| 序章「蛾歯豚男の侵入」 |
なに不自由なく育てられた河相家のお嬢様、河相奈々子二十一歳。河相財閥の資産に広大な邸宅、恵まれた容姿、お嬢様大学の現在三回生という最善の環境にありながら、彼女にはやっかいな性癖が一つあった。それはSMオナニー好きだということ。彼女自身は処女なのだが、すでにその穴はバイブによって打ち破られていた。 天性のSM女である彼女は、自分が虐げられれば虐げられるほど快楽に酔いしれるという困った性癖であったのだ。 もちろん、彼女にも常識は人一倍あったので、彼女は自分の性癖をもてあましつつ成長していく。金持ちであっても、自らのプライバシーを守り通すということは難しいことだ。 そこで、邸宅を離れ自らの広大な敷地の隅っこの廃屋になっている森の山小屋を利用して、奈々子は自分の城をつくることにした。誰にも気がねせず、ただ淫蕩な快楽に耽るためだけの城である。 そこで彼女は、夜な夜な激しいSMオナニーを繰り返して、その程度はどんどん過激さを増していった。 そうして最終形態である「セルフ目隠し拘束伝動バイブオナニー」の開発に成功したのであった。 原理は簡単である、自ら全裸になり目隠しして完璧な拘束をかけ股をぬらしてねっころがる。そして壁に付属されているオナニー兵器が、伸びてきて完璧な愛撫を施す。ほどよく(時間にして二十分ほど)愛撫が完了したら、壁よりまた伸びてくる人間の男根にもっともよく似せた人肌バイブが、奈々子の子宮へとどけとばかりに突き上げられる。 予測ができないように、乱雑に様々な角度でつきあげられたあと、バイブからはこれまた人肌に暖められた擬似精液がドバドバー!と発射され、奈々子は恍惚としながら 「うう!」といってしまうのだ。これを3セット、続けたぐらいで彼女は幸せな眠りについてしまい、夜が白けるころに起き上がって家路に就くという寸法である。 誰にも迷惑をかけずに、奈々子も気持ちいいはずであった。だが、ある予測不可能のことから彼女の人生は転落していく。 一方、こちらは蛾歯豚男という芸名だか本名だかもわからんような、中卒デブオタヒッキー三十五歳。蛾歯は、昔エロ漫画書きや似非イラストレーターのような仕事をしていたが、いい加減な仕事ぶりからその仕事もこなくなり、こうしてぶらぶらと町をさ迷い歩くだけの半ばホームレスのような生活を始めた。 もともと、風呂嫌いだから、風呂に入れないで悪臭が漂うのも気にならないし、腐りかけた残飯を漁るのだってこれまでと似たような食事だからたいしたことはない。 「なんだ、働かなくてもかわんないじゃないか」 これが、蛾歯のホームレス入門の感想であった。 こうして暇を持て余せてしまえば食い物を捜し歩くついでに、街を練り歩くしか暇を潰すすべがなくなる、警察につかまって牢屋にほおりこまれたところで生活がかわりもしない蛾歯のことなので、大胆な下着泥棒をしてみたりして、居られない場所を増やしていく。 ついに、寝床をもとめてこんな林の中にまで来てしまった。途中に塀を乗り越えたりもしたので、漠然と誰かの私有地なのかともおもったりもしたが、とりあえず今日の寝床を探さないことには眠りにもつけない、そんなことを考えながらとぼとぼとあるいていると、偶然にも小さな森の中にお誂え向きの山小屋を発見したのだった。
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