ――馬鹿がぁ!」
 そういう間に、胸がまたもとの大きさに膨れて、目の色も黄金から褐色へと変化していく。
「フッ、せいぜい楽しくやれ。私は最終調整も終わったから帰る。あとはイズミを気持ちよくしてやろうが、痛くしてやろうが勝手にしろ、ではまた夢で会おう――」

「先生ぃ、ぶっといお注射お願いします! 子種をください! 先生の子供が欲しいんです」
 さっきとは打って変わって、いや欲望をむき出しにして懇願しているイズミ。すっかり、瞳は理性と計算の色を失い、情動に支配されている。
 膣はすでに、十分どころか十二分の準備OK状態。ぐぐっと挿入を仕掛けると、まるでさっきまでの押し引きが嘘のように、スルッと膣の奥までゴーイングオマンコ!
「おお、膣すげえ気持ちいい」
「先生ぃ、突いて! 突いて!」
 待ちきれなかった膣はすでに、きっつきつで子宮で誠人の似つかわしくない巨根をしぼりとる勢いだ。
 これまで、働きどころのなかった二十二歳の肉棒が全てを解放せんと、ピストン運動を開始する。
「ふぅ……先生ぃ……先生ぃ」
 その間にも、やはり胸に執着している誠人は、巨乳に武者ぶりついて満面の笑み。それでも、腰の動物的動きは止まらない。むしろ、セックス動物と化したイズミの受けのほうが激しいぐらいだ。
「いぃ……先生いぃ……」
 接合部から、パツッパツっと打ち当てる音がする度にジュッジュっと愛液が宙にはじけ飛ぶ。ただただ、まぐわうという表現が相応しい、動物的セックスだった。
「うあ、ぼく生きそうイズミちゃん!」
「先生ぃ、来て精子! 来て!」
「いぃくう」
「中で出して!」

 ドピュドピュドピュドピュ!

 こうして、激しい初体験を誠人は済ませたのだった。このあと、満ちたりない二人は体位を変えて二回もやった。いろいろ考えた結果、いつでも戻せるようにして今回の記憶は夢の中に、一時封鎖しておくことにした。
 こうしておけば、イズミは薄っすらと思い出しても、そういう夢を見たというイメージを想起するだけだ。そのうえで、必要があればいつでも取り出すことができる。
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序章「明晰夢」

「はぁー」
 いつもの無為な社内巡回を終えて、ため息一つついて、仕事を再開する長身痩せぎすのサラリーマンが一人。井上誠人二十二歳独身、本業はプログラマーであったのだが、高校を卒業してからPGとして過度の仕事をこなすうちに、身体を壊してしかたなく転職して、この普通の会社のメンテナンス管理者をやっている。
 メンテナンスの仕事というのは、専門知識が必要なものの社内のシステムに異常でも起こらない限り、仕事はないに等しい。定期業務も、あらかじめプログラムしておけば、あとは機械が勝手にやってくれる。給料は安いが、まことに気楽な身分なのであった。
 これで、社交的な性格なら暇をあかせて女性社員を口説いたりとか、いろいろ楽しめるのだろうが、至って地味というか暗いというか、まあ一言で言ってしまうと奥手なオタクである、誠人にとってせいぜい女性社員は、目の保養をするのが精一杯。あとは、社内システム管理者の立場を利用して、暇つぶしにメールや個人情報を盗み見たりしている。どこまでも、根暗なのだった。
 暗いメンテナンスルームで、誠人はたった一人。誰が見に来るということもない。だから、ため息どころか叫んだって誰の迷惑にもならないのだ。それが近頃、気楽というよりは孤独に感じてしまうのだった。
 息が詰まって、社員食堂に行くついでに結構広い社内を一周してみたのだが、誰にも声をかけられることもなく、顔見知りを作る社交性もない、誠人はただ相手と目をあわせないように、女子社員などを観察するのが精一杯だった。
「いつものアレ、やるかな」
 そんな、誠人の唯一の楽しみが、長椅子に寝そべっての幽体離脱ごっこなのだ。所定の作法にしたがって、横になり目をつぶれば、仄かに意識が明確になり、身体がバイブレーションしはじめるような感覚と共に、肉体から魂が抜け出るのだった。
 もちろん、これは本当にそういうことが起こっているわけではなくて、明晰夢というただの夢である。
 金縛りにあったことがあるという人は多いだろう、金縛りは別に悪霊が取り付いているわけではなくて、身体が寝ていて頭が起きているので身体が動かせないだけなのだ。人間は原始時代、洞穴で外敵に囲まれて生きていた。そのため緊急時に備えてすぐ行動できるように、頭と身体を交互に休めることで、すぐに活動できるようなシステムになっているのだ。
 金縛りを一歩進めれば、周りの状況を把握しつつ、夢の世界に入ることもできる。前の仕事で、身体を壊した副作用で誠人はこの明晰夢状態にすぐ入れるようになってしまったのだ。寝入って、五分も立たないうちに誠人は幽体のようにふわふわと空中を浮かびながら、薄暗い寝椅子に寝そべる自分の姿を見つめている。
 夢でもいいのだ、誠人にとってはとてもリアルに感じられるのだから。
 強く強く、自らの身体があることを意識する。夢だからといって、ぼけっとしていない。その肢体があるという感覚は、意識すれば意識するほど鋭くなっていって、まるで普通に「辛い」とか、「疲れた」とかそういう風に思って生きているときより、ずっとずっと頭が冴えているように感じるのだ。
 そういう夢を見たことがある人は、きっと多いことだろう。この明晰夢の利点は、誠人が夢の世界全体がコントロールできなかったとしても、夢の中での自分の意識はコントロールできるということだ。

 シュルルルルルルルッ

 無理やり擬音にしてみるとそんな感じだろうか。まるでゼリーが飛び出すみたいに身体から魂が、飛び出る。もちろん、感覚的なもので、本当に飛び出たわけではない。最初、そういう風に考えられなくて、ものすごい恐怖を感じたものだ。恐怖を感じれば、それがすぐさま現れるのがこの夢の世界。金縛りと明晰夢は、そのときの誠人にとっては地獄だった。
 しかし、世界の原理さえ分かれば、この世界は誠人のために用意されたものだ。
 やりたくて、はちきれんばかりの気持ちになっていたので、すぐさまその薄暗い部屋をでる。壁抜けもできるが、なるべくリアルを意識するために、扉から出たほうがいいことを知っている。
 ドアノブを強く持って、扉を開ける。ただ自然にこなしている動作が、この世界ではとても鮮明で新鮮なものに感じるから不思議だ。静かだった、自分の仕事部屋から社内に移動するにつれて、社内の忙しい喧騒が聞こえる。ここらへんは、夢とは思えないリアルさ。
 今日襲う予定なのは、営業三課の伊藤イズミ二十四歳、営業の事務的な補助をそつなくこなす、一般職の事務員である。終始控えめな性格で、最近になって私服OKになったというのに、いまだに前の白い事務服を着ている。他の社員が着ると、おばさん臭くなる服なのだが、不思議とイズミには似合っている。
 いや、似合ってるって表現はおかしいだろう。イズミは物凄い巨乳なのだ、安物の薄い事務服がブラを透けさせ、その巨乳を返って目立たせるのだ。ブラが透けても、分かりにくいように本人は考えて、白を選んでいるのだろうが、それすらも返って男の注意を引く結果になる。
 結果として、上司のセクハラにあったりするのだが、それを遠目で楽しそうに眺める誠人とセクハラ上司の邪魔をするのが、その向かいに座る石崎である。イズミと同い年なのに、すでに係長に昇進している。
 その強い正義感に比例して責任感もあり仕事もできる。セクハラ上司にたてついたりしながらも営業成績トップなので、上司も強くいえない。女子社員の羨望の的で、でも本人はいたって真面目で、そんな石崎が好きなのがやはりイズミなのだ。
 絵に描いたような、お似合いの二人でむかつく。そのむかつきを夢で解消しようというのだ。
「へへへ、お前の目の前でイズミちゃんを嬲ってやるぞ」
 すーと、空中を浮きながら営業三課を飛ぶ。
「へへへへー」
 夢の中だと、気が大きくなる。イズミはと見ると
「石崎さん資料できました!」
 とかなんとかいいながら、甲斐甲斐しく石崎の手伝いをしている。最近、露骨にこういうことをやるようになった。石崎も上に一目を置かれている存在だし、その石崎がイズミを気に入ってるので、誰も何もいえないのだ。
「だが、そうはいかんざきー」
 ハイテンションになった、誠人は後ろからイズミの巨乳をにゅっと、もちあげる。
「おお、いい弾力」
 満面の笑みを浮かべる誠人。
「きゃ! なに!」
 後ろから、ぎゅっと誠人に抱きすくめられて驚くイズミちゃん。
「いっ井上さん、なにやってるんですぅーやめてぇ」
「やめろ井上!」
 さらに、上から覆いかぶさるように抱きつく誠人に、弱々しく抗うイズミちゃん。
 他の社員は無視なのに、石崎だけが気がついて声をあげるのは、もちろん誠人の好みに夢が合わせた結果だ。はっきり言ってしまうと、現実的に彼らは顔は覚えていても、部署が全然違うので井上誠人の名前すら知らないだろう。
 これは、あくまでも現実らしい夢なので、誠人の都合のいいような設定なのだ。
「ふぇっふぇっふぇ、ゆれる乳ー」
 さらに深々と、乳をわしづかみにする誠人。
「きゃーー」
 胸を押さえて、でも弱弱しい抵抗しかできない。
「や、やめろって井上! 大丈夫イズミちゃん!」
 そうやって、やめろやめろといいながら石崎は身動きが取れないのだ。
「へへへ、ざまみろ石崎。イズミちゃんの胸やわらかいぞ」
 そういいながら、事務服のシャツを破いてブラも引きちぎる。ペロンっと、イズミの爆乳が飛び出してくる。
「きゃーー、やめぇ」
「やめろ、なあ、やめろよ、井上ぇ!」
 腕を振り上げて怒る石崎。そういや、セクハラ上司も、こうやってる石崎の剣幕にビビってたなあ。でも、これは誠人の夢なのだ。誠人が支配しているのだから、怖くもなんともない。
「はは、本当はお前もさわりたいんだろー」
 そうやって、右乳の乳頭に吸い付きながら、左乳を嬲る。やはり巨乳はいい。やりがいがある。自分が飛べるから、体位も自由自在だ。
「やめろ、無理やりさわりたいわけないだろ。そんな酷いことするなぁ」
 石崎は、怒りを全力で顕わにしているが身動きできないのだ。
「やめてぇ……もう、やめてぇ」
 すでに、イズミの抗う声は、泣き声に変わっていた。想定の範囲内というか、あくまでも誠人のイメージするイズミちゃんなので、どんなに酷いことをしようが萎えることはない。
「あぁーー」
 イズミの悲鳴は、誠人の性欲を掻き立てるばかりなのだ。今度は、一気にストッキングとパンティーをちぎり取る。夢の世界では誠人は、すごい怪力でもあるのだ。
「ぶちこむよーイズミちゃん」
 あっというまに、イズミのオマンコに亀頭をあわせる誠人
「いやぁっやめ!」
 ぐっと、差し込む。
「やあぁあぁああ」
 悲鳴と共に、周りの事務室がはじけとび、いきなりシーンは遊園地に変わる。
「なぁ、なにこれぇー」
 イズミと、誠人は真っ裸になって接合しながらメリーゴーランドをぐるぐると回る。これがお気に入りの誠人のセックスのイメージなのだ。
 柵の向こうから、あいかわらず何か石崎が叫んでいるがもう関係ない。メリーゴーランドが音を立てながら、ぐるぐる回る振動でズッズっと気持ちよくピストンできる。
「いぁーいゃあ」
 そういいながらも、イズミはすでに濡れ濡れになっていて程よく快楽を感じているようだ。
「うあー、もう限界だ。イズミちゃん中でだすよ」
 そういいつつ、イズミの乳に楽しむように吸い付く誠人
「やめて! 外に! 今日は危な……」
「限界だ、いくよー」
 腰を全開に押し付ける
「いやぁーー」

 ドピュドピュドピュ!

 絶頂と同時に、メリーゴーランドは回転の速度を速め、そしてドクッドクッドクと流れ出していくほどに、回転が遅くなる。回転のスピードが、性感と一致するようになっている。
「いゃ……中でなんて……私、妊娠しちゃう」
 さらに、イズミが誠人の愉悦を高めるセリフを吐いているが。
「そうだなあ、今日はこのぐらいにしておくかな」
 そのまま二、三発やるときもあるのだが、少し疲れたこともあり、今日はこのぐらいにしておくことにした。
 全てを消してもいいのだが、そのまま泣いているイズミちゃんを抱きかかえて事務所まで戻る誠人。
 石崎がぷんぷんと怒りながら、待っていたので「慰めておいてよ」と渡す。
 こうやって、夢が続いてる限り後処理をするのも、都合のいいリアリティーを求める誠人の好みだ。

 さてと、性欲も満たしたしあとは空で求んで遊ぶか。すーーと浮き上がるイメージ。そのまま、世界の果てへと飛び去っていく。あとは夢に任せるのだ。ぐんぐんと、浮かび上がった誠人は宇宙空間を越えて、月にまで到達する。

 月の砂漠には、アポロの残骸と、アメリカの旗が立っている。宇宙には風がないはずなのに、旗がたなびいているのはやはり夢だからだろうか。さらに近づいてみると、旗の下に金髪の高校生ぐらいの美しい少女がいた。白人系と思える肌の白さだ。

 あれ……

 これまで、自分が望んだもの以外は見たことがなかったのだが。女の子は、ニヤリと笑うと手を振る。ちょっと、怖かったが近づいてみることにした。もし、あの女の子が追いかけてきたら、そっちのほうが怖いからだ。
 悪夢といっしょで、この世界は恐怖すればそれが増幅される。油断はできない。
「ごきげんよう」
 女の子はニマニマ笑いをやめ、こっちを安心させるように、ニッコリと微笑みかけてきた。ちゃんと日本語でしゃべるみたいだ。
「やあ……」
 誠人はあいまいな返答だ。
「君の――えっと君の名前は?」
「誠人だよ……井上誠人」
「私はアルジェ・ハイゼンベルグ。アルジェって呼んでもかまわない」
 そういうと親しげに笑いかけた。
「アルジェ……あの、ここぼくの夢なんだけど」
「単刀直入だね、まあこんなに鮮明な明晰夢は私もみたことがない。君は優秀だね。見た目によらずといったところかな。まあ私は、あなたみたいなタイプの日本人に縁があるようなのだが」
 そういって、夢の中でもガリオタメガネの誠人にアルジェは、やや呆れた笑いを浮かべた。
「話が読めないんだけど……君は、ぼくの夢の登場人物じゃないの」
「おあいにくさま、私は実在の人物だよ」
「それなら、何でぼくの夢に」
「私の専門は催眠の研究なんだけど、最近夢がもたらす精神エネルギー転換について研究しててね。ミハエル・クルードマンの夢の実在って説は知ってるかな」
 科学雑誌ネイチャーを愛読している理系の誠人は、自分も興味ある分野なのでかろうじて覚えていた。クルードマンは、たしかユングの集合的無意識説をさらに推し進め、量子力学のエネルギー転換理論の援用で、夢の精神波が現実に与える影響を……。
「わかったような、わかってないようなって顔だね。まあ、彼は説明がへたくそでわかりにくいからね。もう少しエレガントに論文を書けばいいのに」
「あああ、アルジェってあのアルジェ・ハイゼンベルグ!」
 そのネイチャーに最近登場した、謎の天才少女としてアルジェも載ってたことにいま気がついた。彼女は、クルードマンの妄想染みたという批判さえ受けた仮説を、実験で実証してみせたのだ。
 そんなのはどうでもよくて、アルジェが美少女だから覚えていたんだが。
「そうそう、やっぱ理系の子は話早くていい 」
「そのアルジェが、なぜぼくの夢に!」
 やれやれと、肩をすくめて手を広げるアルジェ。
「さっき、夢の実在の話をしたよね。もう理解したと思ったのに、しかたない全部説明してあげよう。ここは、私の夢であり、同時に君の夢でもある」
「ええー」
「どうやら、君のイメージではここから見える地球が君の精神世界で、月が集合的な精神世界への入り口になってるようだね」
 誠人は、もう唖然となっている。たしかに、クルードマンの説は理解したつもりだった。簡単にいうと、夢は現実で全ての人の夢は繋がってるという話だ。しかし、それはあくまで高次の概念上の話で、自分の夢にこんなドラスティックな現れ方をするとは考えもしなかった。
「つまり、君の夢と私の夢はこの月を通して繋がってるということ」
「そんな……」
「ここを中継して、君の精神世界へ行って君の頭をぐっちょぐちょにしてあげることもできる」
 そういって、アルジェは透き通った瞳で見つめてくる。
「そんな、信じられない!」
 ものすごい恐怖を感じた。心が繋がっているから、本気が伝わるのだ。
「ふふ――そんな可愛い顔しないでくれ。本当に君を気狂いにしてあげたくなる」
 そうやって、アルジェはほの暗く微笑む。
「か、勘弁してください」
 心の底から震えがきた。夢の万能感は続いて、誠人は空だって飛べるのに実は夢の世界は他者と繋がっていて、他の人から攻撃を受けることがあるだなんて。
「安心して、私は無駄なことはしないから。頭を狂わせるなんて、研究対象外だからね。でも、せっかくだから君を利用させてもらおうかな」
「な……そんなあ」
「無理やり脅してもいいんだけど、これは君の得にもなることだからできれば納得して協力してほしい」
「……内容によります」
「いい返事だね。それなりの強制力を持って世界全ての人の夢に呼びかけてみたのだが、呼びかけに応じたのは君だけだったよ」
 世界の夢に呼びかけるって、どれだけの精神力なのだろう。
「そういえば、誰かから呼ばれたような気がしましたね」
「他の人との夢との間を行き来できるのは、現時点では私と君だけみたいだよ。理論構築に人生賭けてるクルードマンですら、まだこの夢の精神の結合点に到達できるステージに来られない。君ほど、夢の精神が鍛えられてる人は珍しい」
「ありがとうございます」
 気のない感じで、誠人は返事した。
「私が褒めることなんて、そんなにないんだけど。まあいい、多少の訓練さえつめば、君も他人の夢が見えるようになる。そしたら、そこから精神を操ることもできる」
「精神を操る」
「そう、君が自分の夢の世界で何をしてるのか、ここから見たよ。もし、あの子の精神を操ったら現実でああいうことができる」
 オナニーを覗かれたに等しい。真っ赤になった誠人に、アルジェは笑う。
「失敗したら、気が狂っちゃうからきちんと訓練は受けてもらうけれど――どうだ、やってみたくはないかね」
「……やってみます」
「いい返事。夢はもっと可能性を秘めている。分子生物学の連中は、脳と遺伝子を解明したぐらいで『精神は肉体』なんて妄言を吐いているがとんでもない。精神エネルギーは物質をも支配するのだ。研究を続ければ精神だけじゃなくて、肉体的影響も与えることができるはずだし、きっといろいろ遊べるはずだよ」
「楽しそうですね」
 よく考えたら、誠人自体も明晰夢を研究して遊んでいたのだ。それが少し大掛かりになるだけだ。
「そう、研究は楽しい。君はいい返事をする」
 そういって、微笑むアルジェに誠人は微笑みを返してみた。そこで、気がついたので誠人はいってみた。
「あの、アルジェさん」
「なんだね、話がのってきたところだったのに」
「これが全部……その夢だったりはしませんか」
「君はまだ、ただの夢と、物質化した夢の区別もつかないのかね。もう、しょうがないな――ハサミよ!」
 そうやって、アルジェがいうと虚空からハサミを取り出した。そのハサミで、チョキンと自分の美しい金髪を一房切る。そして、それをそっと誠人の手に握らせた。強い存在感を放つアルジェの手は、思ったよりも小さくて暖かかった。
「これを、しっかりと持ってなさい。私も睡眠はこのぐらいにしとくから、今日の講義はここまでにしとく、目を覚ましなさい!」

 シュルルルルルルルッ

「うああああぁ」
 アルジェが目覚めろといった合図に、誠人の身体は急速な勢いで地球へと落下していく。 

 会社の自分の事務所めがけて一直線に。

「……あああうぅぅ」
 ばさっと、長椅子から立ち上がる。冷や汗をたっぷりとかいていた。あと、パンツが精液で濡れている。明晰夢のおかげで、夢精してしまったのだろう。このために、パンツの変えはちゃんと用意してあるから大丈夫と、思考してハッと気がついて右手を見ると、そこには

 明るい金髪が一房、握られていた。

 現実と夢の通路が、いまここにしっかりと繋がったのだ。


「エレベーターガール」後編
 そこには、陣痛に苦しみ、壁に手をついていままさに、子供を生み出そうとしている同僚の坂下真由がいた。
 臨月を迎えた妊婦が、エレベーターガールをしているという光景は、とても異様である。
 それでも、なんとかその違和感を少しでも払拭するために。飛び出たお腹が目立たないように。彼女の身体が少しでも楽なように。
 マタニティー用に特別にデザインされた、淡いピンクが基調のやさしい色彩のゆったりとデザインされた特注の制服が用意されていたはずだ。
 それを特別扱いなどと言う同僚は誰もいなかった、福利厚生がいいことは望ましいことだし。私にとって一年先輩の坂下真由は、少しおっとりとしすぎているけど、明るくて誰隔てなく優しい性格で、みんなに愛されていたからだ。
 その彼女のために作られたはずの制服は、剥ぎ取られて素っ裸にされていた。
 出産するなら、仕方がないのか。それにしたって、何で、今この場所で!

「あああぁ……」
 思わず、驚きの声をあげてしまった私の視線に気がついて、真由も私を見返した。
 その目は怖いほどにうつろだった。笑っているような、泣いているような、全てを諦めてしまった人間のもの悲しい表情。
 坂下真由は、先輩のはずなのに私より年下に見えるような、ちょっと抜けてる感じの天然で、それでも優しくて可愛らしい女の子だった。
 私がこのセクションに配属になったとき、なれない仕事で小さいミスをしてチーフに怒られていたときも、彼女が私のミスで迷惑をかけられたはずなのに。
 何も言わずに終わるまで横にずっと立っていてくれて、申し訳ない気持ちで見返すと、こっちがほっとするような笑みを浮かべてくれる、そんな素敵な女性だったのだ。
 誰がこれほど、彼女の笑顔を、優しさを、幸せを、ここまで致命的に破壊してしまったのか。私は、胸の奥底から湧き上がるような熱い怒りを感じた。
 だって、ただ陣痛の苦痛に耐えているだけの悲痛な息は、泣きはらして、その涙も乾いてしまったような目は、とてもこれから新しい命を生み出す母親の顔ではなかった。
 これでは、まるで……!

「おや、ゆかりちゃんか。ちょっと早く来過ぎたみたいだね」
 そう、声をかけてぬっと、あのオニギリ頭の男性客が私の前に現れたのだった。
「あのこれって!」
「ああ、ちょっと静かにしててね。ほら、こういうことだから」
 男は、そういうと指をさした。よく見ると彼女の周りにはカメラが設置されている。
「ああぁぁ……それじゃあこれは、まさか!」
「そう今まさに『エレベーターガール坂下真由二十四歳 あたし箱の中で孕んで、破水して、出産しちゃう、悪い娘です!』の撮影が行われているのだよ」
 信じられないことだった。
 相変わらず、趣味の悪い長ったらしいタイトル。
 つまりAVの撮影だったのだ。

 私はそのようなことをこの男性客から言われたことがあったが、今のこの瞬間まで女性が妊娠するところのAVなどが存在するなどということは信じられなかった。
 命の誕生を記録するドキュメンタリーというのなら分かる。
 こうして、目の前にしてすら信じられないけれど……。
 しかし、男性客の目は好奇の目だった。口はいやらしく涎を垂らさんばかりだった。
 女性の大事な出産を、こういう最低な、いやらしい、悪魔的な鑑賞物として!
「あなたは……あなたは……最低の……最低の屑です!」
 私だって、私だって人に言えないような酷いことをたくさんされてきた。
 それでも、他人の立場に置き換えて、初めてどれほどここで酷いことが行われているのかと身にしみて理解できた。
 これは、震えるほどの怒りだ!
「ゆかりちゃん、興奮するのはいいけど。とりあえず消毒して、そこの白衣でも来てくれないかな。ここは病院の分娩室と一緒なんだよ。雑菌が振りまかれるのは不味い」

「……何で、私がたしなめられるみたいになってんの!」
 それでも、女性としては最もなことだと思ってしまったので、慌てて身体を殺菌消毒して綺麗な白衣を身にまとう。
「うん……この格好なら中に入ってもいいよ。カメラに写ったとしても白衣なら違和感がないからね。でも行動には気をつけてね。音声は編集できるけど、映像は編集できないから」
 私は怒りで爆発しそうになっているけど、もう真由ちゃんの出産は始まってしまっている。
 もういまさらどうしようもないのだ。
 エレベーターの箱の中に入ると、白衣を着た壮年の男性と、年配の女性がいた。
 なるべくカメラの邪魔にはならないようにはしているが、産婦人科医と産婆さんを付き添わせているそうだ。
 お湯もたっぷりと沸かしてあり、緊急時に備えて各種医療器具も備え付けられてはいる。ちょっとだけ安心した。
 でも……それでも。
 私は、中に入ってしまったことを後悔した。
 これなら、何も見ないほうがよかった。三十分どころか、遅刻して全てが片付いたあとに、交代に行けばよかったのに。
 このときの私は何を考えていたんだろう。

 私は、何も思わず誘われるように真由の裸体を見てしまったのだ。
 真由は、おっとりとした性格にふさわしいように容姿もゆったりとしている。
 ぽっちゃりしているというまではいかないが、肉付きが女性らしい洋ナシ形の体型といえばいいのだろうか。
 私ほど極端ではないけど、ゆったりとした厚みのある胸に、柔らかそうなお腹。そして、とても大きいお尻。
 妊娠するまでは、美幸チーフのようなスタイリッシュな体型とは逆の意味で、それはそれで女性としてあこがれる体型だと思っていた。
 もちろん、妊娠してからだって、ピンクのマタニティーはよく似合っていたし、こんなお母さんだったら最高だなと思っていたのだ。
 ゆったりとした胸だったはずの真由のおっぱいが、今の私の胸ぐらいに肥大したおっぱいが無理やりに、天に向かって吊り上げられており、おっぱいには青筋が走っている。大きく広がった乳輪は黒々としている。
 そして、さらに色を黒くした乳頭は、私の親指ぐらい巨大に赤黒く肥大しており、紐につながって……天井にと引っ張りあげられている。

 天井に引っ張りあげられているですって?

 一瞬、私は理解できなかった。

 乳頭の先に、穴があけられてピアスが突き刺さっているのだ。
 ピアスに紐がくくり付けられて、その紐は天井に、くくり付けられている。
 そのようにして、真由の大きな胸は天井へと無理やり引っ張りあげられる構造になっているのだ。そうして、真由が少しでも壁に着いた手や足を緩めると、ピンっと乳頭がピアスの紐でキリキリと引っ張り上げられて、その刺激で肥大化した乳頭ピアスの先から母乳が滲むように噴出す。
 そのたびに、真由は動物のような悲鳴を上げる。

 これが真由が立ったままの出産を強いられている悪魔的な仕掛けなのだ。

「なんで……なんでこんな拷問を……」
 私は、もうそれを見ただけで嗚咽して吐きそうになっていた。
 手で口を押さえて、何とか吐き気を押さえ込む、涙が滲む。
 でもほんとにつらいのは真由なのだ。
「うぅーうぅーはぁーはぁーふぅーふぅー」
 真由は口を半開きにして涎をたらし、陣痛と苦しげに息をつくだけだ。足を一杯に広げて、股からは子供の頭がすでに出だしているのだ。
 もう何もかもが間に合わない。
 どうして私はもっと早くきて、助けてあげられなかったのか。
 そんな無理なことを思う。

 大きなお腹には、妊娠線が走り、それをキャンパスに見立てたのか、あの男性客の汚らしい字でも、しっかりと分かるようにでかでかと書かれていた。

 『公衆便所』 
  『孕み済』

 これは、なんという陵辱だろう。人を侮辱するにもほどがある。
 ただの油性マジックだ……きっと、消せば落ちるよね。
 ピアスの穴だって、取ればきっと治るから。
 元の真由に戻れるから。

 今まさに、真由の股から子供が出るところまで私は見てしまった。
 見てはいけなかった。あれはなんだ……。

 普通は隠れているはずのクリトリスが肥大化してむき出しになっていた。
 これはもう、さっきの乳頭よりも大きい。
 小さい子供のおちんちんぐらいの大きさに赤く腫れ上がっている。
 子供を産みながら、それは勃起してビクンビクンと屹立していた。

 はっと気がついて、私は顔を上げた。
 真由とまた目があった。苦しみの息を吐きながら、彼女は笑うように口をゆがめた。

 私は真由を見て、男性客のやった行為に怒り、泣き、そして嗚咽する。

 でも、真由はそんな自由すらない。
 人は本当に辛いとき、苦しいとき、怒ることも泣くこともできずに、笑うのだ。
 そして、そんな酷い顔を、そんな惨めな姿を、真由は同僚である私に見られたかったわけがない。
 私は……私は!

 これでは真由は、さらしものだ。ごめん、真由……見ちゃってごめん……。

 もうどうすることも出来ずに、私はエレベーターの外に出ていった。
 目の前は真っ暗だった。

 そして、その瞬間に私は気がついた。

 怒りなど吹き飛んでしまうほどの悲しみに襲われた。

 私のお腹の中にもあの男の子供がいる。

 これと同じことを きっとわたしも やらされるのだと気がついた。

 私がフロアの影で一人嗚咽している間に。撮影は終わったみたいだった。
 あんな拷問のような出産をさせられて、倒れ臥した真由ちゃんは自分の赤ちゃんを抱かされたベットのうえで。
 もう気力も体力も尽きているだろうに、カメラとマイクを突きつけられて苦しい息を吐きながら。
「私の中に射精して、孕ませていただいて、産ませていただいて、ありがとうございます」
 何度も何度も、そんな台詞を言わされ続けていた。
 きっと事前に刷り込まれた台本なのだろう、壊れた機械のようだった。
「子供を産めて、おっぱいも出せて、女として最高の幸せです、いただいた命をこれから大事に育てていきます……」
 かすれた声で、最後に聞こえたのはそんな台詞だった。消え行く真由ちゃんの声とは対照的に生まれてきた赤ん坊の泣き声は大きくなっていく。
 そして、産婆さんと医師にタンカで担がれて、子供と一緒にたぶん病院に運ばれていくであろう真由ちゃんを見送った。
 彼女は、もうこれでこの悪夢から解放されるのだろうか。

 そして、私はいつ解放されるのだろうか。

 また清掃の人がきて、先ほどのことが嘘だったみたいに、ピカピカに磨き上げられたエレベーターに乗って、私はいらっしゃいませを繰り返しながら、そんなことばかり考えていた。

……エレベーター 三ヵ月後

 私はこの頃、お腹も少し出て悪阻が酷くなっていた。
 妊娠初期でのセックスは、流産の危険がある。
 そう吹き込んでやったら、男性客は私を犯さなくなった。
 妊娠初期のセックスは流産の可能性をほんの少し高めるだけで、ほとんど嘘だ。
 よっぽど酷いことをしないかぎり流産なんてするわけがない。
 本当に流産するんなら、それこそ言わずにどんどんさせていた。
 ただ、少しでもあの忌々しい男性客に犯されたくなかっただけのこと。
 それも、安定期に入るまでの短い時間なのだろうけど。

 私の膣を使わなくなってから、男性客が私を抱く頻度が下がったかというと、残念なことにそんなことはなかった。
 こんどは、アナルに執着するようになっていたのだ。
 毎日のアナルオナニーに加えて男性客がアナルばかり開発するもので、私のお尻の穴はだらしなく拡張されて、男性のものをくわえ込むようになっていた。
 不思議なもので、感じ始めるとお尻の穴もなにか自然に潤滑油のようなものを出して、粘膜が傷つかないようにするのだ。
「アナルでも感じるようになってきたじゃないか」
「ああぁ!」
 本当に遺憾なことに、私はお尻の穴でも感じるようになってはいた。
 ある意味において、膣よりも敏感に感じ取ることが出来るそこは、男性客のものが限界を迎えつつ、ビクビクと震えているのを感じた。
 ああ、またお尻の中に出される。

 ドピュドピュドピュドピュ!

 ピュルピュルと、濃い精液が私の直腸に入ってくる。
「ああ……またお尻のなかに」
 これをやられると、絶対あとで下痢をするのだ。
 私が嫌そうな顔をしているのを見ると男性客はペチリとお尻を叩いて。
 その瞬間に、ジョワーと私の中に大量の液体が流れ込んできた。
「ああぁあ……」
「お前、公衆便所としての自覚が足りないんじゃないのか」
 男性客は、私のお尻の中でおしっこをしたのだ。余りにも酷い扱い。
「ううっ……だって下痢するから」
 ずぼっと、お尻の穴から引き抜くと、精液と一緒に男性客のおしっこまでもが噴出してくる。お腹は当然ぎゅるぎゅると鳴る。
 私は、少し大きくなったお腹を押さえた。
「ほー下痢するから、中で出されるのが嫌なのか」
 そういうと、男性客は何かを思いついたようだった。
 その日は、これで解放されたのだが。

 アナルセックスをするようになってから、する前に男性客はウエットティッシュや脱脂綿などで、私の肛門の中を殺菌消毒するようになっていた。
 彼は、お尻の穴にも生で入れたいために、必ずそうするのだ。
 私の身体の心配はしてくれないくせに、自分のこととなると神経質ぐらいにする。
 こういうところで、この男性客の自分勝手なところがよく分かる。
「ありゃ、今日もお尻は綺麗なんだね」
 万が一にも、黄色いものなどがついてしまわないように、執拗なぐらいにお尻の穴は磨き上げている。
 もちろん、男性客のためにではなくて少しでも自分が恥ずかしい思いをしなくていいように。
 私たち二人は、身体を重ね合わせて子供まで作ってしまってからも、こういう関係性なのだ。私が出来る抵抗というのは、せめてこれぐらいなのだから。

 私のお尻の穴が綺麗であれば、それで男性客には都合がいいはずなのに、私の肛門が綺麗なのを確認すると、彼はいつもなんとなくつまらなそうな顔をする。
 今日もそんな子供がおもちゃを取り上げられたみたいな酷い顔だったが、何かいいことを思い出したように笑顔になった。
 またあの口が裂けたような悪魔的な笑顔。ああいう顔をするときは、ろくなことがない。
 危険なサインを感じ取って私は身構えた。
「今日はいいものを持ってきたんだ」
 そういって、男性客は汚らしい袋からイチジク浣腸をたくさん取り出してきた。
「まさか……」
「そ、そのまさかだよ」
 私はあえて、下着の下だけ脱いで肛門から大量の浣腸液を注ぎ込まれる。
「そういう趣味もあったんですか、あいかわらず最低ですね」
「客にそういう態度はどうかと思うが。褒め言葉と、受け取っておくよ」
 すぐに、私はお腹を押さえ込んでしゃがみこんでしまう。
 ギュルギュルギュルと私のお腹は破滅的な音を立てて痛む。
「うううっ……嫌だあぁ、お手洗いに行かせてください」
「もってきたよ」
 そういうと、男性客は赤ちゃんが使うようなアヒル形のオマルを差し出した。
 どこまでも、馬鹿にしている。
「そんなとこに、できません!」
「大人しく、俺の前で排便しとけばいいのに、お前にはやっぱり教育が必要なようだな」 男は、冷酷な顔でそういった。
「ううっ……お願いだから、お手洗いに」
 お腹からこみ上げてくる切迫感は、すでに限界のギリギリのラインだ。
 このまま、男性客のいうなりに、こんなところで排便するのかと思うと、私は涙が出てきた。
「俺の前でしたくないみたいだから、今日はもういいよ。俺は別のエレベーターで、やってくるから。今日は解放してやるから、仕事がんばりなよ」
 そういって、男性は緊急停止ボタンを解除して普通に出て行った。
 それを合図に、お客さんが大量にゾロゾロと入ってくる。
 これは……ちょっと待って。
 私はとにかく立ち上がったが、余りの腹痛に声が出ない。
 それでも、客を満載したエレベーターは自然に動き始める。下に向かって。
「うああぁぁ……」
 もうどうしようもない激痛、私の下にはオマルが置かれている。
 私、本当に、こんなところで……!

 この絶体絶命のピンチに、私は思い出した。
 そういえば美幸チーフに、本当の緊急時には押せって教えられていたボタンがあった。
 私は藁にもすがる思いで、ボタンを押す。
(何も起こらない、やっぱりだめなの?)
 そう思った数分後、突然エレベーターが止まった。
「すいませんお客様方、どうもこのエレベーターに誤作動があったようですので、点検作業をいたします。隣のエレベーターを止めてありますので、そちらにお移りください」
 美幸チーフは、テキパキと人払いをしてくれた。
 私ひとり残して、エレベーターの扉は閉じた。
 その瞬間に緊急停止ボタンを押す。
「もう……限界ぃ……」
 パンツを剥ぎ取る暇ももどかしく、エレベーターの端っこでオマルに座り込んで、一人腸の中に溜まったものを全て吐き出した。

 ブリブリブリブリブリ!

 そんな音が響き渡った、いつもトイレは消音するので自分の排便する音を聞いたのは久しぶりだった。
 すぐさま、下痢特有のあの嫌な匂いが立ち込める。
 もう情けなさで涙なんて出ないと思っていたのに、やっぱり泣いた。
 どうやってこのエレベーターから出ればいいんだろう……そうやって途方にくれていると美幸チーフから無線があった。
「すぐ、地下三階にエレベーターを回しなさい」
 地下三階で扉が開くと、美幸チーフが待っていた。
 扉が開いた瞬間、私の排便の匂いが伝わったはずだ。それでもチーフは冷静な顔を崩さなかったし、何も言わなかった。
「あの……チーフ……」
 泣いている私の事情を察してくれたのだろうか。
「非常階段から休憩室にあがって、シャワー浴びていいわよ。安心して、ここは私が一人で清掃しておくから」
 ちゃんと清掃係はいるのだ。そっちに任さずに、チーフ自らが清掃して痕跡も消してくれたことに、私は一生感謝している。

……再び地下三階 五ヶ月

 そして、そんな美幸チーフもギリギリまで抵抗していたマタニティー制服を着る羽目になったころから、気張っていた糸が切れてしまったのだろう。
 セクションの管理や指示に、精彩をかくようになり。一時的にということで事務長が、代わりに仕事を引き受けるようになった。
 さすがに事務長も優秀で、シフトの管理は完璧にこなしていたけれど、個々の職員への細やかな精神的なケアまでは手が回らなかった。
 いや、普通そこまでの管理はできないものなのだろう。美幸チーフが管理をしなくなってから、私たちはどれほど美幸チーフが優秀だったかを改めて知ったのだった。
 そのチーフは、自分の仕事も休みがちになっていった。あたりまえだ、もう妊娠後期に差し掛かっているのだ。
 普通なら仕事なんかしないだろう。
 あの男性客だ。きっと、あの男性客がギリギリまでの勤務を強制しているに違いない。日に日に沈んでいく美幸チーフの様子を見ながら、私は口惜しい気持ちでいっぱいだった。

 それと対照的に、明るさを増していったのが坂下真由だろう。
 あの悲惨な出産劇のあと、きっちり二ヵ月後に職場復帰してきたとき。
 身体もスリムに戻って、様子も前と変わらないぐらい元気だった。
 私はあのときの悲惨な様子を思い出して、思わず目をそむけてしまったが、逆に気を使われてしまったぐらいだ。
 子供は元気な男の子で、産後の経過も順調だそうだ。
 福利厚生がしっかりしているこのデパートには、職員の託児室もあるので、その点ではまったく問題はない。
 休憩がこまめにあるエレベーターガールの仕事が、逆に赤ちゃんにおっぱいを与えるのに便利だというのは、本当に皮肉な話だ。

 私たち以外にも、エレベーターガールは軒並みあの男性客の被害を受けて、職員に妊婦さんが多いデパートというおかしな場所になってしまったが、一部好奇の目を向ける客も来る中で、なぜかマスコミやネットの口コミの話題などには広がらなかった。
 もっとも、私も出演してしまった忌まわしいAVのシリーズは、裏ルートでかなり好評の売れ行きを見せているのだと男性客に自慢されたが。
 目の届かない場所でやってくれる限りにおいては、私たちも破滅は避けられるわけで、心安らかでいられるというものだった。

「それにしても、あの時見た真由ちゃんの……」
 わからない、お腹の文字なんて消してしまえば問題ないし、乳頭ピアスだって閉じてしまえばもう回復しているのかもしれない。
 それでも、あの拡張されたクリトリスはどうなったのだろう。
 そして、彼女はもう、あの男性客には襲われてはいないのだろうか。
 それは、私の未来にとっても関係する重要な問題だ。
 いろいろ考えているうちに、私はつい休憩室から非常階段を下りて、思い出深い地下三階に来てしまった。
 別に私は職員だから来てはいけないという場所ではないのだが、普通に近づくべきではない場所である。
 でも今日は、休憩室で同僚と煮え切らない話をしているより、一人で考えたい気分だった。
 非常階段の扉からフロアに入ってすぐ、人の話し声が聞こえてきた。
 その瞬間に分かった、私は引き返すべきだと。

 それなのに、気がつかれないようにこっそりとエレベーターのある場所に、近づいていったのは、私がそのとき精神状態が不安定になっていたからだったのだろう。それでも、いいわけにはならないかもしれないが。
 案の定、エレベーターは地下三階に止まっていた。エレベーターの中は、煌々と明るく通路の影からでも、簡単に中が見えてしまう。静かな地下では、声も響いてしまう。
「あれは、美幸チーフ……」
 あの男性客に、抱かれて嬌声をあげているのは、今日は体調不良で休んでいるはずの美幸チーフだった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 あのプライドの高い美幸チーフが、素っ裸に剥かれてあの男にガンガンと腰を突かれながら謝り続けている。
 毅然とした彼女のイメージが、私の中で音を立てるように崩れ落ちた。
 見てはいけない。そう思う……そう思うけど。
「まったく、乳もねー尻もねー、お前はロリータちゃんかって話だよ。年増女のくせによぉー」
 あの男性客はそういいながら、パチンパチン尻を叩いて腰を打ち付けている。
「ごめんなさいごめんなさい……」
 美幸チーフは、綺麗な顔をクチャクシャにして、泣いている。
「俺は謝れなんていってねーだろ、もっと乳を大きくしろっていってんだよ」
「そんな……牛乳も飲んでるし、チキンも食べてるし、言われたこと全部やってます」
「やってて、これなのかよ」
「ひぎぃ!」
 そういうと、男性客は強くしごるように美幸チーフのおっぱいを握り締めた。その瞬間に乳頭の先から、母乳がほとばしる。
 ああ、美幸チーフはあんなにも、おっぱい出るようになってしまったんだ。
 私は、見てはいけないと思うと余計に、これまで憧れてきた美幸チーフの裸体を見てしまう。
 やせてスレンダーな身体だった身体は、妊娠によって見るも無残にお腹がぽっこりと突き出てしまっている。それが無残で、私は息を呑む。
 胸は前よりも若干厚みをましたように見える。乳輪は小さく、妊娠のせいか黒々としている。だからこそ、肥大化した乳頭は黒光りして、ピンと勃起しているのが強調されているように見える。
 男性客が、両手で強く掴むように、胸を根元からしごくたびに、その乳頭から乳をほとばしらせるのだ。
「ああっ……痛いぃ!」
「くそ、マンコを強く閉めすぎだ……出ちまう!」
 腰を掴んでガクガクと何度か振ると、覆いかぶさるようにして身体を痙攣させる男性客。どうやら中で射精してしまったようだ。
「ああっ……また中に」
「畜生、何が中にだ。また無駄に射精しちまった。お前は、あれかマゾか何かかよ。虐められるとよく膣を締めますってか」
「私そんな……」
「お前は、最初に俺のこと見たとき見下してただろ」
「そんなこと」
「高慢そうな顔してるもんな……それがとんだマゾ女だと知ったらお前の部下たちはがっかりするだろうな」
「そんなことありません」
「いっちょまえに、母乳だけ出しやがって……何だこのすっぱい母乳は」
「ああ、吸わないで」
 そういって、舐めるようにして乳頭に噛み付き吸い上げる男性客。
「お前、おっぱいは何カップになったんだ」
「Bです……」
「あのな、お前の部下はみんな二カップは大きくして甘い母乳だして、AVの売り上げにも貢献してるんだよ。何でお前だけ、Bカップなんだよ。せっかくこうやって揉んでやってんのに、お前だけ!」
「ひぐぃ」
 そうやって、男性客は罵りながらまたおっぱいを鷲づかみにしている。
「いいか、お前の部下はみんな優秀なんだよ。AVのシリーズでも平均五万本は売り上げてるし、あの芹川ゆかりなんて、三十万部も売り上げて、この狭いアングラAVの業界でも空前のヒットって言われてるんだ。ファンサイトも出来てるし、未収録の元動画をアングラオークションにかけたら百五十万の値がついたんだぞ」
 そんなことになってるんだ……私は、気になってさっと調べても外に漏れてないと思ってたのに、愕然とする。
「お前のAVは何本売れたと思ってるんだ」
「そんなのわかりません」
「八千本だよ、ありえねえだろ、たった八千本!」
「そんなあ……」
「初期ロット一万本で売ってるのに、二千本も売れ残って増版かかってないのお前だけなんだよ。二千本全部自腹で買い取るか、二千万払えんのかよ!」
「そんなこといわれたって……ううっ」
「何が悪いと思うんだ、自分でどうして売れないと思うんだ。言ってみろよ」
「……胸がないから」
「わかってんじゃねーか!」
 そういって、男は乳を弄るのに飽きたのかパチンパチンと尻を叩く。もう、美幸チーフのお尻は真っ赤になっている。
「腹ばっか大きくなりやばって、このピザ女が」
「お腹は……お腹はやめて!」
 腹に手を伸ばそうとする男性客の手を払って、自分のお腹を庇う美幸チーフ。当たり前だ。
「俺は、乳を大きくしろって言ってんだろ。そしたら残ったAVも売れるようになるからな」
「そんなの……そんなの無理です」
 お腹を庇うように、泣きながら身を伏せて訴える美幸チーフ。
 ため息をついて、男性客はそれを見下ろした。
「お前、野球チーム作るしかないな」
「え……」
 いきなり、わけの分からないことをいわれて当惑しているようだ。
「あのな、エレベーターガールは毎年新しく入ってくるし、一人につき一回の妊娠で許してやろうと思ってたんだよ、優しい俺様は」
「はい……はい、ありがとうございます」
 それを聞いて、彼女はとてもほっとした様子だった。
 そうなんだと、私もほっとする。自分が今妊娠させられて、酷い産まされ方をされるのも心配だけど、もっと心配なのは先のことだ。この地獄が永遠と続くなら、そう思うともう目の前が真っ暗になってしまう。
 実際に出産を終えて、帰ってきている真由の行く末が気になったのも、半ばそういう理由からだ。
 これから入ってくる新人たちがやられてしまうのは可哀想でしかたがないけれど、やはりわが身が一番大事になってしまうのは人間だからしかたがない。

「だけど、お前は別だ」
「え……」
 ほっとした美幸チーフの顔に、さっと影が走る。

「野球は何人でやるか知ってるか?」
「え……十一人かな」
 また、野球の話?
 いったい何のつもりなんだろう。
「ばーか、お前どんだけ子供生むつもりだよ。十一人はサッカーだ、野球は九人だよ。お前、今年で何歳だ」
「二十八歳です」
「はあ……婆だな!」
「ひぃ」
「お前いまから、一年ごとに子供生んで、九人で何歳になるんだ」
「……三十五歳?」
「高齢出産だが、まあいけなくもないな」
「そんな、それって、いったい、どういう意味なんですか!?」
「だから、お前だけは何度も何度も妊娠させて、産んだ子供で野球チームが結成できるぐらい産ませてやるっていってんだよ」
「いっ……いやぁーーー!」
 魂からの絶叫だった、あんな絶望的な顔をした美幸チーフを見たことがない。私も見ているだけで、心が凍った。

「お前のおっぱいが小さいのがいけねーんじゃねーか。こっちは善意でやってんだろ、妊娠一回で二カップ大きくなったとして、ああお前は出来損ないだから一カップしか大きくなんねーんだな」
「ごめんなさい……だけど、それだけは勘弁してください」
「順調にいけば、BCDEFGHIJカップじゃねえか。いいぞグラビアアイドル並みだ、三十五歳の婆になってようやくだがな」
「いやぁ……お願い、それだけは、それだけはぁ」
「こっちだって、婆けていくお前なんか犯したくないんだよ。しょうがねーだろ乳が大きくならないんだから」
「いやぁ……嘘、嘘でしょ」
「ほれ、もう一回やるから股開け、お前はオマンコも小さいから、そんなんじゃ九人も子供を産めないぞ」
「いやぁ……いやぁああ」

 美幸チーフの絶叫が響き渡った。
 私は、もう見てられないし、見るべきでもないと思ってそっと地下三階を後にしたのだった。
 私は、美幸チーフを助けるべきだっただろうか。
 確かに、彼女に救われたことがある。お返しはすべきだったのかもしれない。でも、飛び出して私に何が出来るっていうの。
 私が出て行ったせいで余計に酷い目に合わせてしまった、坂下真由の件があって、それが私にストップをかけたのだった。
 私に見られたことを知れば、美幸チーフをさらに惨めにさせるだけ。

 美幸チーフの深い絶望の表情だけが、いつまでもいつまでも、私の心に深く食い込んで、さらに私の気持ちを暗澹とさせるのだった。
 いったい、いつまでこんなことが続くのかと。

…………九ヶ月

「んっ……んふ……ん」
 デパートの殺風景な地下三階に、設置された広々としたベットルーム。
 暗くて静かな世界で、自分の吐息と男の息遣いだけが響く。
 同僚と話していると、男性客があいかわらず酷い仕打ちをしているという噂を聞く。
 私もそうだった、酷いことばかりされていた。
 はずだったのだが。

 最近、妙に男性客は私に対して優しいのだ。
 弄るでもなく、罵るでもなく。
 まるで恋人を抱くかのように、その手つきはやさしげで。
 私のすでに大きくなったお腹を庇うように、やさしく抱いてくれる。
 この人も、人の親としての自覚が出てきたのか。
 少しは、私に人間としての情を感じてきたのか。
 男性客の化け物じみた醜悪な表情を見ていると、そんなことは信じられない。
 信じられないのだが。

 半年以上にもわたって、ことあるごとに抱かれているこの身はもはや。
 男性客の執拗ともいえる、愛撫を受け入れざる得なくなっている。
 かつては一通りの性技も経験して、酷いことも気持ちがよいことも、やられほうだいやられたあとも。
 こうして、飽きずに私を抱き続けるというのは一つの誠意なのかもしれない。
 お互いに汗だらけになってセックスに没頭する。
 股を突かれながら、腰をまさぐられながら。
 粘膜同士の絡み合いを通して伝わる気持ちというものがある。
 これは『愛情』ではない……『情』でもない……なんだろうこれは『やさしさ』
 いや、もしかするとこれは『いくばくかの後ろめたさ』ではないか。
 なぜか、そんな言葉を想起する。

 もはやそこに私をどうこうようというような技術はなく、ただ愛されるように愛されて、撫でられるように撫でられるだけだ。
 男はもう私の身体を蹂躙しない、私も犯されない。
 そこには、突くと突かれる側の了解というものがあって。
 男はもう、何も言わずに我慢せずに私の中に射精する。
 その暖かい飛まつを、私はただ荒い息で受け止めるだけだった。

 手馴れるとはそういうことで。
 もう私は、抵抗する気持ちすらなく気持ちよくなってよかった。
 どうせ、私はもう全てを失ってどうでもよくなった身体なのだ。
 先も、後も、考えることなくひたすらに。
 お互いに三度きっちり果てるまで、男性客は私を抱き続けていた。
 そんなことが日常の一部になる。
 何も考えなければ、割と居心地のいい生活がそこにはあった。

…………出産、十月十日

 一日の仕事を終えようとしたあたりで、産気づいた私は地下三階に運び込まれた。
 事前に何度も、説明されていたことだから驚きはしない。
 撮影の準備もされていて、ちゃんと医師もそこには待機されて私を待っていたのだから。
 もちろん、いまから産もうという子供の父親もそこにはいた。
「さあ……どんなことをするつもりなんですか」
 私はだから、産気づいて荒い息を隠して、できるだけ平然とした顔をして男性客にそう言葉をぶつけてやる。
 あんな酷いシーンをたくさん見せられたのだ、私だって覚悟はしている。
「どんなことって、ゆかりちゃんには普通に出産してもらうだけだよ」
「はぁ……」
 私は気が抜けて倒れそうになった。
「もちろん、撮影はするけど普通に産んでもらえばいいから」
「へ……ほんとに……」
「ほら、ベットに横になってもう破水始まってんでしょ」
 信じられないけど、信じるしかなかった。
 もう覚悟してきたのに、男が優しい言葉をかけてくるから気が抜けて腰が立たなくなってしまった。
 そうしてたら、気張った気持ちも抜けてお腹が痛い。
 あー、これ本当に張り裂けそうに痛い。
 教えられた呼吸法とか、何とか、総動員して、もう他の事にかまってる余裕なんてないから。

 こうして、後はもう必死で出産するしかなかった。
 想像以上に痛くて苦しかったが。
 無事終わってくれただけでも、神様に感謝すべきだろう。
 何事もなく、無事産めるなんて思っても見なかった。
 それが幸せで、何かしっぺ返しがありそうで、それが怖かった。
 その一方で、文字通り産みの苦しみを味わったのだから、これ以上のことなんてないと思っていたのだが、やはりまだまだ考え方が甘すぎたのだ。

…………そして、出産後

 私の出産は、とりあえず無事幕を閉じた。終わってみるとあっけないものだ。
 子供を産んで病院に運び込まれた後も、あの男性客はとてもやさしくて言い切れない不安を感じたので、私はこう駄目押しした。
「あの、これで私……解放されるんですよね」
「はい?」
「新しいエレベーターガールが次々入ってくるから、一人一回しか孕ませないって言ってましたよね」
「あれあれ……そんな話を誰に聞いたのかな」
 男性客は、なぜだかとても拙そうな顔をして笑っている。どうして?
「私、この娘を一生懸命育てます。母一人娘一人で立派に生きていきますから」
「いやいや……」
 男性客の要望どおりに答えてるはずなのに、どうして反応が悪いの。
「え? あ……あの私の中にドピュ!っと出していただいて、本当に孕ませていただいてありがとうございました。私はこの娘も産めたし、おっぱいもこうして一杯出るようになったし、女の喜びをいっぱい味わいましたので、もうたくさ……もう十分すぎるほど」
 だから、終わって……終わってよ。

 男が黙り込んだので、私も黙った。あの時、地下室で何度も何度も俺の子供を孕ませるぞと脅された美幸チーフのことを思い出す。
 あの悪夢、あの恐怖。ああ……。

「あのさあ……申し訳ないんだけどね」
「やっぱり、私はまたお客さんに犯されるんですね」
 悪夢は、終わらないのだ。もう私の人生は、終わってしまうのだ。
「……そうじゃなくてね」
「はい? 私はまた貴方に犯されて孕まされるんじゃないんですか」
「いや、そうじゃない。俺はもうやらないんだけどさ」
「じゃあ、私は……解放されるのよね」

 もう、私はこの男性客に犯されない。これはしっかりと聞いた、この人がいうのだから本当にそうなのだ。だったら、この沈黙はなに。ただ、私を不安がらせて弄んでるだけかも。
 沈黙を破った男性客によって、そんな望みは打ち砕かれた。
「ゆかりちゃんの作品大人気でさー、それでちょうどうちのレーベル一周年記念だったから、冗談というか、ノリというか、そんな感じで『芹川ゆかりを次に孕ませる権利!』なんてのをアングラオークションに出展しちゃったのね」
「えぇ……ええええ!」
「もちろん、もちろん冗談だよ。最低落札金額一千万円にしてさ。そしたら、誰も落札しないと思うじゃん」
「そ、そうですよね」
 自分が冗談でも売られてるなんて不愉快だが、いくらなんでも一千万円の価値が自分にあるとは思えない。
「それがさ、三千万円で落札した人がいたんだよね」
「えぇ……えええええ!」
「もちろん、冗談だからってすぐ断ろうと思ったんだよ。そしたら、その人が直接うちの事務所に訪ねてきてさあ」
「怖いヤクザ屋さんかなんかだったんですか」
 ヤクザに売られるとか、この男性客より怖いんですけど。
「いや、それが糖尿病と痛風を併発しているっていう頭禿げたおっさんでさ。四十八歳ニートっていうんだよ」
「はぁ……」
 私は、ほっとして拍子抜けした。ニートが三千万も出せるわけがない。きっと悪戯で落札しちゃったから、謝りに着たんだ。
「それがね、ポンと三千万持ってきたんだよ」
「えぇ……ええええええ!!」
「それが話を聞いたら、親の遺産を全部売っても足りなくて、消費者金融をハシゴして三千万きっちりかき集めてきたっていうんだよ。ポケットのなかのヨレヨレのお札まで綺麗に並べてきっちり三千万。そこまでやるかって話だよ、すごいよね、感動だよね……もう、その話を聞いたら俺は男泣きにないちゃってさ。どうぞ、ゆかりを何回でも孕ませてやってくださいって言っちゃった」
「えぇ……えええええええええええ!!!」

 私はどこか遠くに意識が飛びそうなった。
 駄目だ、現実逃避しちゃだめだ。このままだと無理やり話を固められてしまう。
 何回でも犯すってなんだ、そいつと結婚でもしろというのか。
 もう娘だって産まれているのだ。私は一人の身体じゃない、しっかりしないと。
「もう本当に感動した、娘を嫁に出す心境ってあんなのかなあ、そういうことだから」
「待って……ちょっと待ってください!」
「はい?」
 口答えされるとは思ってなかったのだろう、男性客は意表をつかれたような顔になった。
「私がいくら給料もらってるか知ってますか」
「いや……なにいきなり、そんなの知らないけど」
 いきなり質問されて、びっくりした顔をしている男性客。そうだ、いつもこういう感じで、男性客にはめられたんだから今度はこっちのペースに乗せるんだ。
「貴方は、私に娘を立派に一人で育てろといいましたよね」
「たしかに、いったねえ……」
「私のお給料では、子供を大事に育てるなら一人で精一杯ですよ。そんな何人も子供ができたら育てられません。話に聞いたら、そのニートの人も借金まみれみたいだし、どうですか無理でしょ」
「ふーん」
「だから、その話は断ってきてください」
「ゆかりちゃんは、一人目の子供しか育てるお金がないから二人目は無理だっていう、それでいいんだね」
「はい」
 このケチな男性客が、養育費とか出すわけない。私に一銭たりともお金をくれるわけないという確信があった。
 だからこそ、打って出られた賭けだ。
「じゃー、安心してニートの人と一緒になるといいよ」
「はい?」
 一人目の子供の養育費でも払うっていうの……この男性客が、ありえない。それは、ありえないはずよ。
「いやーよかった、どう切り出そうか迷ってたんだけど、実はゆかりちゃんの娘のほうもアングラオークションに出したら、やっぱり三千万で落札されちゃったんだよね」
「えぇ……」
「乳飲み子をすぐ放すのはかわいそうだから、まあ乳離れするまで育てたら、買ってくれた男性のところに引き渡すといいよ。それでお金の問題も万事解決するし、ちょっとゆかりちゃん、聞いてるの……」

 男性の声が遠くなり、私の意識は深い眠りの世界へと現実逃避を始めた。
 とても眠たい、ずっと眠っていたい。
 せめてもう少しだけ……どうせ目を開けたらまた新しい地獄の日々が始まるのだから。
「エレベーターガール」中篇
 あれは、浮浪者のような風体のあの男性客に、始めて犯されて、中で出された悲惨な日の二日後の出来事だった。
 大体、遭遇は一週間に一度だから、むしろ直後の勤務は大丈夫。
 そのときの私は、本当に馬鹿なことを考えていて、あれほどショックなことがあったのだから、しばらく休めばよかったのに、むしろ何かを吹っ切るようにシフトを、つめつめに入れていた。
 そして、一週間直前ぐらいで、ぐっと休みを取る予定にした。そうすれば、二週間ぐらい会わなくて済むかもしれない。本当は永遠に会いたくないのだが、これぐらいしか私には打つ手がなかったのだ。神様だって、酷いことばかりしないはずだ。
 自分を守る術すら持たない、ささやかな私の回避策は、上手くいくと思っていた。

 だから、二日後のまだ開店してすぐという時間なのに、オニギリの化け物みたいな男性客がにゅっと、顔を出したの見たときは営業スマイルもこわばり、腰がくだけそうになった。
 きっと、顔も青ざめていたに違いないのに。それに気がつかない振りで、男性客は声をかけてきた。
「よう、ゆかりちゃんお仕事がんばってる?」
「……今日は、美津屋百貨店にご来店くださいまして誠にありがとうございます。ご利用階数をお知らせください」
 営業スマイルすらできなかった。ちゃんと台詞が言えたのは訓練の賜物だろう。
 平日のまだ店が開いたばかりの時刻、ちょうど客がまだ来ていないのかそれとも男性客がいるからなのか、他に客はいない。
 箱のなかで、この危険な男と二人っきり。
 私は、もう覚悟した。酷い目にあうことを。
「そうだなあ、十階に行ってもらえるかな」
「へ……はい?」
「なにやってんのゆかりちゃん、十階だよ十階」
「はっ、はい十階、電気製品と雑貨のフロアです」
 エレベーターはスルスルとあがっていく。男性客と私二人を乗せて。そして、男性客は黙って降りていった。
 そうして、扉は閉まる……閉まってくれた!!

 今日は、私はついてる!
 ありえないと思いつつ、私は歓喜に包まれていた。あの男性客は信じられないことに、普通に買い物しに来ただけだったのだ。何を買うのかなんて、私の知ったことじゃない、貧乏そうだし、安物の電池でも買うのだろう。マンガンとか。
 そんなことはどうでもいい、あとは帰りに違うエレベーターに乗って帰ってくれればそれでいい。
 うちは、大きな百貨店だから、エレベーターは四基もある。
 確率は四分の一。たった25パーセント。
 そう、当たるものじゃないはずだ。

 理性では最悪の事態が避けられた、今日はついているから大丈夫だと思い込もうとしているのだが、私の女の勘はもうこの段階で警鐘を鳴らし始めていた。
 エレベーターは最上階まで上がり、そして下がる。客が一向に乗ってこないのだ。いくら平日といっても都心の大手デパートだ。こんなことはありえない。
 そうして、二回ほど上下したときに、ようやくお客さんが乗り込んできた。

 そう、思ったらあの男性客だった。
 すぐ気がつかなかったのは、電気コーナーの店員と一緒に入ってきたからだ。店員は、箱を三つも抱えている。
「ごめん、ちょっとエレベーター止めていて」
 そう年長の店員に言われたので、停止ボタンを押した。店員は、男性客にいろいろと説明しながら、脚立を取り出して設置し始めた。
 何かと思ったら、デジタルカメラだった。似たようなものを三台も設定した。
「いつもありがとうございます、基本的にはどれもボタン押すだけで録画できます。最新機種ですから、自動撮影ズームモードなんてのもありますよ。詳しいことは説明書に書いてありますが、あとからでもご説明させていただきます」
 そういって、きちんと組み立てて設定と設置を手早く終えると、電気コーナーの店員はペコペコと頭を下げながら退散した。
 あとは、立てられた三台のカメラと男性客と私だけが残った。なにこれ……。
「次は、家具売り場に行ってもらえるかな」
「はっ……はい、五階ですね。家具売り場がございます」
 いわれて、慌てて対応する。
 すぐに五階に着くと、何も言わずに男性は行ってしまった。
 ちょっと、カメラ立てっぱなしなんだけど……。

 どうしようと思ったが、私はとりあえずエレベーターを止めて待っていた。
 そしたら、男性客がすぐ来てくれて安心した。
「おー、言わないでもちゃんと止めて待っててくれたんだ。さすがに優秀なエレベーターガールだね。感心感心」
「このままで他のお客さん乗せるわけにいかないですし、あのこれいったい何のつもりなんですか……」
 私が事情を聞こうと思った矢先に、家具売り場の主任と、店員が二人がかりでやってきた。
 そして、なんとエレベーター内にベットを設置し始めたのだ。
 なにこれ……いったい何のつもりなの。
 定員二十五名の広めのエレベーターとはいえ、そのど真ん中にベットが設置されているというのはシュールな光景だ。
「おお、エレベーターの幅にぴったりじゃないか、これはすごい技術だ」
「最新型は、ここの伸縮アームに工夫がありまして、これはマットごと自動で伸縮するタイプですから、長さは自由に調整できますよ」
「すごいね、寝心地も申し分ないし、高い金だす価値はあるよ」
「お買い上げ、ありがとうございます。とりあえずここに設置させていただきましたが、どこかに移動するときは声をかけていただければ、どこでもお運びしますので」
 そういって、家具売り場の店員たちは去っていった。

「あの! これいったいなんなんですか説明してください」
 私は、もうわけがわからなくなってきた。
「わかった、とりあえず扉を閉めて適当なポイントで停止させてくれるかな、ゆっくりと説明するから」
 私は、指示に従うしかなくてそうした。
「ふう、これでよしと。とりあえず落ち着いたね」
「私は落ち着いてませんけど……あのそれでいったい」
「今日は、このエレベーターは貸しきる。君のセクションのチーフにはすでに話を取ってあるからね、君も今日は、ここで一日仕事になるから覚悟してね」
「そんな……」
「こんなに早く起きたの久しぶりだよ……眠い。時間はあるし、このまま少し寝ちゃおうかなあ。君はその間に、この台本を全て暗記しておいてね」
 そういって男に渡された汚らしい字で台本と殴り書きされたノートのタイトルにはこうあった。

『エレベーターガール芹川ゆかり、排卵日種付けセックス ~貴方の子供を孕ませて~』

「なにこれ……ちょっと寝ないでください!」
「もう……なんだよ、俺は君のために徹夜で台本書いてて睡眠が足りてないんだ」
「これ私の名前ですよね、事情がまったく読めないんですが、この本はいったい……」
「君は一度で指示を理解できない、本当に困った娘だよね。履歴書に東政大学卒業って書いてあったけど、名門大学出身なら、これぐらいはすぐ理解しろよ」
「すいません……でも、こんなのって」
 男性客が、ため息をついてベットから飛び下りると、三台のデジタルカメラの角度をベットに向けて、微妙に調節しながら説明を始めた。
「このカメラ一台いくらするか知ってるか?」
「え……その……十万円ぐらい?」
「三十万だよ、じゃあ君が腰掛けてるベットはいくらすると思う」
 ベットの相場なんてよく分からない。でも、すごく高そうなベットだから、私は少し考えてから答えた。
「……五十万ぐらい」
「百五十万だよ……自分のデパートの商品の値段ぐらい把握しとけ」
「すいません……」
 トイレがどこにあるか、どの売り場にどの商品があるかまではちゃんと頭に入っているが、まさか値段まで聞かれるとは思ってなかった。たしかに、そういうケースでもきちんと対応できるに越したことはない。
 これは男性客の指摘のほうが正しいと思った。
「まあ値段はどうでもいいんだよ」
「えー、そういう注意ではなかったんですか」
「そうじゃねえ、ここで大事なのは俺がこれを全部買ったってことだ。デジカメ三台に、ベットでしめて、二百四十万円だ。ゆかりちゃんよ、お前俺が金持ちに見えるか」
「正直なところ……見えないです」
「まあ、そうだよ。だが支払いはしなくてはならない」
「そうですね……」
「そこで俺は考えたんだよ、ものすげえAVを撮ったら、儲かるってな」
「AVってなんですか」
「アダルトビデオだよ、見たことあるだろ」
「ありませんよ!」
 見たことはないけど知っている、その女性のいやらしいところを撮影して売っている、その男性がそういうときに見るやつだ……。
「最近は、ビデオじゃなくてDVDだけどな。この業界は常に、新しいコンテンツが不足しているんだ。すげえヒット作を飛ばして、シリーズ化すれば、ものすげえ大金が手に入るって寸法よ」
 そんな、そんなのって……。
「もしかして、そのアダルトDVDに出演しろっていうんですか」
「おうよ、ようやく分かったか」
「嫌ですよ! そんなのネットとかで流失したら困っちゃいますよ」
 彼氏とか、友達とか、親に、万が一そんなものが見られたら、もうその瞬間に人生終了。多分その瞬間に、羞恥と罪悪感だけで死ねる自信がある。
「大丈夫だよ、通販だけの販売にするし、最近はタイトル数も多いから、そんなに分かるもんじゃないって。まあ、さすがに美津屋百貨店の名前は出せないが、現役エレベーターガールってのは、なかなかないからな。大ヒット間違いなしだよ」
「そんな……そんな……」
 私は絶望で目の前が真っ暗になった。
「もうカメラもベットも買っちゃったしな。やるしかないわけだ」
「そんなの、買わなければよかったじゃないですか!」
「だってカメラもベットも、新しいのが欲しかったんだもん」
「そんな理由で……私は」
「だから安心しろって。ちゃんと綺麗に撮れたら編集して一本贈ってやるからな、いい記念になるぞ」
「いらないですよ……」
「やっぱ、女は綺麗なうちに撮っとくべきだしな。ほら、最近記念にヌード撮るのも流行ってるジャン。あとから、子供に貴方はこうやって生まれてきたのよって、いい思い出映像になるんじゃないかな」
「考えうる最低の未来です……」
「素晴らしい未来を想像したら眠くなってきたな。三時間やるから台本を全部暗記して、頭のなかで何度も段取りをリハーサルしとけ。お前これは仕事だぞ、お金とってお客さんに見せるんだから完璧に台本覚えて、その通りにやれと厳命しておく」
「……はい」
 逆らえるわけもなかった。厳命とまでいわれては。
 男は、言うだけ言って私が理解したのを見届けると、高級ベットに寝転んで寝息をたて始めた。こんな密室の中で、高いびきがかけるなんて得な性格をしている。
 私はというと、あまりにも汚い文字と、それ以上に陰惨な内容の台本に、苦しめられながら、それでも完全に頭に叩き込むまで、読み続けなくては、ならなかったのである。

……アダルトビデオ撮影開始 三時間後

「ぐーぐー、…………げほげほ……はぁっくし!」
 急にいびきが止まったと思ったら、咳き込み、クシャミを併発させながらきっちり三時間後に起き上がった。
 なんて時間の正確さだろう、起きかたの最低さは置いておくとして。
「おはようございます、おめざめですか」
「おう、台本は読み込んだか」
 私としては、夜まで寝ていてほしかったのだが仕方がない。
「はい、全部暗記して段取りもリハーサルしました」
「ふん、ちゃんと言えばできるんだな」
 厳命されてしまっては仕方がない、私としてはもう辛い時間が一刻も早く終わることだけを祈りながら、心を殺すしかない。殺しきれないほど、心を揺さぶる酷い台本なのだ。まるで身体と一緒に心まで犯すような。
 こんなものを徹夜で書いたという、この男性客は悪魔だ。
「じゃあ、シーンのはじめからやりましょうか」
「ちょっとまて、俺は顔が割れないようにこれをかぶらないとな」
 そういって、パーティーグッツによくある変態的なピンクのメガネをかけた男性客。
 そんなものまで用意していたのか。なんか妙に似合っているけど。
 男性客の特異なオニギリフェイスでは、そんなメガネで目元だけ隠しても、ぜんぜん意味がないのではないかな。
 それにしても、そうやって顔を隠すということは顔にモザイクなどはかけてくれないということだ。
 私は顔を隠せない。もう、始まる前から痛みだす心を押さえつける。
「台本どおり、私のほうの準備も済んでますからいつでも始められます」
 男は、また気になるらしくカメラを覗き込んで微調整をしていた。撮影班がいないので、三つの映像を上手く編集してつなげて撮るつもりなのだと、台本には注意書きされていた。
「よーし、じゃあ撮影始めるぞ。スタート」
 そういって、三箇所のカメラの録画スイッチを押していく。
 私の最悪の時が、始まった。

「始めまして、画面の前の皆さん。私は、芹川ゆかりといいます。歳は二十三歳で、職業はこのデパートのエレベーターガールをやってます」
 そういって、きちっと立って斜め四十五度の綺麗な礼をする。顔は、笑顔しか許されていない。
「すいませんね、仕事の合間に撮影に付き合ってもらって」
 そういって、男性客が入ってくる。顔にマスクをつけているだけで、もう素っ裸になっている。
 さすがに自分の書いた台本なので、台詞は完璧のようだ。
「いえいえ、今日は楽しみにしてきたんですよ。エレベーターガールの仕事にも、息抜きは必要ですから。アハハ、まさか本当にエレベーターの中で撮影とは思ってませんでしたけど」
 そういって、なるだけ可愛く見えるように小首を傾げてニッコリと笑う。
「職場だとやっぱり気がゆるめられませんか、とりあえずもっと楽な格好をなさっていいですよ」
「ええ、いいんですか。それじゃあ、失礼して」
 そういって、私は制服のボタンを上からはずして、中のシャツのボタンもはずして胸をむき出しにする。ブラジャーは事前にはずしておいた。
「おわ、でっかい胸ですね。ブラジャーはつけてないんですか」
 白々しくいう男性客。
「ブラジャーはきついから、つけてないときもあるんですよ」
「そうなんですか、ぴっちりとした制服だけど大丈夫なんですか」
「うふっ……身動きすると、乳頭がすれてちょっと気持ちいいぐらいですね」
 大嘘だ。ブラをしないで仕事なんかできるわけがない。
「それにしても、でかいおっぱいですね」
 そういって、男は私の胸を掴んでくる。
「そうなんです。ありがとうございます、自慢のおっぱいなんですよ。感度もいいんで、遠慮せずにもっともっと触ってください。ああ気持ちいい……この前計ってみたら、ブラがKカップのアンダー六十五センチでしたね」
「ええっ、えっとH、J……Kカップってことはトップバストは百センチ超えてるのか! なるほど言われてみると重量感があるはずだ」
 男は指折り数えて、スケベそうな笑いを浮かべる。
「でもここまでいくと大きすぎて揉み辛いですよね、ゴメンナサイ」
 男はもっと強く左右の胸を弄ぶ、右へ左へ。画面にむかって見せ付けるように。
 私は自分の胸の大きさに少しコンプレックスがある、こうやって弄ばれても、本当は嫌悪感しかないのだが、台本どおりに気持ちよさそうに馬鹿げた嬌声をあげ、熱い吐息を吐きかける。

「ゆかりちゃん、ただでさえ爆乳なのに、妊娠しちゃったら、もっと大きくなっちゃうかな。大体二カップぐらい大きくなるらしいですよ」
「うあー、うれしいな! えっといまKだから、L……Mカップになるんですね」
「ははっ、ゆかりちゃんは、文字通りマーベラスなオッパイになるわけだね」
 寒いギャグだ……ここ自分の台詞じゃなくてよかった。
「もう、おじさんギャグですよー」
「ごめんごめん、おじさんだからね」
 本当だよ。
「でも、ゆかりもおじさん大好物だから、おあいこです!」
「そうなんだ、じゃあちょっと最初に質問していいかな」
「何でも聞いてください」
 そういって、自分のおっぱいをなるべく淫らに両腕で支えて揺らしながら営業スマイル。これは、質問の間ずっと続けなくてはならない。淫らっていうのが、よく分からないがとにかく激しく揺らせばいいだろうか。

「じゃあ、えっと初体験はいつですか」
 これは、お決まりのセオリーらしい。ハキハキと答えろと書いてあった。早く答えて終わりにしたい。
「十七歳のときに、最初に付き合っていた彼氏の家でしました」
「そうなんだ、高校生のときだね。気持ちよかった」
「もちろん、とっても気持ちよかったです」
 これも、嘘。気持ちよくはなかったかな、むしろなれるまでは痛かった。最初の彼氏は幼馴染みたいな関係だったのだが、あまりセックスは上手くはなかったのだ。お互い初めて同士だったし、ぎこちなかったとしても愛があればいいんだとそのときは思っていた。
「そうなんだ、セックス大好きなんだね」
「はい……大好きです!」
 これは定型句。大好きと答えるしかない。
「これまでの彼氏の数と、セックスした人の数は」
「えっと、彼氏が三人でした人は三人かな」
「あれ、ちょっとまって、数があわないな。二日前に俺としたよね」
 ここは自由解答で本当のことを答えろとの指示。
 そして、アドリブで質問が混じることがあると書いてあったから。素直に答える。
「そうですね、おじさんで三人目なんですよ。二人目の彼氏とは、ちょっとしか付き合わなかったのでそこまでいかなかったんです」
「セックス大好きなわりには、経験数は少ないんだね」
「学生のころは勉強が結構大変だったのと、結構、引っ込み思案なもので。あと、一度彼氏が決まるとその人ばっかりになるタイプなんで」
「そうなんだ、彼氏には尽くすタイプなんだね」
「はい、そうなんですよ」
「それなら、いまの彼氏がいるのに、俺みたいな男とセックスしてしまってよかったのかな」
 ここから、また台本に戻る。私は、その合図に胸を自分で揺らすのを止める。この話のつなげ方は、さすがに男性客がうまい。自由解答のときに、できたら話の流れを台無しにしてやろうかと思っていたんだけど。

「彼氏は……ヒロユキくんっていうんですけど、好きって感じですね。でも、おじさんは一目見た時から、愛してるって感じです」
 そういって、愛しげに男性客を見つめる。心の中でため息をつきながら。
「そうなんだ、惚れられちゃったかなあ」
「おじさんみたいな人、私ものすごいタイプなんですよ。みていると子宮が疼くんです。この人の子供が欲しいって、これって愛してるってことですよね!」
「そうかもしれないね、俺もゆかりちゃんに子供を産ませたいって思ったからね」
「彼氏とは、ゴムつきでは週一ぐらいでやってますけど、もう四年も付き合ったから惰性って感じで。この人と結婚したいとか、子供が欲しいとかまったく思わないんですよね」 これは、台本どおりの台詞だったのだが、私は本当に彼氏のことをどう考えていたんだろう。好きかと聞かれたら、好きだと答えていた。愛しているかと言われれば、心から愛していた。
 それでも、私たちはまだ社会人としても未熟で、結婚とか出産とか、本当に蜃気楼の先にあるように感じていた。
 答えを出すのが怖かったのかもしれない。そうやって出し渋っているうちにこういう悲劇が起こってしまって、一生その答えが出せないままで終わってしまうことになったのだ。こういう辛いことは、生きているとたまにある。
「でもいいのかなあ、君は俺の名前も知らないのに、俺は金ないから養育も認知もできないんだけど」
「大丈夫ですよ、この仕事すごく給料がいいし、福利厚生もばっちりですから、おじさんとの子供一人ぐらい私一人で十分育てられますよ」
「そうなんだ、あとで困ったとかいってもおじさん知らないよ」
 私はこのタイミングで、下着とストッキングを一緒に脱ぎ去ってしまう。
 そうして、スカートをたくし上げて股をいっぱいに開くと。
 自分の手で、自分の小陰唇を全開にして、こう言い放つ。
「もう、じれったいな。さっさと、私のオマンコに、その立派なおちんちんをねじ込んで、ズポズポして気持ちよくなって、赤ちゃんの卵がでる入り口に向かってピューピューおチンポミルクを射精してください。そうしたら、私は勝手に受精して、お腹に赤ちゃんを孕んで、ひねり出して立派に育ててあげますから」
 勢いをつけないと言えないぐらいの、あまりにも馬鹿げた台詞。言い切って笑ったあとに、ちょっと心が苦しくて目が潤んだ。

「ちょっとちょっと、落ち着いてゆかりちゃん。これAVだから、撮影してるんだから手順があるからね」
「ハァハァ……ごめんなさい。そうですよね、画面の向こうで見てくれてる人もいるのに……私ったら、今日は排卵日で興奮してる、ただのメス豚の馬鹿女なんです。おじさんの子種をいただいて妊娠できるって思っただけで、もう下の口から涎を垂らしてるんですぅ」
 よく、次から次へとこんな馬鹿な台詞を考え付いたものだ。こっからさきは、もう自分で言ってて悲しいやら、情けないやら、酷いやら、という台詞のオンパレード。こんな台本を一日で仕上げたという男性客は頭がおかしい。
「そうだ、アナルの開発はちゃんとやってるかな」
「はい! もちろんですよ二日前におじさんにローションとアナルバイブをもらってから、毎朝毎晩かかさず、アナルオナニーやってます!」
 正確には、やらされてるなんだけど……。
「そうなんだ、感心だね。おじさんはアナルも好きだから、開発してくれるとうれしいよ」
「そうなんですよね、ごめんなさい。私はアナルは未経験ですから、ちょっと時間がかかるんですけど、きっとアナルでも感じられるようになりますからね」
 そういいつつ、私はローションとペンシル型のアナルバイブを取り出して、お尻をこねくり回す。ここ二日ぐらいやってて、ようやく慣れた動きになってきた、自分でも何をやっているのかという感じ。
 必死にやれという指示だったので、うう……怖いけど肛門に指を一本二本と増やしてどんどん潤滑油を入れて、そしてペンシルバイブを思いっきり突っ込む。
「はぎゃぁあ!」
「あー、そんなに無理して入れたら駄目だろう。ゆかりちゃんのアナルが傷ついたらおじさんが困っちゃうよ」
 お前が、やらせてるんだろうという涙目。それでもきちんと笑顔を貼り付けてしまっている自分が憎すぎる。
「ごめんなさい……ほら、妊娠しちゃったら安定期に入るまで前の穴で出来ないことがあるって聞いたから、早く後ろの穴でも出来るようになっておじさんに入れてもらおうとがんばってるんだけど」
「大丈夫、焦らなくてもゆっくりでいいからね」
 そういって、男性客は愛しげに私の尻をなでる。
 もちろん、必死に入れているように見せかけただけで本当に肛門が傷つくほどには突き入れていない。
 それでも、結構奥まで入ってしまうということは、たった二日朝晩やっただけなのに、自分のお尻の穴は思ったよりも広がってしまっているのだなということに、言いようのない悲しみを感じる。
「うん、赤ちゃん孕んで用済みのオマンコの変わりに、こんどはケツマンコでがんばりますので、ボテバラになってもいっぱいセックスしてくださいね」
「あーゆかりちゃん、足閉じないでね、そのままそのまま」
「はい?」
 せっかく恥ずかしい台詞をまた言い終えたのに、こんな展開は台本になかった。
「ほら、これなんだ!」
「ああっ、それは」
 男性客が取り出したのは私の愛用している基礎体温計。
 淑女のたしなみとして、私が毎朝はかってるものだ。
 それはどうでもいいけど、問題はどうして私の部屋の枕元においてあるはずの体温計を、この人がいま持っているのかってことだ!
「そう、ゆかりちゃんご愛用の基礎体温計だね。じゃあ、お熱はかりまちょーね」
「ええぇ、ああっ!」
 そういって、私の体温計を私の大事な部分に突っ込む男性客。私は、台本にもない行動だったから、本当に驚いて声を上げる。
「いいから、そのままじっとしてて」
「はい……」
 というか、基礎体温は普通に測るんであって、そんな場所で測るものじゃないんだけどなあ。それでも、悲しいかな体温は測れてしまうのだ。
 ピーという音を立てて、真っ赤なランプが点滅する。
「これはつまり、危険日っていうことだよね」
「そうですね、排卵日がもう間近に迫ってるってことです」
 ニュプっと、引き抜くと男性客はまた体温計をしまいこんでしまう。
 私のものなのに……。
 それにしても、どうしてあの男性客が持ってるんだろう。
 基礎体温計は毎日のデータを集積して測るものなので、同じものを買いなおせばいいというものではない。
 返してもらえないと、明日から本当に困るんだけど。
 ああもしかすると、今日の行為で、基礎体温測る必要なくなるとか……男性客の台本にまったくない突然の行動に不意を突かれて、心が揺れてしまったのか。どんどん暗い想念が浮かんできて、笑顔がこわばって来て、維持できなくなっちゃう。
 心が酷い現実に、引き戻される。
「危険日の証明も終わったところで、まずフェラチオしてもらおうかな」
「はい、ほんとは子種は全部オマンコにほしいですけど、私ばっかりしてもらっては駄目なので、おじさんに気持ちよくなってもらうためにがんばります!」
 また台本の台詞に入ったので、私は心を振り切ってまた流れに戻った。
「じゃあ、こっちのカメラの近くにきてチンコ舐めてね」
「はーい、おいふぃいです」
 ジュポっと咥えて、まるでアイスクリームを舐めとるように男性客のあそこを舐める。たぶんこの男は、こうやってAVの撮影もうまくやりながら、身体と一緒に私の心も弄んで楽しんでいるのだ。
 それへの私のできるせめてもの抵抗といえば、台本に乗って必死に心のない馬鹿女を演じ続けるだけだ。
 だから、舌技の限りを尽くして必死に舐めてやった。男性客の汚らしいタマタマまでも舐めとる。
「おお、気持ちいいな。すぐ出しちゃいそうなぐらいだよ」
「きもちふぃいですふぁ」
 台本にはフェラチオをするとしか書いてなかったので、最初からここまで必死にやるとは、思ってなかったんだろう。少しだけ、出し抜いてやれた気がして楽しかった。これも情けなくて、悲しい楽しさだけど。
 それでも、舌を休めることなく、今度は必死になって尿道口に吸い付いた。
「おおっそんなに強く吸うか!」
「ふぁやく! だふぃて」
 ほんの少し、男性客が台本と違う台詞になってる。男性客に一糸報いてやれたか。
 私が間違えることは禁止されているが、男性客は別に自分で間違えるのは自由なのだろう。だから私ができることっていうのは相手の予想を超えて、驚かしてやることぐらいだった。
「うおおお、出ちゃう! すぐ飲んじゃだめだよ口の中に溜めて」
「ふぁい!」

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 私の喉に突き刺さるような濃い粘液を吐きだす、男性客のチンポ。私の口のなかは、精液で一杯になっているはずだ。
「ふぅ……たくさんでた。ちゃんとお口に溜めて見せて」
「ふぁい、あーん」
 口をあけて、私は台本どおりカメラの前に舌をだす。自分の舌の上に真っ白な精液が乗っているのが、カメラの横のモニター画面で見えてしまった。
 自分で見たくない光景だった、心のそこから吐き気がする。
 私は楽しげに、口の中の精液を私は指で弄くって遊び、画面に向かって、見せ付けるようにする。全ては台本どおり。
 口の中で、精液はどんどん苦味を増していく。酷い味だ。
「よし、十分楽しんだら、もう飲んでもいいよ」
 ゴキュゴキュと、私は口の中の精液を飲み干す。
「ふぅ……濃くておいしかったです」
「どうだった、俺の精液は」
「濃すぎて、口マンコも妊娠してしまいそうでしたぁ!」
 そういって、満面の笑みを浮かべる。馬鹿女になっている私。

「じゃあ、次はいよいよゆかりちゃんのオマンコズポズポしてあげようかな」
「わーい! 私オマンコ、ズポズポ大好き!」
 もうやけっぱちだ。
「その前に、オマンコをよく濡らそうね」
「はーい!」
 こんなキャラだと男性客に思われてるんだろうか、私は。
 男性客はカメラの一つを動かし、私のあそこにズームさせる。
「綺麗なオマンコだね」
「ありがとうございます」
「クリちゃんも皮をかぶってるし、あんまりここでは遊ばないのかな」
「そうですね、あんまり触らないかも……あぁ」
「ここもね、よく剥いて拡張してあげると、大きくなるんだよ。今度してあげるね」
「そうなんだ、楽しみにしてますね」
 私は、またひとつ後戻りできない道を歩かされるらしい。
 舐められたり、指でこねくりまわされたり、一通りのことはされた。
 悲しいかな、物理的刺激があれば、私は感じるし濡れもする。
「もう、ここも、大丈夫みたいだね」
「ええ、もう十分です。ありがとうございます」
「ちゃんと、お礼の言える娘は好きだよ」
 そういって、笑って男性客は頭をなでる。馬鹿にされているとしか思えない。
「早く、中に出して欲しくて待ちきれないです」
 私の前に、ぬっとカメラを持ってくる男性客。正確にいうと、舐められやすいように大きく股を開いた私の股のところにカメラを持ってくるわけだ。
 ズーと、私の女性器の奥までが見える位置に自動ズームされたのが分かった。ああ
私は撮られてはいけないところを一番奥まで撮られているんだなと感じる。
 深い諦めと絶望、もちろん顔は微笑んだまま。

「じゃあ、ちゃんと開いてカメラの前で懇願してごらん」
 そういって、男性客はいやらしげに笑う。
 私は、それを合図に、自ら腰を上げて、子宮口が見えんばかりの勢いで自分の女性器を開き、こう懇願する。
「はい、当店でエレベーターガールをしている芹川ゆかり二十三歳です。私は、今日はちょうど排卵日で、ザーメンを卵にかけてもらって妊娠したくてたまらない、いけない変態メス豚です。いまから、欲しくて欲しくてたまらなかったおチンポミルクを注いで妊娠しちゃいます。画面の前の皆さんも、どうぞ私のオマンコに射精して妊娠させてるような気持ちで、私が赤ん坊を孕むところを見てくださいね。この後、私のお腹が大きくなってくるいくところから、出産までちゃんと作品にして撮ってくださるそうなので、そちらも楽しみにして待っててください」
 台詞の一つを言うたびに、人間としての何かを一つ失っていくような気持ち。
「よく出来たね、じゃあせっかく職場なんだからエレベーターガールっぽく迎え入れてもらおうかな」
 そういって、男性客は私にのしかかってくる。
「はい、本日は私のオマンコにいらっしゃいまして、誠にありがとうございます。ご利用回数をおっしゃってください」
「じゃあ、とりあえず一回で」
「もう、そんな意地悪いわないで、二回でも三回でも私の中でイッってください!」
 そういって、腰に手を添えて可愛らしい仕草をする。
「こらこら、エレベーターガールはお客さんに言われた回数にイクものでしょ」
「ごめんなさい、私はいやらしいエレベーターガールなんです。それじゃあ、代わりにお客様が一回に行く間に、私は五回にも十回にも行ってしまいます」
「じゃあ、いまからオマンコするから。そのサービスがよければ二回でも三回でも利用してやるよ」
「よろしくおねがいしますぅ!」
「さってと、吸い付くようなオマンコだな」
 男性客は汚らしい男根の先っぽを私のあそこにと這わせた。男の粘膜と私の粘膜が触れ合ったときに、私の身体はビクンと震えた。
「いまからでも、ゴムつけてやってもいいんだぜ。別に気持ちよくなりたいだけなら、子供まで孕まないでもいいじゃないか」
 そういって、腰を押し付けたり引いたりする。
「違うんです、妊娠したいんです。赤ちゃんは早くつくったほうがいいっていうし、二十三歳で適齢期だから、おじさんみたいな素敵な人の赤ちゃんを産みたいんです。お願いだから、意地悪しないで入れてください」
 ゴムなんかつける気がないくせに、私から誘惑してしたという言い訳が欲しいために、こういう過程を取るんだろうな。
 こうして映像に残されてしまえば、どんな結果が起きても、見てる人は私が誘惑したせいだと思うに違いなかった。
 台本どおりの酷い台詞をしゃべらされている自分に絶望しながら、頭のどっかの冷静な部分がそんなことを考えていた。
「しょうがない変態娘だなあ、たっぷり中で出してやるから、がんばって孕みな」
 そういって男性客は、腰を抱え込むようにして、私の奥深くに一気に挿入した。ニュプッっと音を立てて、私の大事なところに彼のものが突き刺さる。
「ああああぁぁ」
 私は叫び声をあげながら、最後に残った理性が音を立てて消えていくのを感じていた。
 ああ、汚らしい指で触られたときだって嫌悪感はあった。でもいままさに、私の中に突き入れられようとしているこの暖かい肉棒は、私を妊娠させようという生殖器なのだ。
 ニュプっと、あの男の生殖器が私の深いところにえぐったとき。
 粘膜と粘膜が擦り付けあう感触を、私は生々しく感じていた。
「おらおら、どうだ」
「いいですぅー、ああぁー、気持ちいい!」
 彼氏との慣れていて、しかも愛のあるセックスであればこんな強烈な感じ方はしない。 名前も、住んでいる場所もしらない、年齢すら分からない汚らしいおっさんの生殖器が私の中に入ってくる強烈な異物感。
 なんという口惜しさだろう。
 それなのに、認めたくないけれど、私はこのとき台本には書かれていない本当のメスの叫びを上げていた。
 私の生殖器は、私の意志に反して男の生殖器を喜んで迎え入れていたのだ。
 彼が腰をつけば、私の肉襞の一枚一枚が歓喜の声をあげて彼を向かえ入れた。
 彼が腰をひけば、私の肉襞の一枚一枚が亀頭のそりを行かないでと掴んで中々離さなかった。
 なんで……この男根は、ヒロユキのものじゃないのよ。
 どこの誰ともしらない、汚いおっさんのやつなのよ。
 何で分からないの、それとも分かって……私のあそこは吸い付いてるの。
「らめぇー、もう死んじゃう!」
 私は、台本どおりに何度も何度もオーガズムを迎えた振りをする。
 あくまで、これはイッた振り……。

「今何回いったの」
「五回です、五回でございますぅーー!」

 最初は振りだったはずなのに、快楽の波が何度も襲ってきて、振りなのか本当に自分が感じているのか分からなくなってきた。
 違う、私は本当に感じて嬌声をあげているのだ。
「ふう、うめえ」
「ああ、またきちゃう……」
 男性客の愛撫はあまりにも強引で執拗だった。
 やさしい私の彼氏の愛撫とは、比べ物にならない。
 もちろん、彼氏のほうがよかった。こんなおっさんなんかの手がいいわけがない。
 それなのに、私の身体中が感じていた。
 彼氏なら、私の身体に触れるときは常にやさしく振れる。この男は、ゴツゴツした手で、私の胸を根元から力いっぱいしごきあげるのだ。そして、その刺激で起きたった乳頭に噛み付くように力いっぱい吸い付く。
「あああああぁぁぁ」
 そんなことをされたら、後が残ってしまう。痛いはずだった、苦しいはずだった。それなのに、このときはどんな酷いことをされても、全て快楽に変換されてしまう。
 私の身体が……おかしい!
 私は自分の変化に気がついた、男性客の腐った味がする舌を、加齢臭がぷんぷんと匂いような身体を、私は少し好きになりかけているのだ。
 このAVの台本の儀式は、私のプライドを粉々に打ち砕いただけではなくて、丁寧に私の心の門を押し開いていく効果があったのだ。
 そうとしか、そう考えでもしなければ、私の心は壊れてしまいそう。
 何でこんなにも気持ちがいい。

 最後の矜持は守るつもりだったのに。

「いやぁあああ」
「今何回だ」
「十回……十回……」
 本当に数回連続でいかされた、私の身体は馬鹿みたいに何をされても、気持ちがよかった。
 男はもうただ技巧もなく、私にチンチンを押し込んでこすり付けて、ぐちょぐちょにして、ただ腰を振るだけだ。その腕は、私の胸を乱暴に掴んでしごくようにこすりあげる。 あるいは、手で私のお尻を持ち上げて、真っ赤になるまで叩く。
 痛みが、快楽に変わっていた。
 嫌悪感が、快楽に変わっていた。
 悲しみが、苦しみが、怒りが、その全ての絶望が、みんなみんな快楽に変わっていた。そこにいる私は、もう私ではなかった。
 私は、AVに出演している馬鹿女。
 こんなおっさんの精液を欲しがって、自分から腰を振って、中に出されて妊娠するメス豚。みんな私が悪い……私が気持ちいいのが悪い!
「そろそろ、限界だ。中に出していいのか」
「出して! 中に出してお願い!」
 私は腰を振ってお願いしていた。
「くそ、出るぞ……ゆかり、孕めよ!」
「孕む……孕む!!」
 私のぎゅうぎゅうに締め付ける膣の中で、男のモノはブクッ!
 そう、音を立てたように膨れ上がった瞬間に、男は私の骨に響くぐらいガツンと私の一番奥に差し込んだ。
 まるで、子宮の中に入ってしまったような、そんな一突きだった。
 そして、その瞬間に男は私の一番奥で限界を迎えた。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

「あああぁああああ!」

 私の中に、余すところなく、大量の精液が、絶望的なまでに、降り注いだ。
 その瞬間に、私の心はどこかに吹き飛んでしまったようだった。
 世界が真っ白にそまって、私は死ぬほどの女の幸せを味わった。

 それは永遠に続く、地獄の喜び。

 私は、あとにこの自分の人生最大の汚点を、DVDで何度も繰り返しみてそのたびに絶望を深くする。
 私はその瞬間、誰にも見せられないような、本当に醜い顔をしていた、涙を流して顔をくしゃくしゃにして鼻水をたらして、口を半開きにして、身体はピクピクと痙攣するように震えていた。
 男性客にぐっと抱きしめられて、足を空に突き上げて、腰は余韻に震えて、さらに男の精液を膣で味わって飲み込もうとしているみたいだった。
 まるで野蛮な獣みたいに、機械仕掛けの人形みたいに、こんなのみんな嘘だと思いたかった。映像さえ残っていなければ、こんなに苦しむこともなかったのに。

 男は、私の股からニュプっと半萎えのチンコを引き抜いた。
 高性能カメラのズームは、いやらしいことに私の中だしされたマンコへとズームする。そして、ドロリと流れ落ちる精子と愛液の塊。
 どれほど、大量に出されたというのだろうか。その精液は確実に私の子宮の奥底まで吐き出されていたのだ。
「あぁ……もったいない…………」
 私はここで、もったいない精子が流れちゃうとかき集めるしぐさをする予定だった。そういう台本だったのに、身体がもういうことをきかなくて、身動きすらできなかったのだ。ただ、情けなく股を開いて精液を垂らしたオマンコをカメラのまえにさらすだけ。惨めな姿だった。
 男性客も、さすがに全力を使い果たしたのか、荒い息を吐いて苦しそうにしていた。

 男性客は、ちゃんとオマンコから精子が流れ出したところが写っていることだけ確認すると台詞間違えのミスを犯した私を、非難することはしなかった。
 私はようやく息を整えると台詞を言い直した。
「ああ、もったいない、せっかく中に出してもらった精子が出ちゃいましたね」
「大丈夫だよ、もう一回中で出して今度はもっと奥に押し込んであげるからね」
 そういって、男性客がまた私にのしかかってきて二ラウンド目に突入。
 ここで、台本は終了のはずだった。
 あとは、しっかり妊娠しますの宣言だけ編集でつないで終わりのはずだった。

 それなのに、なんでまた本気で二ラウンド目をしているんだろう。
 今度は、私に甘いキスをして男性客は雰囲気を出してくれた。
 しばらく、下でつながりながら私はたっぷりと舌を絡み合わせていた。
 臭いはずの男性客の唾液が、このときだけまるで甘い物のように感じたのは、もう私は頭がおかしくなっていたからだろう。
「おら、おら、おら」
「あん、あん、あん」
 あとは、もう技巧もへったくれもなかった。
 ただ、お互いに寡黙に腰をぶつけ合うだけ。
 一度火のついた私の快感は止まらなくて、また新しい波が押し寄せてくる。
 さっきもうあれほど死ぬと思ったのに、またさらにそれより大きくて深い波。
「ああぁぁぁああああああ」
 私は、何かもう別の生き物になってしまった。

 男は、ふっと息をつくと腰を止める。私の膣は、馬鹿になってしまったみたいに、男のいちもつをぐっと握り締めるように吸い付く。
 こんなの現象は初めてだった、自分でも動かしたつもりがないから、止めようがない。まるで。膣でフェラチオしているようだ。
「はは、お前のオマンコ吸い付いてきてるぜ」
「いわないで……いや、なにこれぇいやぁああ」
 男が腰を動かしていないのに、私は勝手に腰を自分で動かしていたのだ。そして、膣はまるで別の生き物みたいに、キューキューと男のおちんちんを引きちぎらんばかりに締め付ける。
「こりゃー、いいや」
「いやー止まらない、いああぁあ」
 さっきから、まるでおしっこするみたいな勢いで愛液が噴出してきている。
 男は、そんな私の腰の動きに合わせて、胸を弄んで、握りつぶさんばかりに何度も絞って、絞れるだけ絞って。
 そして、私の引っ張りあげられた右の乳頭にカリっと音を立てて噛み付いた。

 その瞬間だった。
 ジューと音を立てたようにして、何かが私のお腹の中から飛び出した。
 愛液が出たんじゃない……なにこれ、なにこれ、まさか。
「私……うそ」
「ゆかりちゃんのおっぱい最高!」
「私、排卵しちゃったかも」
「おー卵でたか!」
 そんなの、排卵が分かるとか、ありえないのに。このときは私は本当にそんな感じがしていた。
「どうしよう、どうしよう、私排卵しちゃった」
 そういいながらも、私の膣はぎゅーぎゅー男のいちもつを締め付ける。
「ははは、こりゃ妊娠確定だな」
「いやぁあ」
 男はそれに触発されたのか、また腰を降り始めた。
「ほら、もう大人しくしろよ」
「いやぁああ」
「ゆかりちゃんの、卵に精子ぶっかけるよ」
「駄目ええぇぇえ」
 駄目だといったのに、止めてくれるわけもなく、また私の一番奥で駄目押しの射精をする男性客。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 熱い精液が、もう何発だしたかも分からないというのにたっぷりと、私の子宮口から注ぎ込まれ子宮壁に、叩きつけられる。逃げ場のない精液は、そのままドロリと排卵してしまったかもしれない、私の卵管へと流れていく。
「あはは、今頃俺のおたまじゃくしがゆかりちゃんの卵に向かって泳いでるよ」
「駄目っていったのに……ほんとにできちゃう」
 男は精液が流れ出さないように、腰を浮かせて私のお尻に枕を載せた。
 子宮の奥の奥まで、真っ白に精液に多い尽くされ、膣の入り口までたっぷりと私の膣は精液を溜める袋みたいになっている。
 その様子までカメラにとって、ぐちょぐちょと弄って遊ぶ男性客。
「ちゃんと妊娠できるように、しばらくこのままでいようね」
 私は、何か文句をいいたいのをぐっと堪えて口をつぐんだ。
 台本の台詞に入っていたからだ。
 すぐに、口が笑顔の形になる。どうしようもないことなのだ。
「芹川ゆかりです! たっぷり、排卵日の子宮におチンポミルクを出してもらいました! 本当にありがとうございます」
「いやいや、俺も気持ちよかったから満足だよ」
 そういって、私にちゅっとキスをする男性客。
「これから排卵して、注いでもらった精子でこのおじさんとの赤ちゃんを妊娠しますので、皆さんも私の妊娠出産を楽しみにまっていてくださいね」
 そういって、私は膣の中にたっぷりと精液を溜めたまま、ニッコリとピースサイン。

「はい、撮影終了! ゆかりちゃんご苦労様」
「もう……ようやく……終わったんですね」
 私は心身ともに疲労していた、もう何も考えたくない。身体を元に戻そうとすると、すぐに止められた。
「こらこら、そのまま三十分はじっとしてないと。よく子宮の奥底まで精液を流し込んでおかないといけないからね」
「そんなあ……」
「ちゃんと妊娠しないと、今後の撮影にも差し支えるからしばらくこのままね」
 そういって、また男性客は私にキスをした。
「もう……撮影は終わったんでしょ」
「パパがママにキスしただけだよ、もう他人の身体じゃないんだからな」
 そうやって、いやらしく笑う男性客……こいつは最後の最後まで。
「はい、もうどうにでもしてください」
 もう、悪態をつく元気もなかったのだった。
 こうして、長い長い地獄のAV撮影は終わった。
 それでも、私の地獄の日々のまだ入り口にすぎなかった。

……芹川ゆかりのマンション 一ヵ月後

 これまでずっと考えないようにしてきたが、生理が前の予定日から来なくて、二週間もたってしまった。ただの生理不順なんてレベルではなく、あの男性客にも会うたびに急き立てられるので、ついに自分を誤魔化し続けることも出来なくなって、デパートのトイレで妊娠検査薬を使ってみた。

 結果は「陽性」

 できてしまっているってことだ。

 できてしまったってことだ。

 そんな……。

 手が震えて、私は検査薬を取り落とした。落ちた検査薬が立てる乾いた音が、どこか遠くの世界の出来事のようだった。

 誰の顔を見たくなくて、ましてやあの男性客の顔なんか見たら、もう辛くて死んでしまいそうで、すぐさま早退を申し出た。チーフは何か察してくれていたみたいで、すぐに帰っていいと慰めの言葉をかけてくれた。
 今の私には何の救いにもならないけど。

 気がついたら、自宅の前に立っていた。どう帰ってきたのかも覚えていない。
「あれ……鍵が開いてる」
 私は、何も考えることなく部屋の中に入っていった。
 恋人のヒロユキがいた。彼は私のマンションの合鍵を持っているのだから、彼が鍵を開けて部屋にいてもまったく不思議はない。
 ただ、本当に私の胸をついたのは、彼の顔が私を哀れむような、とても悲しげな顔だったということ。
 それを見てしまって、もうたまらなくなって涙がどっと零れた。
 言うつもりもなかったのに、口をついて出た言葉。

「ヒロユキ……私、妊娠してるの」

「ああ、俺の子供……じゃないんだよな」

 張り詰めた静寂。永遠とも思える瞬間が私とヒロユキの間を流れていた。

 それでも、時は止まらない。私は、答える。

「……………そう……よ」

「悪いと思ったんだけどさ、このDVDが剥き出しで郵便受けに入ってたから、つい……見てしまったんだよ」

 彼は、プレイヤーからDVDを取り出して、机の上に置いた。そのDVDには、あの男の汚らしい文字でこう書かれていた。

『エレベーターガール芹川ゆかり、排卵日種付けセックス ~貴方の子供を孕ませて~』
「あああ……」

 私はそれを見て、呻くことしか出来なかった。

 私は世界は、この瞬間に冷え固まって死んだ。
 もう、悲しいとすら思えない私の心。
 終わったのだと分かった。

「あのさ、ゆかり。俺はどうしたらいい、俺にしてほしいことあるか?」
「いますぐに、私と別れて。もう終わりにしましょう」
「……わかった」

 彼は、合鍵を置いて出て行った。
 部屋を出て行くときの彼の顔がどうしても思い出せない。
 このときのことを思い出すと、いつも浮かぶのは部屋を入ったときに見せた、私への悲しい哀れみの視線だけ。
 どうして、私は彼に別れてくれなんて言ったんだろう。彼を巻き込みたくなかったから、それともこれ以上自分が惨めになるのが嫌だったからか。
 本当は彼に罵って欲しかった、できれば裏切りを怒って欲しかった。
 それでも、やさしい彼にはできなかったのだろう。
 きっと、彼はこのAVが無理やり撮られたものであることを分かっていたのだ。
 あとで私も、この忌まわしいDVDを見た。
 そこに映っている私は、心にもない台詞を喋り、偽りの笑みを浮かべながら、ずっと泣いていたのだから。
 大学で付き合いだしてから四年間以上になる彼に、私の偽りの表情と本当の顔の見分けがつかないわけもない。
 ヒロユキはこれまで私が付き合ってきた男の中でも、最高の彼氏だった。
 やさしくて、頼りがいがあって、私をしっかりと愛してくれた。
 そして、それも全ては過去のことだ。
 この日、全てが終わってしまったのだから。

……デパート地下三階 二ヵ月後

 休憩室で待機していたら、美幸チーフが来た。
 まだ、ゆったりした服を着るのを拒否している彼女のお腹は、ぴっちりした制服のせいで逆に目立つようになってきている。
 見るたびに、あのかっこよくてプロポーションのよかったチーフの下っ腹がと、私はため息をついている。
 もう妊娠が分かっている私にしても、それは他人事ではないから。
 そんな私の視線にかまわず、チーフはテキパキと交代の指示を下した。
「あと三十分ぐらいしたら、交代に行って頂戴。場所は、地下三階よ」
 そのとき、私は嫌な予感がした。

 地下二階までは使われているが、地下三階は現在改装中で使われていないフロアだ。そこにエレベーターを向かわせるっていうのは通常考えられない。

 だから、三十分後といわれていたけど、早めに向かったのだ。
 よせばよかった。私には何も出来なかったのに。
 エレベーターを使うわけにもいかないから、地下三階へは関係者以外立ち入り禁止のサクを乗り越えて、階段で降りていく。
 改装中の地下三階は、昼間なのに薄暗くてちょっと気持ちが悪かった。
 エレベーターのほうに向かうと、何かの声が聞こえてきた。
「なにこれ……」
 まるで、獣が身を引き裂かれるような絶叫に近い叫び声。
 足が震えた……それでも近づいていくと分かった。
 これは獣じゃない、人の苦しみの声だ。断末魔のような叫びが断続的に続いている。
「何かの事件……事故?」
 背中を押されるようにして歩を進める私の前に、目の前に明かりが見えた。
 地下三階に止まる、エレベーターからの光だ。
 本来ないはずの場所にあるものは、なんと異様に見えることだろう。
 私は、そっと箱の中を覗き込んだ。

 そこには、私の想像を超える光景が広がっていた。

――後編に続く


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おかげさまでプロの小説書きになりました。ちょっと忙しくなるのでご迷惑をおかけするとおもいますが、月一更新を目標にやっていこうと思いますので、今後ともよろしくおねがいします。



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