| 第一章「増えるキノコ」 |
麗華お嬢様と、薫子は深い森の中に居た。 「麗華様……やっぱり帰りましょうよ」 おびえる薫子。ここは古き者の住処とされる神域の森で、誰も立ち入るなかれといわれ村のものはみんなそれを守っている。 「あら、いいじゃなくて。この森は私のものなんだから、私が入っても問題なくてよ」 お供もつれないで、出歩けるチャンスなどまず無い。それも普段入れない神域の森とは悪趣味にもほどがある。 「うう、どうなっても私は知りませんからね」 この地方一帯を支配する大地主の麗華とは雲泥の差とはいえ、薫子だって旧家のお嬢様だ。だが、各の違いか性格の違いか、一緒に並ぶと従者みたいになってしまう自分が、薫子は少し嫌だった。 「なんて薄暗い森なんでしょうね、神というよりは魔物が住んでそうだわね」 そう笑う麗華。 「それ以上恐いこというと帰りますよ……ただでさえここは誰も足を踏み入れたら駄目な場所なのに、ほんとに魔物がいるかも……ああ、お母さん」 泣きそうになる薫子。 「馬鹿ねえ、魔物なんていないわよ。神様もね。ほんとうに恐ろしいのは私達人間なのよ」 「そうでしょうか……」 「そうよ、ここは少なくとも誰も入ってこないから、そうね言うなれば、村では一番安全な場所ってとこかしら。少なくとも、野卑た連中のとこよりはよっぽどよくってよ」 特に目的地も無いはずなのに、ずんずん進んでいく麗華。もしかしたら、この機会に森を一回りするつもりかもしれない。ため息をつく薫子。だが彼女だって本当は、この森に興味がなかったかといえば嘘になる。 ここは、誰も入ることを許されぬ土地。そして、それはもっと厳密には女人禁制を意味したのだが、土地が忌み嫌われ忘れられると共に、その危険さえも忘れられていった。人は、その森のふちに居る間はそこから豊かな恵みを頂くこともできる。人の世界では、やはり麗華のいうとおり人がもっとも危険な動物……だが、この森に一歩足を踏み入れると同時に、人は狩られるための哀れな家畜であることを思い知ることになるだろう。 「おや、あれは何かしら」 麗華は木のふちで変なものを見つける。 「このキノコまるで……」 息を呑む薫子。皮が半分剥けかけたような、それはまさにちんぽにそっくりなキノコだった。顔を真っ赤にしながら、歪曲的な表現でそれを伝える薫子。 「そんなことわかってるわよ! これが男の貧相なものだってことぐらいはね!」 そんなことをいいつつ、こういうものなのかと興味深々で見つめる麗華。 「それにしても、何で大人しいあんたが男の男性器なんてみたことあるのよ」 「あの、わたしこの前まで変な男にずっとストーカーされてたでしょ……」 最初は大人しかったストーカーは薫子が逃げ回るにつれてどんどん酷いことをし始め、最後には薫子を壁に追いつめて粗チンを出して、射精までしたのだという。それがもとで、ストーカーは捕縛されてよかったのだが、それからというもの薫子はちょっとこういうものに拒否反応を示すようになったのだ。 「あ! 麗華さん、汚いよ!」 大胆にもキノコをつっつく麗華。 このグロテスクな形状は毒キノコかもしれないが、触るだけで毒に侵されるものはないという。そんな生半可な植物学の知識があるために麗華は、キノコを安全と判断した。もしかしたら、男根に似たキノコもあったかもしれない。 「あら、触るとすこしおおきくなるのね」 驚いたことに、麗華のつっつきに反応したかのようにキノコは大きさを増す。 「もしかして新種かしら、持って帰って研究してみましょう」 明らかに性的な興味を、植物学への興味にすり替えて手を伸ばす麗華。不吉なものを感じた薫子は必死にとめようとしたが、ついにハンカチに包んで引っこ抜こうとする麗華をとめることができなかった。
「ああ、意外に根が深いのね。抜けないわ……ああ剥けた!」 引っこ抜こうとした麗華であったが、抜けなかったためつんのめり逆に男根キノコの皮を剥いて露出させてしまった。 「ああ、なにこれ震えてる!」 イカ臭い匂いを発しながら躍動する男根キノコ……これは! 「麗華さん逃げて!」 躍動する男根キノコに、あれを感じ取った薫子は叫ぶが、時既に遅し。男根キノコの亀頭から、白濁液がものすごい勢いで麗華に向って飛び散った! 「きゃああああ!」 麗華は、その飛沫をあびながら叫ぶ。知らないものの、なんとなくそれが邪悪で汚らしいものであるとわかったのだ。粘着性の毒液は、麗華を汚し尽し、そして数滴……薫子にもかかった。衝撃で倒れたまま、ハンカチで必死に顔をぬぐう麗華、薫子も自分のハンカチで拭いてやる。毒液を吐き終わった男根キノコは、自分の仕事はおわったとばかりに萎れて枯れていった。 最初は小さな出来物のようなもの、数秒で白濁液のかかった麗華の服や地面の上から男根キノコが生えてくるのが薫子に見えた。 「きゃーーー!」 そのあまりの気持ち悪さに一瞬気が遠くなった。麗華もそれに気が付いて叫びをあげ、体を起そうとするが……。 「ああ、薫子さん身体がうまくうごかないわ! まるで痺れたみたい助けて!」 薫子は、麗華を拭いたハンカチからもキノコがはえ始めているのを見て、それを投げ捨てた。 「私じゃ、こんなのどうしようもできない……麗華さん、助けを呼んできますから!」 薫子は来た道と思われる方角に走った。遠くから、助けて助けてという麗華の叫びが聞こえるが、私にはどうすることもできないんだと逃げる薫子。頭には、あのストーカーの汚らしい男根がうかび寒気すらする。その激しい嫌悪にまけて、結局薫子は麗華を見捨てたのだ。
麗華もいつまでも叫んでるわけにはいかなかった。服の外側だけならまだしも、服の中からもキノコがはえ始めていたのだ。浴びたのは上半身中心だったので、大事な部分は大丈夫だが。 この男根キノコが肌に擦れてキモイ感覚、服の中で発射されたら大変なことになる。麗華は泣く泣く、洋服を投げ捨てた。……ブラジャーからも、キノコが生えてきた。外側からだけだが、しょうがない。それも急いで剥ぎ取る。麗華の、形の良いたわわな巨乳があらわになる。ぷるんと震えて、それにあたったブラジャーの男根キノコがむくむくっと大きくなった。慌ててそれをなげすてると、なげたさきで男根キノコが弾けたらしい。ブシューと精液を吐き出す。その部分だけ、キノコが山だかりになる。
「信じられない! ……こんな馬鹿なこと……何なのよもう!!!」 自棄になって地面に座り込んだ。パンツいっちょで土の上に座り込むなど、誇り高い麗華にはありえないことだったが、それが気にならないくらいこの異常な事態に精神が限界にきていたのだ。 取り囲む大小の男根キノコをみる。足の小指ぐらいの大きさから、麗華と同等の大きさのものまでが……そのどれもが同じ形、同じイカ臭い包茎のチンポの形をして蠢いている。いつもの麗華の俊敏さならなんとかキノコの包囲を超えられそうだが、毒液の効果のせいか痺れて鈍くなったいまでは自信がない。こちらが手を出さなければ、毒液は出さないのだから……ここは体力の温存をはかって
麗華の思考がそこまできたとき、下腹部のキモイ感触に気が付いた。ふと、下を見てみると自分の股の下に化け物じみた男の顔が突き出ている! 痺れで気が付かなかったが、パンツの上から麗華の大事な部分を舐めてさえいるのだ! 「ギャーー何なのよあんたは!」 麗華は跳ね上がって立ち、男の顔を踏みつけた。 「うぐぐぐ……ばれちゃったか」 男は臭い息とともにそんなことをいい、その醜い顔を歪ませた。笑ったらしい、なんとも気味の悪い青白い顔色、出来物だらけのふやけた顔、ふやけた唇にはれぼったい目……ひとことでいえばデブオタキモ男というしかない。 そんなものが土の中から突き出しているのは、まさに悪夢というに相応しかった。足の裏でも出来物が感染しそうで触れたくない、靴が無事だったことを感謝した。 「もう一度聞く! あんたは何なの!」 命令することに長けている麗華の口調は有無をいわせぬ威厳があった。 「うう……しょうがないで……妊娠するまで姿をばらさないつもりだったんだけど……ついつい興奮しちゃっで」 「なに! 妊娠ってなによ! なんなのよ!」 「わかったで、説明するで」 怪人デブオタキモ男とでもいうべきか、本名を豊島ツヨシというらしい。豊島は、麗華にとってどうでもいい過去を麗華の足に踏みつけられながら語り始めた。豊島ツヨシは、麗華の支配する村に百年も前から住んでいた下層民で、その特異な容姿からいじめられたそうだ。 体も弱く、頭もよくなかった彼はイジメに耐えることができず、貧しい身内も彼を庇いきる事ができず。この森に逃げ込んできたらしい。そしてちょうど、この森のこの場所でオナニーを百回して腎虚で死んだそうだ。 類いまれなる性欲は、彼の唯一の長所であったが、それは一回も実戦に役立たずに死に絶えたかにみえた。問題は死んだ場所が、ここだったということ。 ここには多数の古来の呪われし神や荒ぶる神が眠っている。この場所に眠っていた呪神である土蛇神と豊島の呪いがリンクして、ここに妖怪が誕生してしまった、それがいまの彼だというのだ。 「でね、やさしい麗華ちゃんならぼくを成仏させてくれる方法を考えてくれるとおもうんだけど」 「あんたを消し去る方法なら考えたいところだわね」 「簡単なんだよ、つまり呪いがとけて成仏するには死ぬ時の未練が消えればいいんだでよ」 「なんなのよ、あんたの未練って」 「女の子とセックスして妊娠させることだで」 「なんですって!」 すごく悪寒と共に、嫌な予感がした。 「できれば、出産までいきたいとこだ。そこまでやらないと成仏できないかもしれないでよ」 「それって……誰のことよもしかして」 「君のことだで!」 「グギャーーー」 麗華は嫌悪のあまり体を痙攣させ、カエルが押し潰されるような悲鳴をあげた、キモさのあまり気を失わなかったのは誉めるべきだろう。 「んでね、麗華ちゃんがキノコって呼んでるのがあるだで」 「なんであんた私の名前を……」 そうか、このデブオタ妖怪は薫子と麗華の話を全部隠れて聞いていたんだ。 「……罠にはめたわね!!」 「うん、でも包茎チンポの形したキノコなんて触るのここ百年でも君だけだったんだで。どうやら、麗華ちゃんも男に飢えていたみたいだで、お似合いのカップルだで」 「んなわけないでしょ! あんたが、この私の足の指先にふれることさえ許されると思わないで!」 「そういうとおもったで……たしかにおでの顔は醜い」 「顔だけでなく、体も心もみんなでしょ!」 「ううん、体はもうないんだで。顔とチンポだけになっちゃったんだで。もうちょっとまともな生物になりたいけど百年たってもこのままで困った所に、きたのが麗華ちゃんだったで」 麗華の顔面が蒼白になる…… 「じゃあ、あの白い液体は」 「おでの精液だよ、少し痺れたりするけどちゃんと精子泳いでるし妊娠能力も十分にあるでな」 麗華は声なき声を上げた。 「ほんとは、麗華ちゃんが気が付かないまま囲いを抜けようと失敗して突き刺ささってしまって中出しできるのを狙ってたんだけども。こうなったらしょうがないだで。根気勝負だで。」 「ヤダー!! 誰か助けて」 「助けなんか、誰もこねえから」 森の中には、もうパンツ一枚の無防備な麗華とキモデブオタキノコ妖怪しかいないのだった。
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